介護学科の留学生募集で広がる「紹介業者依存」をどう見るか

介護分野の留学生受入れは、もう一部の話ではありません。
厚生労働省の資料では、2025年度に介護福祉士養成施設へ入学した7,970人のうち、留学生は4,532人で57%を占め、初めて半数を超えました。数字だけ見ると、介護の教育現場はすでに外国人留学生なしでは成り立ちにくいところまで来ています。
今回の読売新聞の記事は、そうした流れの中で、大学や短大が留学生募集を紹介業者やコンサル業者に頼る構図がかなり広がっていることを伝えています。
読売の取材では、介護福祉士国家試験で留学生受験者がいる大学・短大30校のうち、9校が留学生募集のためにエージェント会社やコンサル業者と契約していたとされています。
私は、業者を使うこと自体を直ちに否定するつもりはありません。
海外募集、日本語学校との接点づくり、入国前後の書類調整まで含めると、大学側にノウハウが足りないのは現実でしょう。
厚労省自身も、外国人介護人材の受入れ支援として、留学希望者や養成施設、介護施設等のマッチング支援を制度として位置づけています。つまり、マッチングそのものは制度の外にある怪しい話ではなく、一定の政策的後押しもある。そこは冷静に見た方がいいと思います。
ただ、問題はそこから先です。
募集を外部に委ねることと、選抜や教育の中身まで実質的に外部に引っぱられることは、まったく別の話です。
東大阪大の件が重く見える理由

東大阪大学・東大阪大学短期大学部は、2025年11月に第三者委員会の調査報告書を公表しています。
大学側の公表によれば、短期大学部介護福祉学科の2025年度留学生入試について、入学者選抜の公正性が問題となり、第三者委員会を設置して調査した経緯があります。報告書の公表自体が、単なる運用ミスでは済まないと大学が判断したことを示しています。
読売記事で描かれているのは、紹介業者との距離が近くなりすぎると、入試の公正性が揺らぎかねないということです。
募集要項にない扱い、優先的な合格、就職先との連動。こうした話が出てくると、もはや「留学生募集の外注」ではなく、「入口から出口までを外部プレーヤーが握る構造」になってしまう。
ここがいちばん怖いところです。
大学経営が厳しい。介護分野は日本人学生が集まりにくい。現場は人手不足。この三つが重なると、目の前に学生を連れてきてくれる業者は、とても魅力的に見えます。
苦しい現場ほど、差し伸べられた手を強く握ってしまうものです。でも、その手を握りすぎると、今度は自分で離せなくなる。
入試の問題で終わらない。在留資格実務にも波及する

この問題は、教育の公正性だけの話ではありません。行政書士として見ると、在留資格実務にもかなり近いところでつながっています。
留学生は「留学」の在留資格で在籍し、卒業後は要件を満たして在留資格「介護」へ移行して就労する流れが想定されます。
出入国在留管理庁は、介護福祉士資格を有する者が介護または介護の指導業務に従事する場合、「介護」の在留資格の対象になることを明示しています。
逆に言えば、入口で無理をした受入れは、出口でしわ寄せが出やすい。
日本語能力が不十分なまま入学した、学修支援が追いつかない、国家試験に届かない、生活費確保のため資格外活動に依存する、学費や奨学金返済への不安で進路選択がゆがむ。
実務ではこうした連鎖が一番やっかいです。
厚労省の専門委員会でも、外国人留学生が急増する一方で、留学生の国家試験合格率が低調であることが論点として挙げられています。
さらに、養成施設卒業者に対する国家試験義務付けの経過措置については、人材確保と資格の信頼性確保の間で継続的に議論がなされてきました。制度側も、入口だけ増やせばいいとは見ていません。
介護事業者が奨学金を出す仕組みは、悪いのか

