この手の「提言」は、読みやすいように要点だけが先に並びます。
けれど、現場で効いてくるのは、その後ろに隠れている“運用の変化”です。
申請書の添付書類が増えるのか、確認事項が電子化されるのか、審査の観点が追加されるのか。
結局そこが、企業にも本人にも一番痛い。
今回の自民党「外国人政策本部提言」は、その“運用の変化”に踏み込む書き方をしています。
大きく言えば、入口(入国)と在留中(在留管理)をDXで締め直し、税・社保・医療などの「未納・不正」リスクに行政横断で手当てし、生活面では日本語・制度学習の枠組みを用意する。
締めるところは締め、整えるところは整える、という設計に見えます。
1 「不法滞在者ゼロ」と入国審査DX(JESTA)

提言の目玉の一つが「不法滞在者ゼロ」を掲げ、電子渡航認証制度(JESTA)を早期導入し、出入国在留DXを進める点です。
本文側では、訪日客増の前提のもと、不法残留者増への懸念や審査待ち時間、難民認定の処理長期化などを挙げ、来日外国人情報の電子的一元管理・分析の必要性を示しています。
そして、JESTAについては「令和10年度中に着実に導入」と明記しています。
現場感で言うと、入口の事前チェックが強くなるほど、審査の“入口前”で弾かれるケースが増える可能性があります。
推測ですが、短期滞在・観光領域だけでなく、後段の在留審査にも「データ前提の説明」が求められる局面が増えるかもしれません。
2 在留資格の「悪用」への視線:経営・管理、技人国、留学、永住、帰化

概要スライドでは、在留資格の悪用防止として「経営・管理は実態調査と厳正審査で悪質事業者の一掃」「技人国は予定されていない業務への従事に関する審査・調査を厳格化」「留学は資格外活動許可の厳正」「永住者・帰化の審査を厳格化」と並べています。
ここは、行政書士としても“肌感”があります。書類が整っていても、実態が薄いと判断されると一気に厳しくなる。逆に、実態が強い案件は、説明さえ立てば通りやすい。
その差が広がる方向です。
なお、提言本文では、永住について「許可までの在留資格・在留年数などを調査し、審査の厳格運用と許可の在り方を検討」「永住者の在留資格取消しガイドライン策定」などを挙げています。
帰化についても、永住の在留要件(ガイドライン上は原則10年)と、国籍法上の住所要件(5年以上)との“見え方の逆転”を問題意識として示し、厳格化の検討領域に置いています。
3 在留カードとマイナンバーの原則一体化(特定在留カード)

提言は「在留カードとマイナンバーカードの原則一体化」を明確に推進し、特定在留カード等の運用開始を令和8年6月に予定している、としています。
さらに「全ての在留外国人が原則として特定在留カード等を取得するための方策」「受入れ機関の責務」「受入機関に属さない在留資格(例:日本人の配偶者等)にも取得促進」と踏み込みます。
これ、便利になる面は確実にあります。一方で、申請実務としては「カード取得・更新・紐付け」の手続導線が整うまでは、混乱が出やすい。
特に企業側の管理(誰がいつ何を確認するか)が問われます。
4 税・社保・医療:マイナンバー連携を“在留審査で使う”

提言は、税・社会保険料の確認が電子化されていない点を課題に挙げた上で、国保・国民年金の納付情報、地方税の課税情報を「公共サービスメッシュを活用したマイナンバー連携」により、新規上陸申請・在留審査で活用すべきとしています(令和9年~)。
国税についても、納税義務違反があった在留外国人の情報提供範囲拡充、入管庁保有情報との効果的な連携を求めています。
また医療面では、在留3月超で国保加入できることを踏まえ「治療目的で来日し高額治療を受けている事例があるのでは」「偽造保険証で不正受診があるのでは」といった指摘を整理し、自治体が入国初年度の国保料前納を導入できるよう、条例参考例の周知(令和7年10月)と、希望自治体での随時導入(令和8年度~)を挙げています。
ここは、申請側の準備が変わります。未納があるかどうかを、申請前に“先に潰しておく”発想がますます重要になる。企業も本人も「後で払います」では説明が立ちにくくなる局面が増えそうです。推測ですが、在留審査の実務は「正しい就労・正しい納付・正しい居住」の3点セットを、データ前提で確認する方向に寄っていきます。
5 日本語・制度・ルール学習を「在留審査の考慮要素」に

