永住許可に「日本語能力」要件が加わる可能性 制度はどこへ向かうのか
永住許可の要件に、日本語能力を追加する。
2025年12月18日、この方針が報じられた。
永住といえば、これまでの実務感覚では「在留年数」「生計要件」「素行要件」が三本柱だった。日本語能力は、帰化とは異なり、明示的な要件ではなかった。それが、ここにきて大きく揺れ始めている。
なぜ今、日本語能力なのか

背景にあるのは、永住者の数そのものだ。
出入国在留管理庁の統計では、2025年6月末時点で在留外国人数は約396万人。そのうち永住者は約93万人、全体の23.6%を占める。
もはや「一部の在留資格」ではない。
永住者は就労制限がなく、在留期限もない。その一方で、地域社会との摩擦、行政手続の未理解、生活ルールの不徹底といった問題が、各地で顕在化している。
今回の日本語要件追加は、「管理強化」というより、「共生の最低条件を制度として可視化する」試みと見るのが自然だろう。
いつから、どの程度の日本語能力が求められるのか

報道ベースで明らかになっているのは、次の点までだ。
・自民党の外国人政策本部の提言に盛り込まれる見通し
・2027年4月施行の「永住許可取消制度」までに詳細を決定
・具体的な日本語レベルは未定
つまり、現時点では
どの試験を使うのか(JLPTか、別制度か)
どのレベルなのか(N4相当か、N3か、それ以上か)
既存の永住者に影響があるのか
これらはすべて「わからない」。
推測ですが、帰化要件ほど高い水準(日本語能力試験N2前後)をそのまま当てはめる可能性は低いと考えます。一方で、「日常生活と行政手続が一人でできる程度」は、制度上の最低ラインとして設定されても不思議ではない。
日本語能力以外の“抱き合わせ要件”にも注意

今回の報道で、実務的に見逃せないのが次の点だ。
・生活ルール等を学ぶプログラムの受講義務化
・収入条件の引き上げ案
特に収入条件は、永住申請のハードルを実質的に引き上げる効果がある。
日本語能力だけに目を奪われていると、「実は年収要件の方が厳しくなっていた」という事態も起こり得る。
永住許可は、単一要件ではなく「総合評価」で見られる。
在留年数が長くても、制度変更の影響を受けるケースは今後確実に増える。
実務の現場で、今からできること

制度が決まっていない以上、「今すぐ試験を受けろ」とは言えない。
ただし、行政書士として相談を受ける立場から言えば、方向性は明確だ。
・日本語学習歴を説明できる資料を残す
・地域活動や職場での日本語使用実態を整理する
・永住だけでなく、帰化との比較も含めた中長期設計を考える
永住はゴールではなく、「日本社会で暮らし続けるための資格」だという考え方が、制度側からも強く示され始めている。
行政書士として感じること

永住者に日本語能力を求めること自体は、制度趣旨として理解できる。
ただ、その線引き次第では、「真面目に働いてきた人ほど困る」制度になりかねない。
制度が固まるまでのこの2年間は、外国人本人にとっても、支援する側にとっても、極めて重要な準備期間になる。
永住を検討している方は、「まだ先の話」と思わず、一度立ち止まって考えてほしい。
制度は、確実に次の段階へ進み始めている。
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【結論】
永住許可に日本語能力要件が追加される方向性はほぼ確実だが、具体的内容は未確定。今後2年間が準備期間となる。
【根拠】
・永住許可要件見直しに関する報道(2025年12月18日)
・出入国在留管理庁 在留外国人数統計
・改正入管難民法(永住許可取消制度:2027年4月施行)
【注意点・例外】
・日本語レベル、対象者、経過措置は未定
・既存永住者への影響は現時点では不明
・収入要件等の同時強化に注意が必要
【出典】
・news.jp 配信記事「永住許可要件に日本語能力を追加 27年度にも」
・出入国在留管理庁 公表資料
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