「技人国」外国人労働者に給与未払い　社長逮捕の背景

皆さんおはようございます。いつもブログを見ていただきありがとうございます。
新潟市西区のビザ専門行政書士、Asocia行政書士法務事務所です。

9月3日、愛知県豊田市の人材派遣会社「ネクセル」の社長が労働基準法違反の疑いで逮捕されました。

理由は、雇用していたベトナム人労働者ら約150人に対して、合計7,800万円以上の給与を支払わなかったことです。

特に注目すべきは、未払いの多くが「技術・人文知識・国際業務」いわゆる**「技人国」ビザ**で在留していた外国人に関するものだった点です。

「技人国」とはどんな在留資格か？

「技人国」とは、エンジニア、通訳、貿易実務、システム開発など、専門的な知識や技能を有する外国人が取得できる在留資格です。

よく比較される「技能実習」や「特定技能」と異なり、第三者機関による監理制度がなく、企業と労働者の契約関係に任されている部分が大きいのが特徴です。

また、技人国は以下のメリットがあります

• 他の就労ビザに比べ取得要件が比較的緩やか

• 家族の帯同が可能

• 在留更新が柔軟で、永住申請につなげやすい

このような利点から、日本に滞在する外国人労働者の中でも「技人国」の数は急増。

特にベトナム人はこの10年で約15倍に増え、全国で9万8千人以上が在留しています。

なぜ「技人国」で給与未払いが起きるのか？

今回の事件が象徴するように、技人国で働く外国人が給与未払いや不適正な就労に巻き込まれるケースは増えています。

その背景には以下の問題があります。

1. 監理機関が存在しない
   　技能実習制度のように監理団体がなく、企業任せになっているため、労働条件のチェックが甘い。

2. 実態が「派遣労働」に近い
   　特定技能は受入れ先で直接雇用されるのが原則ですが、技人国では派遣労働として活用されるケースも多く、現場での管理が難しい。

3. 在留資格と実際の業務が乖離
   　本来は「専門性の高い業務」に従事するはずが、実際には単純作業を担わされることもあり、要件不適合のリスクを抱える。

4. 外国人労働者側の情報不足
   　日本語や制度理解が十分でないため、給与未払いに直面しても労基署への相談や救済制度の活用が遅れる。

 

救済制度と限界

今回のケースでは、国の「未払賃金立替払制度」が適用され、未払いの約8割が支払われました。
しかし、制度には上限や申請条件があり、すぐに生活を立て直せるわけではありません。

実際に、相談にあたったNPO法人の報告によれば、立替制度を利用できなかった外国人や、次の仕事が見つからず生活困窮に陥ったケースもあります。

行政書士目線でのポイント

私自身、外国人の在留資格手続に携わる中で、以下の点が特に問題だと感じています。

• 企業側の制度理解不足
  　「技人国」＝高度人材と考えず、実態は人手不足解消のために利用しているケースが散見されます。

• 外国人本人の情報格差
  　来日前に十分な情報が伝わっておらず、「技能実習より自由度が高いから」と安易に選ぶ人が多い。

• 入管と労基署の連携不足
  　在留資格の不適合や労働基準法違反が起きても、別々に対応するため解決まで時間がかかる。

 

今後に向けて

専門家も指摘している通り、単に規制を強化すれば解決する問題ではありません。
必要なのは次の3点です。

1. 「技人国」の制度趣旨を周知徹底すること

2. 企業と外国人双方に対する教育・研修の整備

3. 労基署・入管・NPOなどの連携強化

東海地方をはじめ日本各地の経済は、すでに外国人労働者なくしては成り立たない状況です。だからこそ、制度を適正に運用し、安心して働ける環境づくりが急務だと考えます。

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👉 まとめ

今回の給与未払い事件は、「技人国」という在留資格が急増する中で浮き彫りになった制度の穴を示しています。

企業にとっても、外国人労働者にとっても、制度を正しく理解し適正に利用することが最も重要です。

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