茨城県が「不法就労者の情報提供」に報奨金を支払う制度を検討している、というニュースが出ました。市民団体や農家団体が「外国人差別と分断を助長する」として撤回を求めた、という流れです。記事の中にあった「報奨金目当ての通報」「互いの監視で疑心暗鬼」という言葉、私はかなり重く受け止めました。
現場で外国人雇用に関わっていると、制度は“紙の上の正しさ”だけでは回らないのを痛感します。
不法就労は、もちろん放置できません。
まじめにやっている事業者ほど、賃金相場も社会保険も、書類整備も、全部きちんとやっているのに、裏側でルールを破って回している事業者が利益を取っていく。
これは健全な競争を壊します。だから対策自体は必要です。
ただ、通報に報奨金をつける設計は、手段として荒い。
荒い手段は、狙ったところ以外に当たります。今回はそこが論点だと思います。
まず押さえておきたいのは、「通報窓口」自体はすでに国にあります。
出入国在留管理庁は、メール等で情報提供を受け付け、最寄りの地方出入国在留管理官署への連絡も案内しています。
つまり、通報ルートが無いから新制度が必要、という話ではない。
県が“報奨金”という強いインセンティブを置くことで、通報の量と質、そして地域の空気が変わるのがポイントです。
次に、実務の肌感として「不法就労対策」は、個人の善意や正義感に頼るより、企業側のチェック体制を固めた方が早い。
雇用側には、在留カード確認など基本動作が求められ、過失があっても処罰対象になり得る、という注意喚起が警察からも出ています。
厚労省も、事業主が不法就労をさせないこと、入管法上の不法就労助長の罰則があることを周知しています。
ここが本丸です。疑わしい人を見つけて通報する以前に、雇う側が入口で落とせる仕組みを持つべきで、行政はそこを支援した方が社会全体の摩擦が少ない。
では、報奨金方式の「副作用」は何か。
一つは、対象が“外国人”に見える形で制度が立つことです。
不法就労は、制度上は「在留資格と活動のズレ」や「雇用側の確認不備」から生まれるのに、地域の視線は「外国人を監視する制度」として受け取ってしまう。
まじめに働き、子どもを育てている家族まで萎縮する、という指摘は現場感覚として分かります。
もう一つは、通報の「質」の問題。報奨金は量を増やしますが、質を担保しません。
現場では、在留資格の可否を外見で判断するのはほぼ不可能です。
たとえば「永住者」「日本人の配偶者等」「定住者」は就労制限がない一方で、「留学」は資格外活動許可があって初めて週28時間の範囲などで働ける。
ここを見誤ると、誤通報が増えます。誤通報の処理コストは行政に乗りますし、疑われた側の精神的コストは戻りません。
そして三つ目。地域の“空気”が変わると、企業は採用に慎重になります。
とくに地方は、採用市場が狭い。外国人材の比率が上がれば上がるほど、「余計なトラブルは避けたい」という心理が働きやすい。結果として人手不足がさらに苦しくなる。皮肉ですが、あり得る流れです。
茨城県は、外国人等の法令・ルール遵守をテーマにしたプロジェクトチームを設置し、取組の見える化も掲げています。
さらに、県の記者会見でも、予算事業の中で「通報報奨金制度の創設」が言及されています。
県としては「実態として不法就労が多い」「県民の不安がある」という問題意識なのでしょう。
そこは理解できます。
ただ私は、対策の順番を間違えると、社会の修復コストが跳ね上がると思っています。
実務的に“効く順番”は、だいたい次の通りです。
第一に、雇用主向けの入口対策の徹底。
採用時の在留カード確認、就労可否の読み取り、資格外活動許可の確認、在留期間の管理。ここは研修とチェックリストで改善します。
警視庁の注意喚起のように「知らなかった」では済まない世界だからです。
第二に、行政の相談窓口の“使われ方”を整えること。国には情報提供の窓口がすでにあります。
県がやるなら、報奨金より前に、事業者・住民・外国人本人が相談しやすい多言語導線や、誤解をほどく広報を厚くした方が、結果的に通報の質が上がるはずです。
第三に、悪質事業者への的を絞った監督。
ここは労働行政・入管・警察の連携領域になります。
地域の“監視”に寄せるより、行政が淡々と摘発確度を上げる方が副作用が少ない。
最後に、どうしても通報報奨金をやるなら、設計でリスクを削る工夫が必要です。
たとえば、外国人に限らず「不法就労助長(雇用側)」にフォーカスする見せ方にする、誤通報を抑える要件を厳しくする、通報者保護と濫用防止の運用を透明化する。
ここは制度設計のセンスが問われます。正直、相当難しい。
私は行政書士として、外国人を「増やす」か「減らす」かの前に、すでに一緒に働いている現実の中で、ルールを守る人が損をしない仕組みを作りたい。
密告のインセンティブは、短期的に数字が動くかもしれません。
でも、その数字の裏で失われる信頼は、たぶん戻すのに時間がかかります。
記事を読んでいて、そんなことを考えました。
【結論】
不法就労対策は必要だが、「通報報奨金」は差別・分断や誤通報の副作用が大きい。先に雇用主の入口対策と相談導線の整備を厚くすべき。
【根拠】
国には出入国在留管理庁の情報提供窓口が既にある。
雇用主には在留カード確認等の基本義務があり、過失でも処罰対象になり得る旨の注意喚起がある。
厚労省も不法就労助長の罰則を前提に、雇用主へ注意喚起している。
茨城県は関連施策としてプロジェクトチーム設置や、予算会見で報奨金制度に言及している。
【注意点・例外】
制度の詳細(対象、支給要件、濫用防止策、通報者保護、誤通報時の扱い)は今後の検討次第で、評価は変わり得る
「不法就労が多い」という統計の定義(摘発数、把握方法)や背景分析は、一次資料の確認が必要
県独自制度と国の運用(入管・警察・労基等)の役割分担は、専門家に確認が必要
【出典】
出入国在留管理庁「情報受付」
厚生労働省「不法就労に当たる外国人を雇い入れないようにお願いします。」
警視庁「外国人の適正雇用について」
茨城県「外国人等へのルール遵守対策プロジェクトチーム」
茨城県「令和8年度当初予算案等発表記者会見における発言要旨(通報報奨金制度の創設言及)」
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