介護福祉士の資格特例、また延長へ
介護分野の人手不足は、もう「深刻です」と一言で片づけられる段階を過ぎています。
現場では、採用しても定着しない、育てても足りない、その繰り返しです。
そうした中で、厚生労働省が、介護福祉士養成施設の卒業者に対する経過措置をさらに5年間延長する方針を示しました。
報道ベースでは、現在「令和8年度卒業者まで」とされている対象を、「令和13年度卒業者まで」に広げる方向です。
産経新聞は、与党との調整を経て今国会への関連法改正案提出を目指すと報じています。
つまり、現時点ではまだ成立した法律ではなく、方針段階という理解が正確です。
このニュースを見て、介護現場にとっては少し息継ぎができる話だと感じる一方で、制度としてはかなり複雑です。
表面だけ見ると「試験に落ちても介護福祉士で働けるらしい」となりがちですが、そこまで単純ではありません。
そもそも経過措置とは何か

もともと、介護福祉士養成施設の卒業者は、国家試験を受けなくても介護福祉士資格を取得できました。
ところが、資格の質の担保や専門性の向上を図るため、平成19年の法改正で、養成施設卒業者にも国家試験合格を求める仕組みに変わりました。
その後、数度の施行延期を経て、平成29年度に国家試験義務付けが施行されています。
ただ、制度を急に切り替えると現場が持たない。そこで設けられたのが経過措置です。
厚労省資料では、養成施設卒業者について、卒業後5年間は国家試験を受験・合格しなくても介護福祉士資格を取得でき、さらにその5年間継続して介護等の業務に従事していれば、6年目以降も引き続き資格取得が可能と整理されています。
いわば、完全義務化までの緩衝材です。
この経過措置は当初、令和3年度卒業者までを対象としていましたが、令和2年改正で令和8年度卒業者まで延長されました。
今回報じられているのは、その再延長です。
なぜ再延長なのか

理由はかなりはっきりしています。
人手不足です。
それに加えて、養成施設数や入学者数の減少、そして外国人留学生の合格率の問題が重なっています。
厚労省の専門委員会資料でも、前回延長の背景として、介護人材不足の深刻化、養成施設・入学者数の減少、外国人留学生が急増する中で合格率が低調であることが明記されています。
報道によれば、経過措置の登録者は令和7年4月時点で5774人、そのうち5103人が外国人でした。ここはかなり重い数字です。
制度が実質的に外国人留学生の就業継続を支える柱になっていることが見えてきます。介護分野が外国人材に相当程度支えられている現実を、数字が静かに物語っています。
外国人留学生にとって何が変わるのか

実務上いちばん大きいのは、「養成施設を卒業したのに国家試験で不合格だったから、その時点で進路が大きく不安定になる」という場面が、ひとまず先送りされる可能性が高いことです。
とくに日本語で出題される国家試験は、専門知識だけでなく読解力も問われます。介護の現場でしっかり働ける人でも、試験になると苦戦する。これは実務でも珍しくありません。
その意味で、今回の再延長方針は、外国人留学生に対する救済というより、現場を回すための現実対応に近いと私は見ています。
理想論だけなら「国家資格なのだから全員一律に試験合格が必要だ」と言いやすいのですが、制度は現場が回らなければ意味を失います。
もっとも、ここで誤解してはいけないのは、「試験に受からなくてもずっと安心」という話ではないことです。
経過措置はあくまで例外的・暫定的な制度ですし、厚労省の委員会でも、資格の質の担保や国家試験の一元化を重視して、令和8年度卒業者までで終了すべきだという意見が明確に出ていました。
延長論と終了論の両方が並んでいた。
今回の再延長方針は、その議論の中で人材確保側に重心が傾いた結果といえます。
介護現場にとっては追い風、でも手放しでは喜べない