ここは少し丁寧に見たいところです。
介護事業者が学費や生活費を支援し、卒業後に自社や関連施設で働いてもらう仕組み自体は、現場の人材確保策として理解できる面があります。実際、国も介護分野の外国人材確保を進めており、送り出し国と受入れ側のマッチング支援も制度化しています。
ただ、合格が前提になりすぎると話は変わる。不合格なら返済、在学継続が難しい、生活が成り立たない。
そうなると、本人の自由な進路選択が細り、大学側にも「何とか通してあげたい」という空気が生まれやすい。記事中の識者コメントは、まさにその危うさを指摘しています。
これは制度の穴というより、人手不足と学校経営難が作る圧力の問題だと感じます。
本来、大学が握っておくべきもの

紹介業者を使うとしても、大学が手放してはいけないものがあります。
ひとつは、選抜の基準です。誰をどう評価し、なぜ合格としたのか。この説明責任は絶対に外に出してはいけません。
もうひとつは、入学後の支援です。日本語教育、出席管理、生活指導、国家試験対策、資格外活動の管理。このあたりが弱いまま人数だけ増やすと、留学生本人が苦しくなります。
結果として中退やオーバーワーク、進路変更の失敗につながりやすい。大学が「募集」だけ外注し、「教育」と「在籍管理」まで弱いままだと、結局いちばん損をするのは学生です。
一橋大学の太田教授も、受入れに必要な専門知識や経験がないまま多数の留学生を入学させようとすると、大学がエージェント会社に丸投げし依存する可能性があると指摘し、日本語学校との連携強化や一貫した教育体制の必要性を述べています。
私はこの見方にかなり賛成です。派手な募集より、地味でも教育の導線が強い学校の方が、長く残るはずです。
行政書士として感じること

このテーマは、単純に「業者が悪い」「大学が悪い」で切ると見誤ります。
背景には、介護人材不足、学校経営の厳しさ、日本人学生の減少、そして外国人材への期待があります。どれも現実です。だから、紹介業者が入り込む余地も生まれる。
ただ、現実が厳しいからといって、入試の公正性や在留資格の適正運用まで緩めていい理由にはなりません。ここを曖昧にすると、最後は制度全体への不信につながります。
まじめに学び、介護現場で働こうとしている留学生まで巻き込んでしまう。それは避けたいところです。
介護分野で本当に必要なのは、人数を集める仕組みより、学んで、資格を取り、安心して働き続けられる仕組みだと思います。
入口の獲得競争が激しくなるほど、むしろ出口まで見た設計が問われる。実務では、そこを見ずに走り出した案件ほど後で苦しくなります。
【結論】

介護学科の留学生募集で紹介業者の利用が広がること自体は直ちに否定できませんが、大学が募集・選抜・教育・就職支援を実質的に業者へ依存すると、入試の公正性だけでなく、在留資格実務や留学生本人の生活基盤にも深刻なゆがみが生じます。
今後は「何人集めたか」より、「誰をどう支え、卒業後までどうつなぐか」が問われる局面です。
【根拠】
厚生労働省の資料では、2025年度の介護福祉士養成施設入学者7,970人のうち留学生は4,532人で57%を占めています。東大阪大学は2025年11月に第三者委員会報告書を公表し、留学生入試の公正性を巡る問題が表面化しました。さらに、出入国在留管理庁は、介護福祉士資格を取得した者が在留資格「介護」で就労する制度を明示しています。これらを合わせると、留学生募集の問題は教育現場だけでなく、介護人材政策と在留資格運用の接点にあるといえます。
【注意点・例外】
業者の関与があること自体は違法でも不適切でもありません。問題になるのは、入試基準の実質的なゆがみ、大学の判断権限の空洞化、奨学金や就職あっせんによる過度な拘束、そして学修支援不足です。個別の契約内容や運用実態によって評価は変わるため、法的評価やコンプライアンス判断は具体的事実を踏まえて専門家に確認が必要です。この記事で触れている30校中9校という数値は読売新聞の取材ベースであり、全国の全体像を示す公的統計ではありません。
【出典】
読売新聞 2026年3月17日付記事「介護学科を受験する留学生の紹介業者、取材した大学・短大30校のうち9校が契約」
東大阪大学・東大阪大学短期大学部「第三者委員会による調査報告書の公表について」および調査報告書
厚生労働省「福祉人材確保専門委員会における議論の整理」ほか関連資料
出入国在留管理庁「在留資格『介護』」
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