1. 外免切替とは何か(制度概要)

「外免切替制度」とは、外国で取得した有効な運転免許証を、日本国内で有効な運転免許証に切り替えることができる制度です。
もともと、この制度は「海外に長期間滞在していた日本人」「在留外国人で、母国で免許を取得済の方」が日本でスムーズに運転を開始できるように設けられていました。
日本人・外国人ともに、例えば赴任・転勤・留学・国際結婚などで「母国で免許を取った後に日本で運転したい」「帰国後すぐに日本で車が必要だ」という状況では活用価値が高いです。
ただし、制度運用の実態として「日本に短期で滞在中の方でも切替申請できる」「知識確認が易しかった」といった指摘もありました。
2. 10月からの厳格化内容(筆記・技能試験の変更点)

2025年10月1日から、外免切替に関する手続き・審査が次のように大幅に変更されます。
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住所確認の強化:申請時に原則として「住民票の写し」の提出が必要となり、ホテル滞在証明など短期滞在者向けの代替証明では基本的に認められなくなります。
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知識確認(筆記)試験の難化:従来は10問(○×形式・イラスト付き)で7問以上正解すればよかったものが、50問(選択・記述式に近づく)に増え、合格基準が90%以上(45問以上正解)に。
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技能確認(実技)試験の強化:これまでは基本的な運転操作やコース走行が中心でしたが、改正後は「横断歩道・踏切の通過」「合図や右左折の手順」「車線変更時のウインカー」など、日本特有の運転状況に対するチェックが加わります。
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短期滞在者の対象外化:観光など短期目的で日本に滞在している方については、基本的に外免切替の申請対象から除外される見込みです。
このように、制度が「利便性」重視から「安全性・制度信頼性」重視へと大きくシフトしています。
3. 静岡県での合格率急落の背景

例えば、最近公表された報道によれば、静岡県警察が10月1~8日に受験を実施した外免切替者66人中、筆記試験合格数は25人で合格率は約37.8%。昨年同時期の合格率約93.3%から55.5ポイントも低下しています。
この急落の背景には、まさに上記の試験内容・手続き見直しの影響があると考えられます。受験者が新基準を十分把握しておらず、ギャップが合格率に直結した可能性があります。
また、外国語対応(多言語)であった従来の試験形式からより日本語や内容理解を重視する形式へ変化しているため、「日本の交通ルールを十分に理解していないまま切替を申請していた」ケースが浮き彫りになったとも言えます。
制度趣旨が「単に免許を取得できる」から「日本で安全に運転できる」へ変わったことが、この数字に表れています。
4. 埼玉のひき逃げ事件が社会に与えた影響

制度見直しの背景には、重大な交通事故の発生があります。例えば、鄧洪鵬被告(中国籍、外免切替取得者)が埼玉県三郷市で飲酒運転・ひき逃げを起こし、小学生4人重軽傷を負わせた事件が報道されています。
この事件では、逃走時に「日本語がわからないと言えばいい」などと話していたことなどがドライブレコーダーに残っていたとされ、社会に対する外国人運転者への不信感・制度への批判を強める一因となりました。
こうした事件を契機に、「制度の簡易取得」「言語・ルール理解の甘さ」への批判が高まり、外免切替制度の見直しがより強く求められたと整理できます。
つまり、制度の運用が“抜け道”と見られる場面がある以上、公平性・安全性の観点からの改善が不可欠だったと言えるでしょう。
5. 行政書士視点:外国人運転免許制度の課題と今後の方向性

(1)制度趣旨の再確認
行政書士として留意すべきは、外免切替制度が「利便性だけ」ではなく、「日本国内で安全に運転できるか」を前提としているという点です。特に在留外国人(就労者・留学生・国際結婚配偶者等)にとって、運転は生活・仕事・移動手段として重要ですが、同時に社会的責任も伴います。
(2)言語・ルール理解の強化
改正後の知識・技能試験の難化は、交通ルール・日本の道路事情への理解を前提としています。外国人本人のみならず、企業が外国人を雇用してドライバーとして起用する際、以下の確認が重要となります。
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日本語または母語で交通安全教育を実施しているか
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運転前に日本の標識・優先ルール・飲酒運転禁止・歩行者優先などの理解があるか
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住所・在留期間が切替の対象要件を満たしているか
(3)企業・雇用側のリスク管理
外国人ドライバーを活用する企業では、外免切替制度の変更に伴い、ドライバー確保・研修実施・保険加入・事故対応体制の見直しが必要です。例えば、試験に落ちる・技能未確認のまま運転してしまうと事故時の企業責任が問われる可能性もあります。
(4)今後の制度運用・社会的展開
制度改正は安全性を高めるための一歩ですが、今後も次の課題が想定されます:
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多言語による試験・教育体制の整備
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在留外国人と日本人との運転実態・文化ギャップの橋渡し(多文化共生的観点)
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地方における外国人ドライバーの増加・交通事故リスクの地域差対応
行政書士としては、制度改正の動向をフォローしつつ、外国人クライアント・雇用企業双方に「最新の切替要件」や「運転開始前の準備」を指南していくことが求められます。
(5)まとめ

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今回の外免切替制度の改正は、外国人だけでなく日本人社会にも関わるテーマです。
利便性と安全性のバランスをどう取るか、多文化社会の中で「運転」という〈責任ある行為〉を共有するという観点から、制度理解・準備・啓発が一層重要となりました。
運転を通じた地域共生・生活支援という観点でも、行政書士として発信・支援していきたい分野です。
この記事が、外国人・日本人双方にとって「今、外免切替で何が変わったのか」「何を準備すべきか」を整理する一助となれば幸いです。制度変更はお早めの確認をお勧めします。
【注意点】
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本稿は一般向け解説を目的としており、個別の申請状況・都道府県ごとの運用等については、各運転免許試験場・警察署・専門の行政書士にご相談ください。
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制度改正に関しては、今後追加的な運用指針・ガイドラインが発出される可能性があります。
【出典】
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「外免切替、10月に審査厳格化へ 知識確認5倍、観光滞在で認めず」
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「【2025年10月施行】外免切替が大幅改正!知識・技能試験も厳格に」
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「外国免許証から日本免許証への切り替え手続 – 大阪府警察」
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「なぜ「外免切替」制度は存在するのか?制度の背景と日本側の…」
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