現場からすると、これは確かに追い風です。採用した留学生が試験不合格ですぐ離脱するリスクがやわらぐからです。
養成施設にとっても、学生募集の面ではプラスに働くでしょう。
「卒業しても資格が不安定かもしれない」となると、そもそも介護コースが選ばれにくくなるからです。厚労省の専門委員会でも、経過措置が終われば留学生が日本や介護分野を選ばなくなり、養成施設の入学者減少や閉科・閉校につながるおそれがある、という意見が示されています。
ただ、ここにはやはり緊張感があります。
国家資格は本来、一定水準を超えたことの証明です。経過措置を延ばせば延ばすほど、「資格の質をどう見るのか」という議論は避けられません。
委員会でも、延長は資格への信頼性を損ないかねない、という意見が出ていました。
ここは正直、きれいには割り切れません。
制度を支えるために例外を広げる。けれど、例外が長く続くと本則がにじむ。
制度設計ではよくあることですが、介護福祉士の経過措置はまさにその状態に入っているように見えます。
在留資格の実務ではどう見るべきか

ここは少し実務の話になります。外国人留学生や受入れ事業者が注意すべきなのは、介護福祉士資格の経過措置と、在留資格の問題は重なる部分があっても、完全に同じではないということです。
養成施設卒業後に介護分野で働く場合、在留資格の整理や雇用形態、業務内容、受入れ側の体制確認は引き続き重要です。
経過措置が延長されたとしても、在留資格の要件確認が不要になるわけではありません。
ここを混同すると危ない。
現場では「資格特例があるなら就労も大丈夫ですよね」と雑に理解されることがありますが、それは別問題です。
また、報道では、現在ある二つの経過措置のうち、卒業後5年間働けば6年目以降も引き続き介護福祉士として勤務できる経過措置については、令和8年度卒業生までで終了し、令和9年度以降の卒業生には認めないとされています。
この点は制度理解としてかなり重要です。
今回の再延長方針が、どの範囲までどのような形で法案化されるかは、最終的な法案条文や成立後の省令・通知を確認しないと断定できません。ここは専門家に確認が必要です。
行政書士として感じること

私は、この再延長方針自体は現実的だと思います。
いま介護現場からこの経過措置を外したら、制度の整合性より先に、現場の疲弊が前面に出るはずです。
ただ、延長だけでは足りません。
試験制度への支援、日本語教育、現場での指導体制、養成施設の教育力、そして何より、介護職として働き続けたくなる処遇。そこが動かなければ、5年延ばしてもまた同じ議論になります。
厚労省も、養成施設ごとの合格率公表、多言語教材の作成、試験対策講座、地域医療介護総合確保基金による外国人留学生支援などを進めてきましたが、制度延長と支援策はセットで見ないと意味が薄いと感じます。
外国人留学生に「働きやすくなる制度です」とだけ伝えるのも、少し違う気がします。
むしろ、「いまは追い風だが、資格取得を後回しにしてよい制度ではない」と伝えるほうが誠実です。
現場で働きながら試験合格を目指す。その前提は変わっていません。
結論

今回の介護福祉士の資格特例再延長方針は、介護人材不足と外国人留学生の国家試験合格の壁を踏まえた、かなり現実的な政策対応です。
現場にとっては助かる方向ですが、国家資格の質の担保との緊張関係は残ります。しかも現時点では、まだ法改正方針の段階です。
報道だけで確定事項として扱わず、今後の法案成立と正式通知まで確認する姿勢が必要です。
【結論】
介護福祉士養成施設卒業者に対する経過措置は、再延長の方向で動いているとみられる。
ただし、現時点では方針段階であり、制度の最終形は未確定。外国人留学生や受入れ事業者は「就職しやすくなる可能性」はあるが、「資格取得を急がなくてよい」という理解は危険です。
【根拠】
平成19年改正で養成施設卒業者にも国家試験合格が必要となり、平成29年度施行時に経過措置が設けられたこと、令和2年改正で令和8年度卒業者まで延長されたこと、外国人留学生の合格率や介護人材不足が延長理由として挙げられていることは、厚労省資料で確認できます。
また、2026年3月11日時点の報道では、厚労省が再延長方針を自民党部会で示し、今国会への関連法改正案提出を目指すとされています。
【注意点・例外】
現時点では法案成立前であり、確定制度ではありません。
報道にある二つの経過措置のうち、どの措置がどの範囲でどう延長されるかは、最終法案と成立後の通知確認が必要です。
在留資格の取扱いとは別論点があるため、就労開始や更新手続では個別確認が必要です。
実務判断が分かれる部分は、専門家に確認が必要です。
【出典】
産経新聞 2026年3月11日報道
厚生労働省「福祉人材確保専門委員会における議論の整理」
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