特定技能制度を悪用した「資格外就労」事件を解説
― 入管法違反のリスクと企業の責任
皆さんおはようございます。いつもブログを見ていただきありがとうございます。
新潟市西区のビザ専門行政書士、Asocia行政書士法務事務所です。
2025年9月11日、毎日新聞などが報じたニュースによれば、山梨県の人材派遣会社「スクラムヒューマンパワー」の代表ら4人が入管法違反(不法就労助長罪)の疑いで逮捕されました。
事件の内容は、特定技能1号(農業分野)の在留資格を持つ外国人を、資格対象外である「リネンサプライ業(寝具クリーニング・供給事業)」に派遣していたというものです。
2022年12月から2025年6月にかけて約120人を違法に仲介し、少なくとも7,000万円の利益を得ていたとみられています。
1.特定技能制度とは
特定技能は2019年に創設された新しい在留資格で、2025年現在は介護・農業・建設業など16分野に限定して外国人の就労を認めています。
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特定技能1号:一定の技能試験・日本語試験に合格すれば、最長5年間就労可能
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特定技能2号:熟練技能が必要な分野で、家族帯同・更新無制限が可能
重要なのは、「在留資格ごとに就労できる分野が法律で厳格に定められている」点です。
例えば農業の資格を持つ方は、農作業や関連業務以外には従事できません。
2.今回の事件の問題点
今回のケースでは以下の点が大きな問題となります。
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対象外分野への派遣
リネンサプライ業は現行の16分野に含まれていません。
※今後リネンサプライ業も特定技能業 種に追加の予定です。詳細は後述します。
そのため、農業の特定技能を持つ外国人を工場に送る行為は資格外活動にあたります。 -
登録支援機関の悪用
スクラム社は入管庁に登録された「登録支援機関」でした。
通常、登録支援機関は住宅確保や生活支援を行う立場ですが、その信頼を悪用して違法派遣を行っていた点は非常に悪質です。 -
企業側の責任
受け入れ先の「小林リネンサービス」も役員が逮捕されており、「知らなかった」では済まされません。外国人雇用においては、受け入れ企業も不法就労助長罪に問われる可能性があるのです。
3.入管法違反のリスク
入管法違反は、外国人本人だけでなく雇用した企業や仲介した事業者も処罰対象となります。
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不法就労助長罪:3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人の場合は両罰規定により法人も罰金刑)
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外国人本人:退去強制、場合によっては5年間の再入国禁止
企業にとっては、刑事罰+信用失墜+事業停止リスクと非常に大きな打撃です。
4.実務上の教訓
今回の事件から、企業が学ぶべきポイントは次の通りです。
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特定技能の分野確認は必須:求人票や契約書に「この分野での在留資格に基づく就労である」と明記する。
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登録支援機関任せにしない:支援機関の登録があっても、企業側の監督責任は免れません。
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労働力調整の誤解:農業が閑散期だからといって他分野で働かせることはできません。
特定技能は資格外活動許可は原則不可。 -
内部監査・コンプライアンス体制の整備が急務。
追加解説
今回摘発された「リネンサプライ業」は、現行の特定技能16分野には含まれていません。
しかし、人手不足が深刻化している業種の一つとして、政府内では「新規追加分野」として議論が進んでいるのが実情です。
すでに倉庫業や廃棄物処理と並び、リネンサプライ(クリーニング・寝具供給)は2027年度以降の追加候補とされており、将来的には合法的に特定技能外国人を受け入れられる可能性があります。
ただし、ここが重要なポイントです。
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制度が施行される前に受け入れることはできない
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「近々追加されるから」といって先行して派遣することは、現行法では不法就労助長罪に該当する
つまり、制度改正の動きがあるからといって、法整備が完了する前に独自判断で外国人を雇用するのは非常に危険ということです。
まとめ
今回の事件は、制度の不備を突いたというよりも、「いずれ対象になるだろう」という甘い見通しの下で法律を無視した結果とも言えます。
リネンサプライ業界の人手不足は確かに深刻で、制度改正によって近い将来、特定技能の対象に加わる可能性は高いでしょう。
しかし、「まだ対象外」という現実を軽視すれば、企業は刑事責任と信用失墜を一度に背負うことになります。
今回登録支援機関も逮捕されるというショッキングなニュースですが、この登録支援機関に行政書士のような専門家が関与していたかどうかは不明です。
しかし、入管業務を取り扱う専門家の一人として申し上げたいのは、入管法を熟知せずに外国人業務を取り扱うことのリスクです。
このような杜撰な取り扱いを行う登録支援機関などは氷山の一角だと感じます。
制度改正の最新動向をフォローしつつ、現時点では必ず我々行政書士などの専門家に確認し、合法的な枠組みで外国人を活用することが何より重要です。
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