「秩序ある共生社会」という言葉、最近よく見かけます。響きはきれいなのに、どこか身構えてしまう人もいる。外国人の話題は、少し温度が上がるとすぐ“賛否”に割れてしまうからです。
2026年1月14日、「外国人との秩序ある共生社会の実現のための有識者会議」が意見書を公表しました。ここで大事なのは、結論を急がないこと。意見書は法律そのものではありません。
ただ、政府の基本方針や、その先の制度設計に影響する「設計図の下書き」になり得る。現場の実務から見ると、ここに書かれた言葉が、数年後の申請書類や審査運用の“空気”を変えることがある。そこが怖いところでもあり、読みどころでもあります。
「秩序」と「共生」を対立させない、という宣言

意見書が繰り返し強調しているのは、「秩序の名の下に外国人を排除する意図ではない」という線引きです。国際社会から「排除に傾いた」と誤解されるリスクにも触れています。つまり、政府内でも“言葉の扱い”に敏感になっている。
この部分、私は実務家として少し安心しました。入管実務は、制度の趣旨よりも「運用の空気」が先に変わることがあるからです。
空気が変わると、同じ事実でも説明の要求水準が上がる。だからこそ、最初に「排除ではない」と書いたこと自体が、今後の議論のブレーキにもアクセルにもなり得ます。
生活のルールは「学ばせる」方向へ

意見書の中核の一つが、日本語や社会規範、制度理解を学ぶ「統一的・体系的なプログラム」を国の責任で整備すべき、という提案です。さらに踏み込んで、中長期在留の場合は「参加などを在留の条件とすることも検討」と明記されています。
ここは、行政書士として現場感が出ます。例えば、更新や変更の場面で、すでに「素行」「納税」「社会保険」などが立体的に見られることがある。
そこに「学習参加」や「到達目標」の発想が乗ってくると、立証の世界が少し変わる。
学びの制度化は、良い面もあります。外国人本人が困る前に、制度の入口で“説明責任”を果たせるからです。日本の暗黙知は多い。
ゴミ出し一つでも、正解は地域で変わる。意見書が「慣例や前提を可視化し、理由や背景を丁寧に伝える必要」を述べているのは、きれいごとではなく、トラブル予防の現実論だと思います。
一方で、条件化が進むと別の問題も出ます。受講機会が地域や企業で偏れば、不公平になる。意見書も「地域・企業格差」を課題として挙げ、国の支援枠組みや人材(登録日本語教員、外国人支援コーディネーター等)の活用に触れています。
制度を作るなら、地方で受け皿が崩れない設計にしてほしい。
現場は、だいたい地方が先に悲鳴を上げます。
行政の情報連携が進むと、申請は「整合性の勝負」になる

もう一つの柱が、行政機関間の情報共有です。税・保険料の納付状況などを入管が取得する、逆に自治体等が在留資格情報を取得する、といった相互連携の必要性が書かれています。
ここは、実務的には「書面で説明していたことが、データで突合される世界」への移行です。良い悪いではなく、そうなる。
申請人側にとっては、“うっかり”の余地が減る。企業側にとっては、雇用管理や社保手続の遅れが、じわじわ審査に影響するリスクが上がる。
私はこの流れ自体は止まらないと思います。むしろ、やるなら丁寧にやってほしい。データ連携は、誤りが混じると救済が難しいからです。意見書が「権利保障の観点からも重要」と書いている点は、ここを意識しているのだと読みました。
土地取得の論点は「外国人規制」より先に“所有者不明”が刺さる

