外国人労働者は“調整弁”？技能実習制度の終焉と新制度の課題

2025.07.31
コラム外国人支援外国人雇用就労ビザ技能実習制度特定技能制度育成就労制度

「育成就労」制度のスタートで外国人労働者の未来は変わるのか？

〜現場の声と行政書士の視点から考察〜

皆さんおはようございます！
新潟市のビザ専門行政書士事務所、Asocia行政書士法務事務所です。


今回は、2025年参院選の隠れた焦点とも言われている「育成就労制度」に注目し、制度の概要と課題、そして今後の運用のあり方について、現場の声と共に解説いたします。

出典：雇用の調整弁になる外国人、不況でクビ「同じ人間だ」　技能実習への批判を踏まえた新制度、運用に懸念も【隠れた焦点・２０２５参院選】

外国人は「雇用の調整弁」なのか？

群馬県大泉町では、スバルなど大手企業の工場で多くの外国人が働いています。

町の人口の約2割が外国人。日系ブラジル人2世の金治エドゥアルドさんは「景気が悪くなると最初にクビになるのは外国人」と語っています。

実際、2009年のリーマンショック直後には、外国人労働者の39％が無職になったという町の調査結果もあります。

これは単なる「数字」ではなく、実際の家庭・生活に直結する現実です。

技能実習から「育成就労」へ

これまで外国人労働者の多くは「技能実習制度」に基づき来日していました。

この制度は本来「開発途上国への技術移転」が目的でしたが、実態は「安価な労働力」の供給手段となっていたのが現実です。

これに対し、政府は2027年度から新たに「育成就労」制度を導入予定です。主な特徴は以下のとおりです。

■ 新制度「育成就労」の主な内容

  • 【目的】未熟練労働者の育成・人材確保（実態に即した目的へ）

  • 【対象分野】農業、建設、外食など16分野

  • 【在留期間】原則3年（その後、特定技能1号への移行を想定）

  • 【転籍】一定条件を満たせば可能（最初の1～2年の勤務が前提）

  • 【費用制限】送り出し機関への手数料は月給2ヶ月分までに制限

  • 【地域制限】都市部では転籍受け入れ上限が低く設定（例：東京は6分の1、地方は3分の1）

現場からの懸念「制度が変わっても中身は…」

新制度は理想的に見えますが、支援現場からは懸念も多く上がっています。

NPO「日越ともいき支援会」の吉水代表は、「転籍が自由というわけではなく、最初の受け入れ先次第で環境が決まってしまう」と指摘。

悪質な企業からの転籍が可能でも、申請や実務のハードルは依然として高く、「制度が変わっても、根本の改善が必要」と述べています。

また、現在の制度では、外国人技能実習機構に相談しても「たらい回し」になるケースもあり、今後はワンストップで対応できる監督機関の強化が求められます。

行政書士の視点【制度設計と運用の“ズレ”に要注意】

私はこれまで多数の技能実習・特定技能の申請をサポートしてきましたが、制度設計と現場の実態に乖離があると、外国人本人はもちろん、受け入れ企業にも大きなストレスがかかります。

  • 制度の「建前」と現場の「実情」のギャップ

  • 地方と都市部の格差

  • 費用負担が外国人に偏るケースの再発

このような課題を未然に防ぐには、制度導入前から支援団体、行政、専門家（行政書士や社労士）が連携し、「現場で本当に機能する仕組み」を築いていくことが不可欠です。

まとめ・・・制度を変えるだけでは不十分。大切なのは“運用と現場の声”

2027年から始まる「育成就労」制度は、技能実習制度の反省を活かした第一歩です。

しかし、制度が形だけに終わらないよう、現場の声に耳を傾け、制度の運用を見直し続ける仕組みが求められています。

行政書士として、今後も外国人と企業の架け橋となり、共生社会の実現に向けた制度運用に寄与してまいります。

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