経営・管理ビザの厳格化で何が変わった？
駆け込み起業の背景と今後の影響を行政書士が解説

皆さんおはようございます。いつもブログを見ていただきありがとうございます。
新潟市西区のビザ専門行政書士、Asocia行政書士法務事務所です。

2025年11月8日付の産経新聞によると、経営・管理ビザの要件が厳格化される直前の9月、大阪市内で中国系とみられる法人の設立が急増しました。

これまでの最低資本金500万円での法人設立が可能だった時期に、「駆け込み起業」が集中した格好です。

この記事では、実際に何が変わったのか、そして今後どんな点に注意すべきかを行政書士の立場から整理します。

1．背景：相次ぐ“ペーパーカンパニー”問題

「経営・管理」ビザは、本来は日本で事業を立ち上げ、雇用や経済活動を通じて社会に貢献する外国人を受け入れるための制度です。

しかし、ここ数年で「実体のない会社」を設立し、ビザを得るだけの“見せかけ起業”が急増していました。

入管庁の統計によると、経営・管理ビザで日本に滞在する中国人は令和6年末時点で約2万1,740人。

中でも大阪市や東京都内では、代表者の住所が海外（特に中国）となっている法人が多く、実際に事業実態が確認できないケースも目立っていました。

2．改正のポイント：資本金3,000万円＋常勤職員1名以上

出入国在留管理庁は2025年10月16日に省令改正を施行。

主な変更点は以下の通りです。

項目	改正前	改正後（令和7年10月施行）
資本金要件	500万円以上	3,000万円以上
雇用要件	なし	日本人・永住者などの常勤職員を1人以上雇用
事務所	物理的実在が必要（変更なし）	変更なし（ただし審査厳格化）

上記の他に、日本語能力の証明、経営経験などが求められます。

資本金3,000万円という水準は、個人レベルの起業では非常に高く、実体のある企業運営を行う意思と能力が問われます。

また、「常勤職員1名以上」という要件が加わったことで、実際に雇用関係を構築できるかも審査対象になります。

3．「駆け込み起業」急増の実態

ユーソナー社の調査では、2025年9月に大阪市内で資本金500万円で設立された法人が786社にのぼり、前月（374社）から倍増。

うち約4割の代表者住所が中国国内だったといいます。

特に多かったのは、中央区・西成区・生野区・北区といった地域。

これらのエリアでは以前から「経営・管理」目的とみられる法人が集中し、住所貸しオフィスや短期賃貸マンションを拠点に申請が行われるケースも見受けられました。

入管側もこれらを問題視しており、今回の厳格化はまさにこの「駆け込み構造」への対策といえます。

4．今後の審査はどう変わる？

今回の改正で、単に「会社を作ればビザが出る」という時代は終わりました。

審査では以下のような点が重点的に確認されると見込まれます。

• 資金の出所の明確化（送金経路・口座履歴・事業計画の整合性）

• 事業実態の有無（契約書、仕入・販売先、会計帳簿など）

• 雇用関係の証明（常勤社員の給与・社会保険加入状況）

• 事業所の実在性（現地調査・賃貸契約書・写真など）

 

また、審査の現場では「設立から半年未満の法人」への聞き取りや補足資料の提出が求められるケースも増加傾向です。

行政書士としても、今後は資金計画・人材計画を含めた中長期的な事業設計が不可欠と考えます。

5．行政書士としての見解：本来の“経営者”受け入れへ

正直なところ、今回の改正は「まじめに事業を行いたい外国人」にとってはハードルが上がったように見えるかもしれません。

しかし、制度の趣旨に立ち返れば、これは本来あるべき姿への正常化です。

これまでのように、実体のない会社で“名目だけの社長”が大量にビザを取得する状況では、真剣に事業を展開する外国人起業家までが疑われてしまうという副作用がありました。

これからの審査は「資金」「人」「場所」の3要素の実在性が問われる時代。

“移住目的”ではなく、“事業目的”での来日が明確に評価されるようになるでしょう。

6．今後のアドバイス

外国人として日本で起業を目指す方は、

• 資本金3,000万円を一度に準備できなくても、投資家・共同経営者との連携や日本法人とのジョイントベンチャー方式を検討する

• 経営計画書を英語や中国語だけでなく日本語でも詳細に作成する（審査官理解のため）

• 行政書士等の専門家と早期に相談する

 

といった準備を早めに行うことが重要です。

【結論】

今回の厳格化は、“排除”ではなく“選別”。

日本で本気で事業を展開したい外国人にとっては、むしろ透明で公平な制度運用への一歩といえます。

「ペーパーカンパニーではない」ことを示す準備を、いまから整えておきましょう。

【根拠】

• 産経新聞「＜独自＞在留資格の取得要件厳格化前に大阪市で中国系法人が『駆け込み起業』」（2025年11月8日付）

• 出入国在留管理庁「経営・管理在留資格に係る基準の特例」（令和7年10月16日施行省令）

• ユーソナー社調査（2025年9月までの大阪市内法人設立データ）

 

【注意点・例外】

• 既存の経営・管理ビザ保持者も、更新時に「実体確認」が厳格化される可能性があります。

• 改正後は、資本金500万円での新規申請は原則認められません（ただし例外的特例認定地域等を除く場合あり）。

 

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