提言が“共生”の側に置いているのが、日本語や制度・ルール等を学習するプログラムの創設です。来日前、来日後初期、中期、長期といった段階や、出身国・地域、ライフステージに応じた取組を省庁横断で精査し、受講と理解を「在留審査における考慮要素」とすることを検討すべき、と書いています。
認定日本語教育機関や登録日本語教員の活用も視野に入れています。
個人的には、この部分は制度設計が肝だと思っています。やり方次第で「支援」になるし、「足切り」にもなる。
現場では、日本語が弱いから困っているのに、日本語が弱いこと自体が不利益になる構造が一番つらい。制度が“責める”のではなく、“支える”方に倒れるかどうか、ここは専門家に確認が必要な論点です。
6 住まい・地域:公営住宅・URの国籍把握、相談体制の地方展開

住まいの領域では、公営住宅等で外国人が多く居住することで学校負担など地域課題が生じているとの指摘、入居実態を把握している事業主体としていない主体がある点、緊急時に国籍不明で対応困難な場合がある点を整理しています。
その上で、令和7年度中に「入居資格や確認方法の調査」を実施し、今後は新規入居者について国籍・在留資格等の把握、緊急連絡先登録も検討すべき、としています。
また、国と自治体の連携強化、FRESC型相談窓口の地方展開など、相談体制の整備も提言されています。
7 安全保障の観点:土地取得・実質的所有者把握

安全保障の観点では、外国人の土地取得等に関する新たな法的ルールの具体案整備、無主離島の国有化検討、国籍を含む取引実態調査を踏まえた取得規制の再検討、土地関連台帳の一元DB化、実質的所有者把握の仕組み検討、地下水採取の実態把握などを列挙しています。
8 お金の話を避けない:在留許可・査証手数料、国際観光旅客税

政策を動かすには財源が要る。その前提で、在留許可手数料の見直し・引上げで財源確保し、入管職員増員や地方入管局の組織拡充を含む体制強化を行うべき、としています。
概要整理でも、令和8年度中の在留許可手数料、査証手数料の見直し・引上げ、主要国水準も考慮したJESTA手数料設定が「速やかに実施すべき」とされています。
オーバーツーリズムについては、地域の実情に応じた対策強化、分散の推進、交通・宿泊等の機能強化といった方向性を示し、国際観光旅客税の税率引上げで確保する財源も活用して着実に実施すべき、としています。
この記事をどう読むか(行政書士の視点)

この提言は、賛否以前に「運用の設計図」になっています。DX、データ連携、手数料、相談体制、日本語学習。個別施策がバラバラに見えて、実は一本の線でつながっている。
審査を厳格にするなら、現場の処理能力も上げる。
そのためにデータ連携と財源が必要だ、というロジックです。
実務家として一番気になるのは、「考慮要素」が増えること自体より、その説明責任が誰に乗るかです。
企業なのか、本人なのか、支援機関なのか。提言は受入機関の役割明確化にも触れており、今後、企業コンプライアンスが一段上の“経営課題”になる可能性があります。
記事末尾まとめ

【結論】
自民党「外国人政策本部提言」は、在留審査の厳格化だけでなく、DX・データ連携・日本語学習・相談体制・財源まで含めて、外国人政策を“運用ごと作り替える”方向性を示している。
【根拠】
不法滞在者ゼロとJESTA導入、在留資格悪用対策、特定在留カード(在留カードとマイナンバー一体化)、税社保情報連携の在留審査活用、日本語・制度学習プログラムの創設、手数料見直しによる体制強化などが、提言に明記されている。
【注意点・例外】
提言は政策方針であり、法改正・政省令改正・運用通達・システム整備の進捗により、実際の要件や提出物は変わり得る。
日本語学習プログラムを在留審査にどう位置づけるかは、設計次第で影響が大きく、専門家に確認が必要。
(本記事の影響見通しは一部、推測を含む)
【出典】
自由民主党 外国人政策本部「外国人政策本部提言」概要(令和8年1月20日)および同提言本文。
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