意見書のもう一つの大きなテーマが、土地取得等のルール。
ここは世論の関心が高い分、話が飛びがちです。でも文書のトーンは、まず「国籍を問わず守るべきルールの徹底」「生活レベルと安全保障レベルを分ける」でした。
生活レベルでの出発点として、「所有者情報の正確な把握」が語られます。
地籍調査の進捗、所有者不明土地の割合、相続登記義務化(すでに開始)と、住所等変更登記の義務化(2026年4月開始予定)にも触れています。
つまり、外国人の前に、日本社会自身が「誰の土地かわからない」を片づけようとしている。その延長線上で、「国籍把握の仕組み」が俎上に載る、という順番です。
この国籍把握は、制度ごとにバラバラだった点(登記や森林法は国籍把握がない等)を整理し、横串の仕組みを作ると書かれています。
さらに、外為法の報告対象を2026年4月から拡大(居住目的も含め全ての不動産取得を対象)と記載があります。
加えて「不動産ベース・レジストリ」を国籍等を含む一元DBとして機能させる期待(令和9年度以降整備)にも言及。
ここまでくると、議論は「規制するか」ではなく、「把握できる状態を作るか」に重心がある。実務家としては、まずそこを押さえた方が良いと感じます。把握できていないものは、適正化もできないからです。
マンション・水源・森林…揉めやすい論点を“制度の言葉”で整理している
意見書は、マンションの投機的取引抑制(業界の取組方針)や、国内に住所のない所有者が増える中での「国内管理人制度」にも触れます。
水源地については、外国人等による地下水採取の事例調査では具体的な障害報告はなかった一方、全国統一の把握枠組みがなく、条例が全体の約4割に留まる現状を述べています。
森林については、林地開発許可の条件違反者への罰則や公表など、2026年4月1日施行の措置に言及があります。
このあたり、現場の相談に直結します。
不動産を買う外国人本人が悪い、という話ではなく、「知らなかった」が通用しにくい領域が増える。ルールを多言語で周知する必要がある、と書かれているのは、外国人本人の不利益を減らす意味でも重要です。
外国人との秩序ある共生社会の実現のための有識者会議意見書(令和…
安全保障の議論は“拙速は避けつつ、先送りもしない”
安全保障の観点では、重要土地等調査法の運用状況(これまで勧告・命令なし)を踏まえつつ、「改めて検討すべき段階」と述べています。その際、立法事実の精査、経済活動の自由とのバランス、諸外国研究、国際約束との整合性が必要とも。
ここは、専門的判断が分かれやすい領域です。政治的にも揺れるし、国際関係にも左右される。行政書士の立場で断言できるのは、「制度が変わる可能性があるので、取引や投資の当事者は“前提が動く”ことを織り込んでおくべき」ということくらいです。
行政書士としての所感:これから増えるのは「違反の摘発」より「説明の要求」

意見書の基調は、徹底した実態把握と情報発信、そして可視化です。
私は、この流れが進むほど、現場では「違反を探す」よりも「説明できるか」が問われる場面が増えると見ています。
在留手続でも、不動産でも、要は整合性。
税・保険・就労・住まい・家族。点が線でつながったとき、説明が薄いと不安だけが残る。逆に、説明が丁寧なら、余計な摩擦は減る。秩序とは、本来そういう地味な作業の積み重ねだと思います。
【結論】

有識者会議意見書は、外国人政策を「排除」ではなく「秩序と共生の両立」として設計し直す方向を示し、日本語・制度理解の学習プログラムの制度化、行政情報連携の強化、土地取得の国籍把握とデータ基盤整備を主要論点としている。
【根拠】
意見書が、統一的・体系的な学習プログラムの必要性と在留条件化の検討、行政機関間の情報共有、土地所有者情報(国籍把握)・外為法報告拡大・不動産ベース・レジストリ整備の期待、安全保障面での立法事実精査等を明記しているため。
【注意点・例外】
意見書は法令ではなく提言であり、直ちに審査運用や義務が変わるとは限らない
「在留条件化」や安全保障分野の規制は、専門的判断や国際約束との関係で結論が分かれ得るため、具体制度化の段階で専門家に確認が必要
制度が動くとき、地域・企業格差がそのまま不公平につながるため、受け皿整備の設計次第で評価が変わる
【出典】
外国人との秩序ある共生社会の実現のための有識者会議「意見書」(令和8年1月14日)
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