口座が作れない、という小さな詰まりが生活を止める

給与・家賃・スマホ、全部が「口座前提」
来日して最初に困ることは、意外と地味です。
部屋を借りたい、携帯を契約したい、給与を受け取りたい。
どれも「銀行口座がある」前提で話が進む。口座がないだけで、生活の歯車が噛み合わなくなる。
これは、在留外国人にとっての“生活インフラ”そのものだと感じます。
窓口が長いのは「怠慢」より「KYCの重さ」
窓口で時間がかかる理由は、単純に手際の問題ではありません。
金融機関には、本人確認や取引目的の確認など、マネロン・テロ資金供与対策として法令上の義務があります。だから、確認項目が多くなりがちです。
なぜ銀行は慎重になるのか:KYCと「非居住者」取扱いの誤解

本人確認は義務。犯収法と金融庁の要請
口座開設時に「名前・住所・生年月日」を公的書類で確認すること、記録を残すことは、犯罪収益移転防止法の枠組みにある基本動作です。
金融庁も、外国人に対する丁寧な説明や受け入れ体制の整備を求めつつ、「複数の本人確認書類が必要になり得る」点など、実務上の留意事項を示しています。
ここで誤解が起きやすい。
「外国人だから厳しい」のではなく、「確認できない状態だと開けられない」が本質です。書類の不備、住所の不一致、在留カード更新後の未届などは、結果として手続を止めます。
「入国6か月ルール」の正体:外為法の居住性
現場でよく出るのが「入国から6か月たっていないと口座が作れない」という話です。
これは、税法の“非居住者”概念(原則1年など)と混線しやすいのですが、銀行実務で問題になりがちなのは外為法上の居住性(居住者・非居住者)の扱いです。
財務省の通達では、外国人は原則非居住者と推定しつつ、「日本国内の事務所に勤務する者」や「入国後6か月以上経過した者」は居住者として取り扱う、という整理が示されています。
大事なのは、6か月が“絶対条件”ではないこと。
勤務実態などで居住者扱いになり得る一方、金融機関側の運用や商品設計によって、実務上のハードルが生まれます。
セブン銀行ATMの口座開設は何を変えるのか

2024年12月開始、ATMで外国籍も申込可能に
セブン銀行は、2024年12月23日から、第4世代ATMを使った「+Connect」で外国籍の方の口座開設申込を可能にしたと案内しています。
同日に、口座開設の本人確認でJPKI(公的個人認証)の導入も公表されています。
ここで効いてくるのが「手続きの場所」と「手続きの標準化」です。
支店窓口で“担当者の経験値”に左右されていた部分が、一定の手順に寄っていく。これは生活者側の安心感にもつながります。
dekisugi連携は「団体がまとめて支援する」設計
さらに2025年9月には、外国人材管理ツール「dekisugi」との連携で、監理団体等が登録情報を活用して口座開設申込を支援できる、とセブン銀行側が紹介しています(対象は段階的)。
「来店不要・最短2営業日」という設計は、来日直後のボトルネックを明確に狙っています。
在留外国人が事前に準備するとラクになるもの

まずは「一致」を作る
私が相談を受ける中で、つまずきやすいのは難しい法律論ではなく、表記ゆれや情報の不一致です。
在留カード、住民票、届出住所、勤務先情報、電話番号。どこかがズレると確認が長引きます。
金融庁の外国人向け資料でも、在留カードやパスポート等での確認、在留資格・在留期間の確認の観点が示されています。
口座を作った後の「更新連絡」を軽く見ない
口座開設より実は大事なのが、在留カード更新後の届出です。
金融機関側が在留期限を確認している以上、更新したのに未届だと、継続取引に影響が出る可能性があります。セブン銀行ATMを活用した在留期限更新手続の事例も、地域金融機関から公表されています。
行政書士として思うこと:金融は共生の温度計

2027年の育成就労開始で「最初の半年」がさらに重要に
技能実習から育成就労への移行は、制度として「長く定着」をより強く意識した設計です。育成就労制度は令和9年(2027年)4月1日施行と整理されています。
定着が進むほど、口座は“最初の手続き”ではなく、“継続管理の手続き”になります。更新届、住所変更、勤務先変更。生活の変化に金融が追いつけるかが問われます。
地銀が消える話ではない。ただ「役割」が変わる
一方で、コンビニATM網が拡大すれば、地方の金融機関の負担が軽くなる面もある。伊藤忠商事とセブン銀行の資本業務提携により、ファミリーマート店舗へのATM設置が進む見込みも報じられています。
ただ、地域の暮らしに寄り添う金融、事業者融資、生活相談の受け皿まで“総取り”できるわけではありません。入口が変わるだけで、地域金融の仕事が消えるとは私は思いません。むしろ、入口が整うほど、次の課題が見えやすくなるはずです。
【結論】
外国人の「口座が作れない」問題は、言語よりもKYCと非居住者取扱いの誤解・運用に起因しやすい。ATM口座開設は入口の摩擦を減らすが、更新届など継続管理が重要。
【根拠】
本人確認・顧客管理は法令と監督上の要請であり、外為法上の居住性判定(6か月等)が金融実務の前提になり得る。セブン銀行はATMで外国籍の口座開設を開始し、関連連携も進めている。
【注意点・例外】
口座開設可否や必要書類は金融機関・商品・個別事情で異なる。税法上の非居住者概念と外為法上の居住性は一致しないため混同に注意が必要。
【出典】
金融庁「外国人の方の 預貯金口座・送金利用について」「外国人顧客対応にかかる留意事項」
e-Gov法令検索「犯罪による収益の移転防止に関する法律」「外国為替及び外国貿易法」
財務省「外国為替法令の解釈及び運用について(通達)」
出入国在留管理庁「育成就労制度(施行日等)」
セブン銀行「ATMで外国籍の方も口座開設(2024/12/23)」「dekisugi連携(2025/9/18)」
デジタル庁「JPKI導入事業者・事例一覧」
伊藤忠商事プレスリリース/Reuters(資本業務提携とファミマ設置)
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