1. 在留管理制度と在留カードの基本

現行の在留管理制度（2012年開始）は、中長期在留者を対象に、在留状況を継続把握する仕組みです。対象者には在留カードが交付され、在留資格・在留期間・就労制限の有無など重要情報が記載されます。

企業が見るべき在留カードの要点

• 在留資格の種類：就労可能な資格か（例：技人国、特定技能、経営・管理等）

• 就労制限の有無：カード表面の「就労制限の有無」欄と裏面の資格外活動許可の有無

• 在留期限：満了日と、更新・変更“申請中”の記載の有無

• 番号の真偽/失効確認：疑義があれば失効照会などで確認

 

在留カードは「見れば就労可否が分かる」設計なので、採用時の一次確認を怠ると、過失があると評価されやすいのが実務上の特徴です。

2. 企業の届出①：外国人雇用状況届出（ハローワーク）

外国人を雇い入れた時・離職した時には、氏名、在留資格、在留期間等を確認し、ハローワークへ届出する義務があります（雇用対策法28条）。

届出期限は原則「翌月末まで」（雇用保険の取得・喪失届と同タイミング運用が一般的）です。

よくある落とし穴

• 派遣・請負・短時間雇用でも対象になり得る

• 退職を“自己都合で処理したから不要”は誤り

• 在留資格の確認を会社側がしていないと、届出内容の正確性を欠く

 

違反すると法人・担当者に罰金リスクもあり、雇用審査や監査での指摘事項になりやすい部分です。

3. 企業の届出②：入管への「所属機関としての届出」

就労系在留資格（技人国、企業内転勤、特定技能など）では、所属機関の変更・受入開始/終了等を入管に届け出る制度があります。

現在は電子届出システムの利用が標準になりつつあります。

特に特定技能は2025年4月以降、届出頻度や項目が見直され、「何をいつ出すか」が以前より細かく管理される方向です。制度変更に合わせた社内フロー更新が重要です。

4. 従業員側の届出義務を“会社がフォローすべき理由”

在留カード記載事項（住居地、所属機関、配偶者関係等）の変更は本人が14日以内に届出する義務で、未届は罰則・在留資格取消の可能性があります。

形式上は本人責任ですが、実務上は

• 本人が罰則→就労不能→現場が止まる

• 更新審査が厳格化→人員計画に直撃

  という企業側ダメージが大きい。したがって、**「本人にやらせっぱなしにしない内製管理」**がリスク低減の核心になります。

 

5. 法令違反時の企業リスク（不法就労助長）

在留カード確認不足や、就労不可の在留資格で働かせた場合、企業は不法就労助長罪の対象になり得ます。知らなかったとしても、確認をしていなければ「過失あり」とされやすいのが判例・運用の傾向です。

6. 行政書士として提案する社内チェック体制（簡易版）

採用時

1. 在留カード原本確認（資格・期限・就労制限）

2. その場でコピー、保管目的を本人に通知（個人情報として厳格管理）

3. 必要に応じ失効照会・資格外活動の有無確認

 

在籍中（毎年/更新前）

1. 期限3〜4か月前に更新アラート

2. 申請中の裏面記載確認

3. 住所変更・転職・離婚など「14日届出イベント」を周知

 

退職時

1. 離職届出（外国人雇用状況届出）

2. 特定技能などは入管届出の要否を再確認

 

【注意点・例外】

• 留学生アルバイトは「資格外活動許可」の範囲（週28時間等）を超えると即・不法就労になり、企業側も助長罪リスクが生じます。更新・監査の際に過去勤務実績を精査されることがあるため、シフト管理と勤怠記録の整備は必須です。

• 「所属機関届出はハローワークに出しているから不要」となるケースがありますが、在留資格・制度で扱いが異なります。特定技能・高度専門職などは個別の届出ルールを必ず確認してください。

• 在留カード番号は個人識別符号に該当し、取得目的の通知・安全管理措置など個人情報保護法対応が求められます。社内の保管方法・アクセス権限まで含めて整備が必要です。

• 具体的案件では在留資格の種類、雇用形態、業務内容により判断が分かれるため、疑義があれば専門家に確認が必要です。

 

【出典】

• Manegy「外国人従業員のために必要な企業の各種届出／在留管理制度と在留カード」（2025-11-22公開）

• 厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」

• 出入国在留管理庁「電子届出システム／所属機関等に関する届出」

• 出入国在留管理庁「特定技能関係の申請・届出様式／運用改善（2025-04-01）」

 

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