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TOP > コラム > 外国人の生活保護「実態把握」へ:厚労大臣発言が示す次の論点

外国人の生活保護「実態把握」へ:厚労大臣発言が示す次の論点

2026.03.08
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「外国人の生活保護って、結局どうなっているの?」

この質問、ここ1〜2年で明らかに増えた体感があります。

SNSで断片的な情報が流れ、自治体の窓口は静かに疲弊する。
現場は、正義感と不安と手続が、同じカウンターに積み上がっていく感じです。

そんな中で、上野賢一郎厚生労働大臣が「外国人の生活保護の利用実態を国主導で把握する」と明言しました。

ポイントは、いきなり制度を変える話というより、「まず実態が見えていない」という問題意識に軸足がある点です。

「法律」ではなく「通知」で回っている制度

ここが一番ややこしいところです。

生活保護法の条文上、保護の対象は「国民」です。
だから、法律の建付けだけを見れば外国人は“外”に置かれている。

一方で、実務は1954年(昭和29年)の厚生省社会局長通知(いわゆる昭和29年通知)を根拠に、「一定の手続を踏んだ外国人について、日本人に準じて必要な保護を行う」という運用が続いてきました。

2012年には在留管理制度の導入に合わせて、通知の文言も整理されています(在留カード、特別永住者証明書など、提示書類の扱いが明確化)。

つまり、外国人の生活保護は「法律に基づく権利」としてよりも、「行政措置としての運用」として積み上がっているのが実像です。

最高裁(2014年)で何が確定したのか

2014年7月の最高裁判決は、外国人は生活保護法上の「国民」に含まれず、同法に基づく受給権(法的権利)は認められない、という方向を示しました。

ただ、ここで誤解が生まれやすい。
判決が「行政措置としての保護そのものを全面否定した」という言い方は正確ではありません。
少なくとも、判決後も通知運用が直ちに消えたわけではなく、自治体実務は継続してきました(自治体の説明でも、その整理が見られます)。

現場感覚で言うと、ここは「権利として争えるか」と「困窮者を救う行政として動くか」が分かれている、そんな印象です。

制度の芯が二重構造なんですね。

今回の「実態把握」は、どこに効いてくるか

上野大臣は、外国人の生活保護について「利用実態の把握が十分ではない」という課題を挙げ、適正利用に向けた対応を検討すると述べています。

行政措置の対象縮小も“念頭に置く必要がある”としつつ、まずは実態把握に注力する、という順番を明確にしました。

ここから先、実務的に影響が出やすいのは次の論点です(推測ですが)。

国が「在留資格区分」「世帯構成」「就労状況」「扶養照会・支援可能性」などのデータ粒度を上げてくる

オンライン照会や統一様式が導入され、自治体間の運用差が縮まる

一部の在留資格類型について、行政措置の対象整理(絞り込み)が議論される

ただし、最後の「対象整理」は政治的にも法的にも燃えやすいテーマです。国際人権の議論、地方自治体の負担、困窮の連鎖、そして何より“生活の崖っぷち”がある。ここは専門家に確認が必要な領域です。

数字の背景も、いったん落ち着いて見る

記事内でも触れられていましたが、生活保護の申請件数は2024年に25万5897件(前年比0.32%増)で、増加が続いています。

この増加トレンドの中で「外国人」だけが特別に膨張しているのか、それとも全体の波の一部なのか。そこが見えないまま議論が先に走るのは危うい。

だからこそ、国が実態把握に乗り出す、という順序は理屈としては理解できます。

私の実務感としては、窓口が一番困るのは「結論ありき」の問い合わせです。

たとえば、既にネットで“外国人は全員不正受給”みたいな前提が固まっているケース。
現実は、もっと地味で、もっと複雑です。

病気、離職、DV、家族関係の断裂、在留資格の制約。行政の書類は淡々としているのに、相談者の生活はだいたい切実です。

国がデータを集めるなら、数字が“炎上の燃料”ではなく、“制度設計の地図”になる使い方をしてほしい。

ここは率直にそう思います。

結論

外国人の生活保護は「生活保護法上の権利」ではなく、1954年通知を起点とする行政措置として運用されてきた。上野厚労相は、対象縮小を直ちに打ち出す前に、国主導で利用実態を把握する方針を示した。

根拠

生活保護法の対象は「国民」とされる一方、昭和29年通知により外国人にも日本人に準じた保護を行う運用がある。

2014年最高裁判決で、外国人は生活保護法上の「国民」に含まれず受給権は認められない方向が示された。

厚労相会見で、まず実態把握に注力する旨が述べられている。

注意点・例外

行政措置の対象見直しは、法的整理だけでなく、人道・国際人権・自治体実務の観点が絡むため、専門家に確認が必要。

「最高裁判決=外国人への保護が直ちに違法」という理解は正確ではない可能性がある(少なくとも運用は継続してきた)。

出典

福祉新聞「外国人の生活保護の実態を把握へ 上野厚労大臣が明言」(2026-02-16)

厚生労働省「上野大臣会見概要」(2026-02-03)

厚生労働省「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」(通知、2012改正掲載)

毎日新聞(2026-02-03 配信記事)

厚生労働省「被保護者調査(令和6年12月分概数)」等

 

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