「育成就労制度は本当に“脱・現代奴隷”となるのか?行政書士が見る制度の盲点と企業の責任」
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新潟市西区のビザ専門行政書士、Asocia行政書士法務事務所です。
技能実習制度の終焉と「看板の掛け替え」論争

2027年4月からスタートする「育成就労制度」
技能実習制度の廃止は“歴史的転換点”とされながらも、弁護士や国際機関からは「看板の掛け替えにすぎない」と厳しい指摘が相次いでいます。
技能実習制度は「国際貢献」という名の下に、実態は人手不足業界の労働力供給装置となり、多くの外国人が過酷な労働環境に置かれました。
私自身も行政書士として、監理団体や受入企業、外国人本人の双方から相談を受けてきましたが、「制度の理念と現実の乖離」は常に現場の課題でした。
■第1章:「債務労働」という見えない鎖

技能実習の最大の問題は、出身国での「手数料徴収」です。
たとえばベトナムでは平均68万円、中国59万円、ミャンマー28万円(政府調査)と言われていますが、実際には100万円近く徴収されている例が少なくありません。
これは日本側の監理団体や受入企業が直接関与しない“海外での出来事”であるため、入管法や労基法の直接的な規制が及びにくいという構造的問題があります。
結果として、来日前から借金を背負い、来日後は返済と仕送りに追われる「債務労働」状態に陥ってしまう。
ILO条約でも禁止されている中間搾取・手数料徴収が、制度の外縁で温存されてきたのです。
■第2章:育成就労制度の“改善点”と“限界”

新制度では、「転籍の柔軟化」や「受入機関による責任強化」など一定の改善が見られます。
しかし、以下の課題が依然として残ります。
主な課題一覧
|
項目 |
現行(技能実習) |
新制度(育成就労) |
行政書士視点での課題 |
|---|---|---|---|
|
手数料 |
原則禁止(実態は残存) |
給料2か月分まで可 |
実質「借金労働」温存の恐れ |
|
転籍 |
原則不可 |
人権侵害時に限り可 |
転籍先確保が現実的に困難 |
|
家族帯同 |
不可 |
不可 |
労働者の人権と家庭の分断 |
|
在留期間 |
最長5年(技能習得目的) |
最長3年(就労+学習) |
定住への道筋が不透明 |
|
管理責任 |
監理団体中心 |
受入機関中心 |
中小企業に負担集中 |
こうして見ると、“理念上の進化”はあるものの、“構造上のリスク”は依然として残るといえます。
■第3章:企業が取るべき「人権配慮型リクルート」とは

記事で紹介されていたように、欧米系メーカーや大手アパレル企業の中には、「技能実習生が支払った手数料を払い戻す」「採用コストを企業側が全額負担する」
といった取り組みを始めている企業もあります。
中小企業にとって同様の負担は容易ではありませんが、少なくとも以下の点を実践すべきです。
✅ 企業ができる実践チェックリスト
-
送出機関との契約書に「労働者負担禁止条項」を明記する
-
採用前の段階で外国人本人へのヒアリング(費用・契約内容)を実施する
-
現地での採用支援に信頼できる監理団体を選定する
-
労働条件通知書・雇用契約書を本人母語でも交付する
-
問題発生時に弁護士・通訳へ迅速アクセスできる体制を整える
これらの取り組みは、企業イメージの向上だけでなく、ビジネスと人権(Business and Human Rights:BHR)の観点からも重要です。
■第4章:「技人国」にまで広がる“手数料型搾取”の波

最近では「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国)でも、出身国ブローカーによる手数料徴収被害が報告されています。
本来、技人国は大学卒業者などが日本企業に直接雇用される在留資格であり、技能実習のような送出機関は不要です。
しかし、「就職あっせん料」「推薦料」など名目を変えた金銭授受が横行しており、技能実習制度の“悪習”が波及しつつあるのが現状です。
つまり、「制度が変わっても構造が変わらない限り、搾取の形は残る」。
ここに行政書士としての介入余地があります。
私たちは、契約構造の透明化・文書化・モニタリングという法的インフラで支える役割を担うべきなのです。
■結語:「法令遵守+人権尊重」が企業の競争力に

育成就労制度は、制度疲労を起こした技能実習の“再設計”であることは間違いありません。
しかし、現場を支える行政書士として見れば、制度の本質的課題は「法律」ではなく「運用」と「倫理」にあります。
制度の隙間で弱者を生む構造をどう埋めるか――。
これからの企業に求められるのは「単なる合法」ではなく、「倫理的で持続可能な外国人雇用」です。
それこそが、日本社会の真の“多文化共生”への一歩となるでしょう。
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