技能実習生“逃走”と不法就労──なぜ起きるのか?企業が必ず知るべき「確認義務」と逮捕リスク
【結論】

今回の八尾市の事件は、「在留カード確認義務を怠った企業」が不法就労助長罪に問われた典型事案です。
技能実習制度の構造的課題(低賃金・転籍不可)と、受入企業側のコンプライアンス不足が重なると、同様の事件は今後も発生する可能性があります。
企業は在留カード・在留資格の確認を必ず実施し、記録を残す体制整備が不可欠です。
【事件の概要(要点)】

2025年11月、読売テレビが次の内容を報じました。
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大阪府八尾市のごみ収集会社が、技能実習生だったベトナム人2名を不法に働かせたとして書類送検
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彼らは 実習先での低賃金などを理由に逃走
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ごみ収集会社は 1日1万円で雇用
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代表者は「在留カードを確認していなかった」と供述
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受入は知人の派遣会社を通じて行われた
本件は、外国人本人の不法就労とともに、受け入れ企業側の不法就労助長罪が強く問題視されます。
【根拠と法律構成(行政書士が解説)】

① 技能実習生は「実習先以外で働くことは禁止」
出入国管理及び難民認定法19条18号(資格外活動禁止)
技能実習は“実習先との一対一の関係”が原則で、転籍には厳格な手続きが必要。
逃走し、別の会社で働くことは明確な違法です。
② 企業側は「在留カード確認義務」を負う
入管法73条の2(不法就労助長罪)
以下の行為があれば、最長5年以下の懲役または500万円以下の罰金。
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不法就労者と知りながら雇用
-
確認せずに雇った場合も『過失』で処罰対象になる可能性
つまり、
「知らなかった」「確認していない」は免罪になりません。
③ 「派遣会社から来たから大丈夫」は通用しない
今回の会社のように知人の派遣会社からの紹介だったとしても、
在留カード確認は受け入れ企業自身の義務です。
④ 逃走実習生を“好条件”で受け入れるとリスクは倍増
本件では1日1万円との報道があり、
「逃走者」を“丸ごと受け入れた”構図に近く、
警察・入管の捜査が入りやすい状況と言えます。
【なぜ技能実習生は逃走するのか(構造問題)】

技能実習制度は次の構造的な問題が重なっています
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実習先変更が事実上困難
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低賃金・長時間労働が残る現場
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監理団体・受入企業の管理体制の差
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借金を抱えて来日するケースが多い
結果として、
待遇改善を求めても動けず、逃走→闇バイト化
という悪循環を生みやすい制度設計となっています。
入管庁の統計でも、技能実習からの失踪は依然1,000〜2,000件規模で推移しています(年度により差あり)。
【企業が“今日から必ずやるべき”コンプライアンス体制】

✔ 1. 入社前の在留カード確認を「記録」に残す
最低限揃える記録
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在留カード表裏のコピー
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就労資格・在留期限
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資格外活動許可の有無
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雇入時の確認日・担当者名
✔ 2. 毎月の在留期限チェック
管理台帳(Excel/スプレッドシート)で管理。
御社でも外国人雇用の台帳ひな型を作成しておく必要があります。
✔ 3. 派遣会社・紹介者任せにしない
今回の事件のように、「人材会社が連れてきたから」という理由で確認を怠るのは極めて危険。
委託先と契約する場合は、
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在留資格確認責任の明確化
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不法就労発覚時の対応フロー
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マイナンバー・労務管理の分担
を契約書に明記すべきです。
✔ 4. “失踪者”らしき人材の採用は絶対に避ける
逃走者には次の兆候があります
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在留カードの提出を拒む
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写真が違う/住所が不自然
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就労資格の説明が曖昧
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日本語・職歴の説明が不一致
少しでも不審な点があれば、専門家に相談を。
✔ 5. 特定技能制度・育成就労制度の活用
2027年には技能実習制度が廃止され、
「育成就労制度」が導入される予定です(政府方針)。
今後は制度改正が続くため、
不法就労リスクを避けるには、制度アップデートの継続的な確認が必要です。
【行政書士としての所感(コラム)】

今回の事件は“氷山の一角”です。
低賃金や労働条件、制度の硬直性により、
技能実習生が逃走→闇労働に流れ込む構造は以前から指摘されてきました。
しかし、受け入れ企業側が
「確認していなかった」
と供述する状況が続くかぎり、問題は解決しません。
外国人材が増える時代においては、
「知らなかった」は許されない。
外国人雇用は“制度理解”の有無で会社が守られるか失われるかが決まる。
という認識が必要です。
【注意点・例外】

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本件の詳細な捜査結果は今後の警察・検察の判断により変動し得ます
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技能実習生本人が在留資格変更を受けられる場合は限定的
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実習生が逃走した場合、受け入れ企業側にも監理責任が問われる可能性あり
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個別案件の判断は専門家(行政書士・弁護士)への相談が必要
人材紹介会社の担当者は、入管法違反を知った上で紹介する担当者が少なからずともいます。
会社を守るのは会社の代表者である社長本人です。
少しでも良いのでこのブログがお役に立てれれば幸いです。
【出典】
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読売テレビニュース(2025年11月)
※報道内容は著作権に配慮し要点のみ記述
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出入国管理及び難民認定法(資格外活動禁止、不法就労助長罪)
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入管庁「技能実習制度に関する資料」
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