【速報解説】枕崎の技能実習生4人が監理団体を提訴──「外泊禁止・プライバシー侵害」主張から見える企業の実務リスクと対策

鹿児島県枕崎市のかつお節工場で働いていたフィリピン人元技能実習生4人が、監理団体・実習先企業らに約970万円の損害賠償を求めて提訴しました。

10月28日（火）に鹿児島地裁で第2回口頭弁論が開かれ、本人尋問で「外泊や市外外出の禁止」「狭い宿舎」「プライバシー侵害」などが具体的に語られました。

係争中のため事実認定はこれからですが、企業側が直ちに見直すべき論点が明確に浮かび上がっています。

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何が争点になっているのか（報道ベースの整理）

• 行動制限：自由な外泊・市外外出の禁止、違反時の反省文・立たせ等。

• 宿舎の基準：法で定める広さの寝室が与えられなかった主張。

• プライバシー侵害：健康上の症状を第三者の前で露出させられたとの証言。

ポイント：技能実習法は私生活の自由の不当な制限（外出・外泊等）を禁じ、違反は処罰対象。OTITの資料でも明確です。

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行政書士のプロ視点：法令・指針上のチェックポイント

1) 外出・外泊の「不当な制限」はNG

技能実習法は、解雇等の不利益を示して外出制限を告知する行為を禁止・処罰対象としています。就業時間外の私生活は原則として自由であり、一律の外泊禁止や過度な外出届の強制はリスクが高い運用です。

2) 宿泊施設の面積・設備基準

運用要領の改正（2024/4/11）でも、寝室は1人あたり4.5㎡以上（押入・床の間等の使用不可スペース除外）、個人収納・採光・採暖等の設備を求めています。
申請図面では面積算出根拠の明示が必要です。

3) 人権・プライバシーへの配慮

暴力・脅迫・監禁は論外として、人権侵害の一類型としてプライバシー侵害が問題になり得ます。
健康相談や症状確認は同性職員の立会いやカーテン等の遮蔽を含む配慮が求められます。

OTIT資料は申告制度・母国語相談窓口の周知も義務付けています。

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監理団体と実習実施者の責任分界

• 実習実施者（企業）：雇用主として、労基法・安衛法、宿舎基準、ハラスメント防止、労務管理の実体責任。

• 監理団体：監査・指導、相談体制、法令順守のモニタリング責任。外出等の「統一ルール」で私生活を縛る指示は、法の趣旨に反し得ます（監理団体の不当関与は行政処分リスク）。

 

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いますぐ見直す「実務の7点チェック」

1. 外出・外泊ルール：禁止型→届出型へ。就業時間外は原則自由、緊急連絡手段を確保。

2. 宿舎の面積と図面：寝室4.5㎡/人以上を採寸・再計算。押入等を除外して図面・計算式を明示。

3. プライバシー手順：体調確認は同性立会い＋遮蔽、写真・動画の禁止、記録テンプレ整備。

4. 苦情・申告導線：母国語相談（OTIT窓口）と社内窓口を就業規則・掲示・配布で明示。

5. 監理団体—企業の役割分担：監査手順書に「私生活不関与」の原則を明記、指示系統を一本化。

6. 管理者研修：ハラスメント・人権・通報対応の年1回研修＋新任OJT。

7. エビデンス管理：勤怠・宿舎面積根拠・説明書面・相談記録を日本語＋英語/タガログ等で保管。

 

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「寝室が狭い」主張への備え方（実務）

• 実測＋写真＋平面図で面積の算出根拠を残す（各辺長を記載、押入等は除外）。

• 人員変動時に自動再計算できる台帳（部屋割り・在籍数）を整備。

• 二段ベッド運用は、採光・避難経路・収納・暖房の総合適合を確認。

 

制度は「育成就労」へ──求められるのは“教育×保護”の実装

技能実習は2027年4月1日施行の育成就労制度への移行が決定しました。

政省令・告示が9月30日に公布され、企業・監理支援機関（現：監理団体）により実効的な教育・定着と人権配慮が求められます。

移行期の今こそ宿舎・労務・相談体制の再点検を。

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係争事案へのスタンス（まとめ）

本件は判決前の段階です。

個別の事実認定は今後の審理に委ねつつ、企業・監理団体が直ちに自社運用を点検すべき論点は明らかです。

外出・外泊の扱い、宿舎の面積・設備、プライバシー配慮、相談・申告導線の実効性──「やっているつもり」から「証拠を伴う運用」への転換が、最大のコンプライアンス対策です。

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参考資料（抜粋）

• 南日本新聞（373news）速報記事（2025/10/28）。

• OTIT資料：私生活の自由の不当な制限（外出制限等）禁止、相談窓口の整備等。

• 厚労省：技能実習制度運用要領改正（2024/4/11）・寝室4.5㎡/人等の明文化。

• 育成就労制度：政省令・告示の公布、2027/4/1施行。

 

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