強制送還「弁護士通知」廃止へ──逃亡防止と「裁判を受ける権利」のせめぎ合い

強制送還の現場は、静かなようでいて、最後の最後に空気が変わる。
入管が「送還」を実施する瞬間は、本人にとっても、支援者にとっても、そして代理人にとっても“取り返しのつかない線”を越えるからです。
その線をめぐって、出入国在留管理庁が「弁護士通知」を今年中にも廃止する意向だと報じられました。
弁護士通知とは、強制送還の予定時期を、代理人弁護士に原則2か月前に「○月第○週」といった形で伝える運用です。
報道では、通知が逃亡を招いた事案や、送還中止に伴うキャンセル料発生などが理由として挙げられています。
ただ、これを単純に「厳格化」とだけ言い切ってしまうと、話が薄くなる。
なぜなら、弁護士通知は「甘さ」から生まれた制度ではなく、むしろ“手続の正当性”を支えるために、苦肉の策として積み上げられてきた運用だからです。
弁護士通知は「法律」ではなく、合意に基づく運用だった

報道で触れられているとおり、弁護士通知の出発点は2010年9月、当時の法務省入国管理局と日本弁護士連合会の合意です。
ここが大事で、入管法(出入国管理及び難民認定法)そのものに「2か月前に弁護士へ通知せよ」と明文で書かれているわけではありません。強制送還(退去強制)の枠組み自体は入管法に基づき進みますが、弁護士通知は“上乗せの運用”という位置づけです。
では、なぜ上乗せが必要だったのか。
ひとことで言えば、「裁判を受ける権利」(憲法32条)との関係です。
送還の実施が先に来てしまうと、送還取消訴訟などを準備する時間が奪われる。
あるいは、執行停止(いわゆるストップをかける手続)を申し立てる機会が実質的に失われる。
そういう問題意識が、制度の背景にあったと理解できます。
入管庁の狙いは「逃亡防止」と「実務コストの抑制」

今回の見直しは、入管庁側から見ると、かなり実務的な話です。
報道では、送還前に逃亡した事案が2019年以降少なくとも7件、2025年末時点で5件が逃亡中とされています。
さらに、送還予定がSNSで拡散して抗議電話が殺到した、送還中止でキャンセル料が約300万円発生した、といった“現場の摩耗”も挙げられています。
入管の送還は、航空券や護送体制など、段取りが固まって初めて動く工程です。
そこが崩れると、税金の無駄という批判にも直結する。逃亡が起きればなおさらで、「予告が逃亡のトリガーになるなら、予告をやめたい」という発想自体は理解できます。
それでも残る論点:「裁判を受ける権利」は形式だけで足りるのか

一方で、弁護士側が反発するのも自然です。
憲法32条は「裁判を受ける権利」を保障します。
問題は、それが“形式的に裁判所の門が開いている”だけで足りるのか、という点です。
現実に、送還実施のタイミングが読めなければ、申立ての準備が間に合わない。
間に合わない権利は、権利としては痩せていきます。
行政実務に置き換えるなら、「告知はしたが、間に合わなかったのは本人の責任」という整理が、どこまで許されるのか。
これは、相当センシティブな線引きになります。
なお、報道では、本人に対しては「原則1か月前までに、具体的時期を明示せず『1か月後以降に送還する』と通知する」運用は続ける方針ともされています。
しかし、これだと弁護士側が動く“実務の時計”は、かなり曖昧になります。
実際の送還日が読めない以上、裁判対応は「常時臨戦」に近くなり、代理人の負担が跳ね上がる可能性があります。
行政書士の実務感覚として思うこと

私は行政書士なので、訴訟代理人にはなれません。
だからこそ、ここは一歩引いた場所から見ます。
今回の件、二項対立にしてしまうと危うい。
「逃亡を防ぐために通知ゼロ」か、「権利保障のために2か月前通知維持」か。現場はたぶん、その間に解がある。
例えば、
送還予定の“幅”を短くする(2か月前ではなく、数営業日前など)
通知対象や通知経路を限定し、漏えいリスクを下げる
逃亡リスクが高いケースだけ例外的に通知を絞る
こういう設計なら、「逃亡防止」と「権利保障」を同時に少しずつ取りにいける。
海外制度との比較は別途検証が必要ですが、いきなりゼロに振るのは、後で反動が来やすい選択にも見えます。
そしてもう一点。
弁護士通知をなくすなら、代替措置が必要です。
単に廃止して終わりではなく、本人側が司法救済にアクセスできる“最低限の見通し”をどう確保するのか。
そこを示せないと、社会の納得が割れると思います。
「今年中にも廃止」──ただし公式文書は現時点で確認できない

注意しておきたいのは、現時点(2026-01-26)では、入管庁の公式サイトで「弁護士通知廃止」を明確に告知する一次資料は、私は確認できていません。
現状は報道ベースの理解です。
実際の運用変更は、内部通達や日弁連との協議の帰結として示されるはずで、最終形は今後変わる可能性があります。
ここから先は、制度そのものより、「どう運用して、どこまで透明にするか」の問題になります。強制送還は国家の権限の中でも最も重い部類です。
重い権限ほど、手続の説明責任が問われる。
これは、どの政権でも変わらない原則だと思います。
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