高市政権が進める「永住許可要件の厳格化」は何を変えるのか(行政書士が制度背景と実務リスクを読み解く)
はじめに
永住者は増え続けている。技人国も急増している。
それ自体は社会の自然な流れだとしても、制度のほころびが見え始めると、国は一気にテコ入れに動く。今回の「永住許可要件の厳格化」も、まさにその象徴のように感じた。
記事を読みながら、私は事務所に寄せられる相談の空気と重ねていた。永住を希望する方の表情の奥にある不安、企業が抱える制度理解のズレ、そして一般市民の“なんとなくの不公平感”。
これらが、国が今回の方向性を打ち出した背景にあるのだと思う。
ここからは制度面の核心に一つずつ触れつつ、実務上のリスクや具体的な影響を整理してみる。
永住許可要件が「厳しくなる」とはどういうことか

今回の議論の中心にあるのは、主に二つ。
1. 「最長在留期間=3年でも可」という経過措置の廃止
現行では、永住申請の要件である「最長の在留期間を持つこと」について、
本来は5年が最長であるにもかかわらず、3年でも最長扱いとして認める 運用が続いてきた。
この例外を外す方向で議論が進んでいる。
これは実務にとってかなり大きい。
特に技人国で働く若い外国人は、3年→永住という流れが一般化しつつあった。
もし本当に3年ルートが閉じられると、永住までの時間軸が数年単位で伸びる。
行政書士としても、最終的に「永住までの設計」が組み直しになるケースが増えそうだ。
2. 社会保険料の未納があれば「更新・変更を不許可」に
今回、最もインパクトが大きいのはここだと思う。
政府は2029年度以降、マイナンバーを通じて税・社保の未納状況を入管が自動把握 できる仕組みを予定している。
そのデータをもとに、
・国保料が一定期間未納
・年金未加入(加入義務があるのに入っていない)
・住民税の滞納
といった場合、在留期間更新や資格変更を認めない 方針が出されようとしている。
正直に言うと、これは永住審査だけでなく、すべての在留資格に影響する可能性 がある。
制度を眺めていると、静かに大きな転換点が来たな、と感じる。
背景にある「外国人比率10%時代」の不安

政府は、将来的に外国人比率が10%に到達するとの推計を踏まえて政策転換を急ぐ。
今の日本は3%台。
ただ、地域によってはすでに20%に近い市もあり、自治体現場では「制度が追いついていない」感覚は強い。
国の制度は“全国一律”で設計されるが、社会の実態は地域でまったく違う。
だからこそ永住許可も、入管行政も、より“スクリーニングを厳しくする”方向に流れていく。
その空気を強く感じた。
急増する「技人国」と、制度の歪み

記事でも触れられていたが、技術・人文知識・国際業務(技人国)は5年で1.6倍に増えている。
大きな原因は人手不足だが、別の側面もある。
・本来はホワイトカラー向けの資格
・しかし実務では現場作業をさせる例が多発
・資格外活動での摘発例が増えている
制度が人手不足の“穴埋め”として扱われ、資格の趣旨が曖昧になっている。
行政書士として各地の企業から相談を受けていても、現場とのギャップは日に日に広がっていると感じる。
ここに国が踏み込むのは、ある意味では時間の問題だった。
永住希望者・企業・一般市民それぞれへの「実務上の影響」

ここからは、制度変更がどこに届くのかを整理する。
1. 永住を目指す外国人への影響
・永住申請時期が今より確実に遅くなる
・税・社保の未納は一切通らない
・扶養控除の扱いも今以上に厳格化の可能性
“知らなかった”では済まない制度になる。
私の事務所でも、今後は早い段階から在留カードと税・社保の状況を一体管理する必要が出てきそうだ。
2. 外国人を雇用する企業への影響
企業にも負担が増える。
・従業員の社保加入の徹底
・住民税の特別徴収(給与天引き)の実施
・未加入・未納放置は「更新不許可」という形で跳ね返る
つまり企業の労務管理そのものが、従業員の在留資格と直結する。
採用の段階で「社保加入は任意です」と説明していた企業は、今後は完全にアウトになる。
3. 一般市民が抱えている“不公平感”への対応
国保納付率は
・外国人平均63%
・全体平均93%
という差がある。
この数字だけを見ると、「同じ地域で暮らすのに負担が違う」という不満が生まれやすい。
制度改正の背景には、この“目に見えない社会感情”も確実に影響している。
行政書士として見える「これから増える相談」

今回の報道を読んだタイミングで、頭の中にいくつかの相談が浮かんだ。
・永住の申請時期をどうするか
・税と社保の未納をどう整理するか
・企業側が従業員の労務管理をどう整えるか
・技人国の職務内容の見直し
・扶養家族の実態調査への対応
制度だけ見ていてもわからない。
現場で起きている“積み重ね”が今の政策につながっている。
そう思うと、日本社会が次のステージに入ったのだと実感している。
まとめ

今回の議論はまだ「検討段階」だが、方向性はかなり明確だ。
・永住許可は確実に厳しくなる
・税・社保の未納は在留に直接影響
・技人国の濫用は徹底的に是正
・2029年度以降はマイナンバーで審査が実質的に自動化
外国人が増えるという未来を前提に、制度を再設計する段階に入っている。
行政書士の立場としては、制度が動く前に“整えるべき項目”を明確にし、外国人本人と企業の双方にとって不利益が生まれないように共有していくことが求められる。
制度の運用が変わるとき、最も困るのはいつも「情報を知らなかった側」だ。
だからこそ今の段階から準備を始めたい。
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