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TOP > コラム > 社会包摂プログラムとは?外国人の在留審査に「日本語・生活ルール」が影響する時代へ

社会包摂プログラムとは?外国人の在留審査に「日本語・生活ルール」が影響する時代へ

2025.12.28
コラム外国人支援
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朝日新聞が、政府・与党が「社会包摂プログラム(仮称)」の創設を検討し、受講歴を在留審査の考慮要素に加える案があると報じました。

狙いは、日本語や生活ルールの共有を入口に、地域摩擦を減らし、排外主義的な空気の高まりを抑えることだといいます。 

行政書士として日々の相談現場にいると、「ルールを守らない人が増えた」という嘆きより、「そもそも前提が伝わっていない」ことの方が多いと感じます。

ゴミ出し、学校の連絡網、病院の受診、在留手続の期限。どれも日本側は“常識”として進むのに、当事者は入口で迷子になりやすい。
ここに体系的な導線を作るという発想自体は、私は現実的だと思っています。

一方で、報道ベースの「在留審査で考慮」という言葉は、実務家としては見逃せません。

考慮要素は、運用次第で“ほぼ要件”にもなり得るからです。

現時点では、どの在留資格が対象になるのか、受講が義務なのか任意なのか、未受講の場合にどう扱われるのかなど、肝心な設計は未確定です(ここはわからない、と明言します)。 

「社会包摂」と在留審査が結び付く流れ

今回の動きは、いきなり降って湧いた話というより、既にある政策の延長線上に見えます。

政府は「外国人材の受入れ・共生」の枠組みの中で、日本語教育や生活支援、自治体・関係機関の連携を進めてきました。出入国在留管理庁の共生施策でも、日本語学習機会づくり等は重要項目として整理されています。 

日本語教育については、法律(日本語教育の推進に関する法律)に基づき、国・自治体・事業主の役割を整理し、推進する建付けが明確化されています。

事業主にも「協力」や「学習機会の提供等に努める」ことが位置付けられています。 

つまり、現場で企業が「日本語は本人の努力で」と言い切りづらくなる方向性は、すでに制度面で始まっているとも言えます。

さらに報道では、永住許可の要件に日本語能力を追加する検討や、共生のためのプログラム受講を条件化する案も伝えられています。 

ここまで来ると「日本語教育」そのものが、福祉や教育の施策ではなく、在留管理の論点として扱われ始めている、という見立てが必要です。

「良い制度」になり得る一方、つまずきやすい設計ポイント

社会包摂プログラムが機能するために、私は次の3点が要になると見ています。

第一に、受講機会の公平性です。地方は教室が少ない、夜間・休日がない、子育てやシフト勤務で通えない。

こうした人に不利な設計だと、制度は“教育”ではなく“選別”に見えてしまいます。自治体向けガイドライン作成の検討が報じられていますが、まさにここが肝です。 

第二に、評価方法の透明性です。「どの程度の日本語」「何時間の受講」「何を理解していれば足りるのか」。
ここが曖昧だと、申請実務は一気に不安定になります。運用が担当官の裁量に寄り過ぎると、同じ事情でも結果が割れやすい。

第三に、在留審査における位置付けです。考慮要素にとどめるのか、要件化するのか。
永住分野では要件化の議論が進む可能性が報じられており、2027年4月までに詳細を決めるといった見通しも伝えられています。 

このスケジュール感が本当に固まるかは今後の公式資料待ちですが、企業も本人も「何も決まってないから何もしない」と言い切れる空気ではなくなっています。

実務として、外国人本人と企業が今からできる「小さな備え」

制度が固まる前でも、リスクを下げる動きはできます。

ポイントは「努力の可視化」です。

外国人本人側は、日本語学習の記録を残しておく。JLPT等の資格だけでなく、自治体教室の受講、オンライン講座、職場研修でも構いません。
何を、いつ、どの程度やったかが追える形にしておくと、将来“考慮”が始まったときに説明が効きます。

企業側は、「やらせっぱなし」をやめる。
入社時の生活オリエン、就業ルール、税・社保・在留手続の基礎を、簡単な資料とセットで渡す。

ここはコストというより、離職・トラブル・手続遅延を減らす投資です。

日本語教育推進法の考え方からも、企業協力は今後ますます問われやすい。 

私は、在留手続の世界でいちばん怖いのは「本人が悪い/企業が悪い」の断罪より、「説明不能」な状態です。

制度が動く時ほど、説明できる材料が強いです。

【結論】

社会包摂プログラム(仮称)は、外国人の日本語・生活ルール習得を制度的に支援しつつ、将来的に在留審査で「考慮」される可能性がある。現時点では詳細未確定だが、本人と企業は学習・支援の記録を残す備えが有効。

【根拠】

報道で、政府・与党がプログラム創設と在留審査での考慮を検討していること、永住要件への日本語能力追加・受講条件化の議論があることが示されている。 

また、日本語教育推進法に基づき国・自治体・事業主の役割が整理され、企業の協力も位置付けられている。 

【注意点・例外】

対象となる在留資格、受講の義務性、未受講時の不利益の有無、評価水準は未確認(報道段階)

受講機会の地域差・就労形態差によって不公平が生じると、制度の正当性が揺らぐ

永住分野は要件化議論が先行し得るが、確定には公式発表・法令改正の確認が必要 

【出典】

朝日新聞(社会包摂プログラム報道) 

nippon.com(時事・共同通信配信記事の転載) 

文化庁「日本語教育の推進に関する法律の施行について(通知)」 

出入国在留管理庁(共生施策の整理)

 

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