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TOP > コラム > 技術・人文知識・国際業務が45.8万人に増加:適正化議論のポイントを行政書士が読む

技術・人文知識・国際業務が45.8万人に増加:適正化議論のポイントを行政書士が読む

2026.02.07
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自民党「外国人政策本部提言」に見る、技人国の現状と適正化の具体策

 

令和8年1月20日付で、自民党「外国人政策本部提言」が公表されています。

提言は幅広い論点を扱いますが、その中で在留資格「技術・人文知識・国際業務(いわゆる技人国)」について、かなり踏み込んだ“適正化”の方向が示されています。

まず前提として、これは法律そのものではなく「提言」です。
とはいえ、運用が先に動く分野でもあるため、現場の空気は早めに変わりやすい。
そこが怖いところでもあり、備えどころでもあります。

1. 何が問題視されているのか:「増えた」だけでは終わらない

提言が最初に示すのは、在留者数の急増です。平成26年末の約12万3,000人から、令和7年6月末には約45万8,000人へ増加したと明記されています。

この数字の大きさは、制度が「高度人材の受入れ」だけでなく、事実上の一般的な就労ルートにもなっている現実を映します。

そして本題は、増加の背景にある“中身”です。特に焦点に置かれているのが派遣です。

派遣による就労では、具体的活動内容の実態把握が十分にできておらず、予定されていない業務に従事している場合がある、実際に当局が対応している、と提言は述べます。

現場感としても、職務内容が「専門業務」の建付けで入ってきたのに、配属後に現場都合で仕事が寄っていき、気づけば“別の人手不足”を埋めている。
こういうズレは、悪意よりも「忙しさ」と「認識不足」で起きがちです。

さらに、資格該当性のない業務に従事する事案への対策が必要だと明示されます。

ここが、いわゆる「単純労働禁止」という雑な話ではなく、「許可された活動内容と実態が一致しているか」という一点に収れんしていくのが、近年の運用の特徴です。

加えて提言は、資格該当性のない業務に従事している者でも、在留年数などの要件を満たせば永住許可を受けているのではないか、という懸念にも触れています。

永住は「結果」なので、入口の在留資格の運用がゆるむと、後から締め直すのは難しい。そういう危機感が読み取れます。

2. すでに動いている施策:「実態調査」と「審査」の両輪

提言には「実施中」として、活動実態に疑義がある案件について、地方出入国在留管理局職員が勤務先に赴くなどの実態調査を行い、慎重審査で不適切就労の防止を図っている、とあります。

ここは、企業側から見ると一番現実的な変化です。書面が整っていても、実態が伴わなければアウトになる。

「速やかに実施すべき」としては、資格該当性のない業務に従事させている疑いのある受入れ機関や派遣先の活動状況を調査し、審査を厳格運用しつつ、許可の在り方を検討すべき、とされています。

“許可の在り方そのもの”という表現が強い。単に提出書類を増やす話ではなく、制度設計や運用要領に踏み込む可能性がある、という示唆です。

3. 具体策としての「誓約」:派遣スキームに刺さる一手

提言で具体例として挙がっているのが、派遣就労の場合に「派遣先で専門的な業務に従事させることを派遣元に受入れ時に誓約させる」運用措置です。

この一文は短いですが、実務には重い。

誓約が導入されると、少なくとも次の動きが想定されます(推測ですが、制度運用の流れとして自然です)。

・派遣元が「派遣先で何をさせるか」を事前により細かく管理する

・派遣先にも、業務逸脱を起こさないための運用記録や説明責任が求められる

・逸脱が起きた場合、派遣元だけでなく派遣先の評価にも影響する

派遣は「人の移動」が前提なので、入管の視点ではブレやすい。だからこそ、誓約という“固定具”を入れたくなる。提言はその方向をはっきり示しています。

4. 今後の課題は「受入れ機関の責任」:結局、誰が担保するのか

提言は今後の課題として、技人国で受け入れた外国人の活動実態を踏まえ、受入れ機関の責任の在り方も含め、専門的業務への従事を確保する方策を検討すべきだとしています。

ここは、企業側にとって“静かな本丸”です。

いままでも「雇用契約」「職務内容説明」「学歴・職歴との関連性」など、申請時点では整えるべきものが多い。今後はそれに加えて、受入れ後の運用、つまり

・配属後の職務が変わっていないか

・現場が人手不足で“つい”寄せていないか

・誰がそれを点検し、是正できるのか

が問われやすくなる。

行政書士として相談を受ける立場だと、ここは「申請書の作り方」より「会社の仕組み」の話になります。人事・現場・派遣営業・管理職が同じ言葉で“専門業務”を理解しているか。ここがズレると、書類の精度を上げても限界が出ます。

5. 企業と外国人本人が、今日からできる現実的な備え

提言は政策文書なので、直接「こうしなさい」とは書きません。
ただ、書いてある内容を実務に落とすと、備えは案外シンプルです。

企業側の最低ライン

・職務内容を「専門業務」として説明できる状態にしておく(求人票、職務記述、評価項目を揃える)

・配属後の業務変更が起きる仕組みなら、変更時にチェックが入る社内フローを作る

・派遣が絡むなら、派遣元任せにせず、派遣先も「専門業務の範囲」を管理する

外国人本人側の最低ライン

・自分の業務が何で、何が専門性なのか、説明できるようにしておく

・業務が変わった、現場の作業比率が増えた、と感じたら早めに相談する

「入管は怖いから何もしない」だと、結局、後から慌てます。逆に、日常の運用を少し整えておけば、調査や審査が厳しくなっても耐えられる。
提言の方向性は、そこを企業に促しているように見えます。

結論

自民党提言は、技人国の急増と、とくに派遣を中心とした「活動実態の把握困難」「資格該当性逸脱」を問題視し、実態調査の強化、審査厳格化、誓約導入、受入れ機関責任の明確化へ舵を切る内容になっている。

根拠

・技人国在留者数の増加(約12.3万人→約45.8万人)

・派遣での実態把握不十分、想定外業務への従事の指摘

・資格該当性のない業務への対策必要、永住への懸念

・疑義案件への勤務先実態調査

・誓約導入例、受入れ機関責任の検討

注意点・例外

・本稿のベースは「政党提言」であり、直ちに法改正や運用変更が確定したものではない。実際の運用は入管庁の通達・運用要領等で具体化されるため、専門家に確認が必要。

・「誓約」等の具体的な導入方法(誰が、いつ、何を、どの書式で誓約するか)は本文書だけでは確定できない。推測での先走りは危険。

・個別案件では職務内容、学歴・職歴との関連、雇用形態(派遣か直接雇用か)等で判断が分かれるため、個別相談が必要。

出典

自民党 外国人政策本部「外国人政策本部提言 ―国民が安全・安心に暮らし、社会・経済の持続的発展により、誰もが元気になる社会の実現に向けて―」(令和8年1月20日)

 

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