■生活保護法の対象は「日本国民」に限定

生活保護法(1950年施行)は、その第1条で「この法律は日本国民に対して最低限度の生活を保障する」と明記しています。
つまり、外国人は法律上の対象外です。
しかし現実には、永住者や定住者を中心に多くの外国人が保護を受けています。
その根拠となっているのが、1954年(昭和29年)に厚生省が出した「生活保護法の準用に関する通知(1954年通知)」です。
この通知により、永住者・定住者など日本に生活基盤を持つ外国人に限り、当分の間、日本人と同様の取扱いをしてよいとされました。
ただし、これはあくまで行政上の「運用」に過ぎず、法律上の権利ではありません。
✅つまり、「外国人は生活保護を受ける権利がある」のではなく、「自治体の判断で支給されている」というのが実態です。
■最高裁が示した2つの重要判決

① 宋訴訟(2001年9月25日判決)
不法残留中の中国人男性が生活保護を申請しましたが、却下されました。
最高裁は、
「不法残留者を保護の対象にしないのは、憲法25条(生存権)違反ではない」と判断し、不法在留者は生活保護法の対象外と明確に示しました。
② 永住外国人生活保護訴訟(2014年7月18日判決)
永住資格を持つ中国人女性が申請を却下された件では、
高裁が「永住者にも受給権がある」と判断したのに対し、
最高裁はこれを覆し、
「外国人は生活保護法の適用対象ではなく、行政措置として保護されるにとどまる」と判示しました。
これにより、永住者であっても生活保護を受ける「法的権利」はないことが確定しました。
■自治体の裁量と“居住地格差”

2000年の地方自治法改正により、国の通達は「技術的助言」に位置づけられ、法的拘束力を持たなくなりました。
そのため、1954年通知に基づく外国人保護は、自治体の裁量に委ねられる形になりました。
-
大阪府:「予算の範囲内で外国人保護を実施」
-
埼玉県:外国人保護の見直しを国に要望
このように、自治体ごとに運用方針が異なり、住む場所によって支援の有無が変わるという課題が生じています。
■「外国人優遇」は誤解

SNSなどで「外国人が優遇されている」との主張を見かけますが、これは誤りです。
実際には、
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保護対象は永住者・定住者など限られた在留資格者のみ
-
支給額も日本人と同等
-
法的権利がなく、自治体の裁量で支給停止もあり得る
むしろ外国人のほうが不安定な立場にあります。
誤情報に基づく排外的主張は、現場の実態とかけ離れています。
■今後の課題:「外国人保護の法制化」

現状の仕組みでは、自治体の財政状況や政治的圧力によって支給停止となるおそれがあります。
これは、人の生命や生活が「行政の裁量」に左右されるという深刻な問題です。
国際的にも、日本が加盟する難民条約第23条では、
「合法的に滞在する難民に対しては、自国民と同一の待遇を与える」と規定されています。
日本の現状はこの基準を満たしているとは言えず、法制化による安定的な支援制度の確立が求められています。
■行政書士から見たまとめ

最高裁は、「外国人の生活保護を禁止した」わけではありません。
むしろ、「行政措置として保護する余地がある」と認めています。
永住者や定住者が地域の一員として安心して暮らすためには、誤った情報ではなく、正確な制度理解が不可欠です。
外国人支援を「特別扱い」とみなすのではなく、地域社会全体の安定を守る福祉制度の一部として捉える視点が求められます。
【参考・出典】
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最高裁判所判決(平成13年9月25日・平成26年7月18日)
-
厚生省「1954年通知」
-
厚生労働省「生活保護制度の運用について」
-
三木ひとみ先生『わたし生活保護を受けられますか(2024年改訂版)』
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