入口にあるのは「紙の信用」だと痛感する

入管手続は、現場でよく「書類の世界」と言われます。
面接や試験で人物を見極めるというより、提出された資料の整合性で判断が積み上がっていく。だからこそ、その入口にいる専門職が“書類を曲げる”と、制度全体が静かに傷つきます。
2026年1月8日、ベトナム人の入国をめぐり、在留資格認定証明書(COE)の申請書類を偽造して提出した疑いで、行政書士が有印私文書偽造・同行使などの容疑で逮捕された、という報道が出ました。
報道では、就労実績のある会社で働くと偽り、実際は別の仕事に就いていた、審査を早める狙いがあった可能性がある、とされています。
私はこの種のニュースに触れるたび、怒りというより先に、業界の信用が一枚ずつ剥がれていくような焦りを覚えます。まじめに積み上げている人ほど、しんどい構図だからです。
事件の概要:何が起きたのか

報道内容の要点
報道(共同通信)によれば、逮捕容疑は2024年5〜6月、複数のベトナム人について、国内就労に必要なCOEの申請書類を偽造して出入国在留管理庁へ提出した疑い、という整理です。資格を得たベトナム人らはすでに帰国しているとも報じられています。
なお、捜査段階の情報であり、事実認定は今後の手続で確定していく点は割り引きが必要です。
「勤務先の偽装」は何を意味するか
技人国(技術・人文知識・国際業務)でのCOE申請は、「どの会社で」「どんな業務を」「どの待遇で」行うのかが骨格です。勤務先を偽るというのは、申請の骨格そのものを差し替える行為になります。
ここを崩すと、後から何を積み増しても説明がつかなくなる。
なぜ「受入実績のある会社名」が効いてしまうのか

審査は、提出資料の整合性と合理性の確認が中心になります。すると、過去に受入実績が多い会社名や、審査で“通りやすい体裁”に引っ張られる誘惑が出る。
ただ、ここで一線を越えると、早くなるどころか、後で最も重い形で跳ね返ります。制度は、うまくいったときは静かですが、崩れるときはまとめて崩れます。
関係者それぞれのリスク

外国人本人:取消・再入国への影響
在留資格は、不正な手段で得たと判断されれば「取消」の射程に入ります。入管法には在留資格の取消し(第22条の4)が置かれており、虚偽や不正の関与が問題になり得ます。
また、入管手続では、届出に関する虚偽について罰則が定められている条文もあります(例:第71条の2)。
この手の案件で一番つらいのは、本人が「言われるままに出した」場合です。
責任の濃淡は事案で変わりますが、「知らなかった」だけで完全に無傷とは限りません。ここは専門家に確認が必要です。
受入企業:信用の毀損と“知らなかった”の限界
企業側も、採用スキームや実態が疑われると、行政対応・取引先対応・社内統制の全てが重くなります。採用実務では、在留資格の範囲・職務内容・就労実態の一致を説明できる状態にしておくことが、結果的に会社を守ります。
行政書士:刑事責任と懲戒
今回の容疑は有印私文書偽造・同行使などと報じられています。刑法では、私文書の偽造に関する規定が置かれ、例えば第159条は「私文書偽造」として刑(懲役3月以上5年以下)を定めています。
偽造した文書を行使する側も、同等の刑が規定されています(第161条)。
そして、入管法における虚偽申請は「在留資格等不正取得罪」などに該当し、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される犯罪行為です(入管法第70条1項など)
加えて、行政書士法上も、信用・品位を害する行為の禁止(第10条)や、違反・不適当行為に対する懲戒(第14条:戒告、業務停止、業務禁止)が明記されています。
ここまで並べると硬い話に見えますが、実務感覚としてはもっと単純で、「説明できない申請は、最後に自分の首を締める」ということです。
ブローカー案件で起きやすい赤信号

私の感覚では、危ない案件は“入口”でだいたい匂いがします。例えば次のようなサインです。
・依頼者が会社ではなく第三者(紹介者・仲介者)で、実体が見えない
・「この会社名で出してほしい」と先に結論が来る
・雇用契約書や職務内容が後出しになる
・候補者本人の経歴・学歴資料の原本性が弱い
・報酬が極端な成果報酬型で、スピードだけを要求される
全部が即アウトではありません。ただ、一つでも出たら、確認を厚くするか、受任を見送るか。ここでの判断が、事務所の寿命を伸ばします。
事務所としての実務対策:結局、何を守るか

対策は、派手なノウハウではなく、淡々とした確認の積み重ねです。
受任前に「雇用の実在」を掴む
会社の実態、採用の意思決定者、就業場所、指揮命令系統。ここが曖昧だと、後工程が全部曖昧になります。特に“別会社で働く”スキームは、説明を誤ると一気に崩れます。
職務内容と学歴・経験の接続を言語化する
技人国は「何をやるか」が核心です。職務内容を抽象語で塗るのではなく、日々の業務に落とした説明にする。ここが弱いと、誰かが安易に“通りのよい雛形”に逃げやすい。
「断る技術」は正義寄りの実務
「急いでいる」「みんなやっている」は、現場で必ず出ます。そこで、断るか、設計をやり直すか。ここを丁寧にできる事務所だけが、長く残ると感じています。
私見:スピードより「説明できる申請」が結局早い

現場では、年度末や入社時期が絡むと、どうしても焦ります。依頼者も、本人も、「とにかく早く」と言う。わかります。こちらも早く通してあげたい。
でも、早さを優先して“説明不能な穴”を作ると、後で何倍にもなって戻ってきます。取消、追加資料、呼出し、企業側の調査。本人の生活が止まる。会社も止まる。
だから私は、少し嫌われても「説明できる形に整えてから出しましょう」と言う側でいたい。今回の報道は、その姿勢を再確認させる出来事でした。
【結論】

勤務先を偽るような虚偽申請は、本人・企業・行政書士の全員に重大なリスクを生む。最短ルートは「通る形」ではなく「説明できる形」を作ること。
【根拠】
・COE申請書類偽造で行政書士が逮捕されたとの報道(共同通信)
・刑法159条(私文書偽造の刑)・161条(行使の刑)
・入管法22条の4(在留資格取消し)および罰則条文(例:71条の2)
・行政書士法10条(信用・品位)および14条(懲戒)
【注意点・例外】
・本件は捜査段階の報道であり、事実認定と法的評価は今後変わり得る
・本人の関与・認識の程度、企業との関係(雇用か請負か、指揮命令か等)で結論は大きく変わるため、個別事案は専門家に確認が必要
・入管実務は運用要素が強く、同じ類型でも地域・時期・資料の出来で結果が揺れる
【出典】
・共同通信(熊本日日新聞社掲載)「虚偽申請疑い行政書士逮捕、大阪 ベトナム人入国巡り」
・Japanese Law Translation:Penal Code(刑法)
・Japanese Law Translation:Immigration Control and Refugee Recognition Act(入管法)
・Japanese Law Translation:Certified Administrative Procedures Legal Specialist Act(行政書士法)
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