知らずに雇っても違法？技能実習生を“資格外活動”で働かせた中国物産店に罰金50万円

1. 事件の概要

大阪府大東市の中国物産店を経営する中国籍の女性（59）が、不法残留の元技能実習生や「資格外活動」の許可を得ていない技能実習生を違法に働かせたとして、出入国管理及び難民認定法違反（不法就労助長）の罪で略式起訴されました。

大阪簡易裁判所は2025年10月21日付で、この女性に罰金50万円の略式命令を出しました。

一方、従業員である息子（33）は「諸事情を考慮して不起訴」となっています。

この事件は、「人手不足を理由に、在留資格を十分確認せず雇用してしまう」という現場の実態を象徴しています。

2. 不法就労助長罪とは

入管法第73条の2では、次のような行為を「不法就労助長罪」として処罰しています。

• 不法就労者を雇うこと
• 不法就労者を自己の業務に従事させること
• 不法就労をあっせんすること

これらの行為に対しては、「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」が科される可能性があります。
「知らずに雇った」では済まないのです。

3. 技能実習生の「資格外活動」禁止

技能実習生は、原則として実習計画に定められた職場・職務内容以外で働くことはできません。
これは技能実習制度が「人材育成」を目的としており、「労働力補填」ではないためです。

そのため、たとえ飲食店で「短時間手伝っただけ」「身内の店でアルバイト」という場合でも、報酬を得ていれば資格外活動違反＝不法就労とみなされます。

4. 経営者に求められる確認義務

在留カードの確認・保存

在留資格・期間・資格外活動許可欄を必ずチェックし、コピーを保管しましょう。

就労可否の確認

「就労不可」と記載されている場合は就労させられません。

契約・勤務実態の整備

職務内容が在留資格の範囲内かを常に確認しましょう。

5. 略式命令とは？

略式命令とは、正式な裁判を経ずに書面審理だけで刑罰を科す手続です。
今回、裁判所は被告人の罪を認め、罰金50万円を命じました。

軽く見えますが、刑事罰が科された事実は残り、今後の在留資格や事業運営に影響する可能性があります。

6. 行政書士が見る実務的リスク

• 技能実習生が休日に知人の店でアルバイト
• 店主が「短期滞在」「家族滞在」者に手伝いを依頼
• 更新中（特例期間中）の外国人に就労させる

いずれも悪意がなくても「確認を怠った」と判断されれば処罰対象です。
行政処分として監理団体や実習実施者の認定取消につながるケースもあります。

7. 企業・店舗が取るべき対応

• 在留カードの表裏コピーを保存
• 入管オンラインシステムで在留資格を確認
• 登録支援機関・監理団体との情報共有
• 外国人従業員への定期ヒアリング

特に飲食・物販・介護業界など外国人比率が高い職場では、経営者主導のコンプライアンス体制が欠かせません。

8. まとめ：人手不足でも「法令遵守」は譲れない

今回の事案は、地方の小規模店舗であっても入管法違反が見過ごされない時代であることを示しています。
「助け合い」「短時間だけ」といった善意の行動も、結果として不法就労助長にあたることがあります。

外国人を雇用する際は、行政書士など専門家に確認しながら適法な手続きを取ることが最善策です。

出典：
MBSニュース（2025年11月10日）
出入国管理及び難民認定法 第73条の2
法務省 入国管理局「不法就労外国人対策」