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TOP > コラム > 入管収容中の手錠で骨折、大阪高裁が国に賠償命令|問われた「必要最小限」の処遇

入管収容中の手錠で骨折、大阪高裁が国に賠償命令|問われた「必要最小限」の処遇

2026.07.12
コラム外国人支援
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入管収容中の「後ろ手錠」で国に88万円の賠償命令

毎日新聞の報道によれば、大阪出入国在留管理局に収容されていた日系ペルー人男性が、後ろ手に手錠をかけられた状態で骨折したとして国に損害賠償を求めた訴訟で、大阪高裁は2026年6月25日、国に88万円の支払いを命じました。

1審の大阪地裁は11万円の賠償を命じていましたが、高裁では賠償額が増額されています。

報道内容を前提にすると、この判決で重要なのは、「入管職員が一切手錠を使ってはいけない」と判断したものではない点です。

男性は当初、職員の指示に従わず暴れたとされています。問題になったのは、その後、粗暴な行動が見られなくなったにもかかわらず、長時間にわたり後ろ手錠が続いたことです。

高裁は、2度目の後ろ手錠について、手錠使用から約1時間40分が経過した時点では、もはや手錠をかけなければ制止できない状況ではなかったと判断し、その後の約13時間にわたる使用を違法としました。ここに、この判決の実務上の重みがあります。

入管施設で手錠は使えるのか

入管収容施設では、職員が被収容者の安全や施設内の秩序を守るため、一定の場合に身体拘束を行うことがあります。

現行の入管法では、入国警備官は、被収容者を護送する場合や、被収容者が逃走、自傷他害、施設設備等の損壊をするおそれがある場合に、法務省令で定めるところにより捕縄又は手錠を使用できるとされています。

事件当時の根拠としては、被収容者処遇規則第19条が問題になります。

同規則では、逃走、自傷他害、設備等損壊のおそれがあり、かつ他に防止する方法がないと認められる場合に、必要最小限度の範囲で戒具を使用できる趣旨の規定が置かれていました。

つまり、手錠の使用そのものに法的根拠はあります。しかし、根拠があることと、個別場面での使用が常に適法であることは別問題です。

「使用開始」よりも「継続」が問題になる

現場では、暴れる、暴れる可能性がある、自傷の危険がある、他人に危害を加えるおそれがある、といった緊迫した場面があります。入管職員にも安全確保の責任がありますので、制止措置が必要になる場面自体は否定できません。

ただ、身体拘束は、いわば最後の手段です。必要があるから始める。必要がなくなれば外す。この切り替えができていなければ、当初は適法だった措置でも、途中から違法になる可能性があります。

今回の高裁判断は、まさにその点を突いています。粗暴な行動がなくなった後も、漫然と後ろ手錠を続けたのではないか。
しかも、それが約13時間に及んだ。
入管実務に関わる者としては、この「継続時間」の評価を軽く見るべきではありません。

行政収容だからこそ、処遇の透明性が問われる

入管収容は、刑罰そのものではありません。退去強制手続や送還の実効性を確保するための行政上の収容です。だからこそ、刑事施設と同じような感覚で「収容されているのだから厳しくて当然」と受け止めるのは危険です。

出入国在留管理庁も、令和5年改正入管法の説明の中で、長期収容を解消し、収容する場合に適正な処遇を実施するための規定整備を掲げています。

また、収容施設内での適正な処遇確保のため、健康診断や職員への人権研修などの規定整備にも触れています。

さらに、入国者収容所等視察委員会は、入国者収容所や収容場等の適正な運営に資するため、視察等を行い意見を述べる第三者機関とされています。

制度上は、透明性を確保する仕組みが整えられつつあります。ただ、現場で実際に何が起きたのか、記録が十分か、医療対応が適切だったか、手錠を外す判断が誰によってどの時点で検討されたのか。こうした細部にこそ、収容処遇の質が表れます。

外国人政策を語るときに抜け落ちやすい視点

近年、外国人政策をめぐる議論では、不法滞在、不法就労、送還忌避、社会保障、治安などが強調される場面が増えています。

もちろん、在留管理の適正化は重要です。行政書士としても、ルールを守ること、虚偽申請をしないこと、在留資格に合った活動を行うことは、繰り返し伝えています。

一方で、「ルールを守らせる行政」であることと、「人を傷つけない行政」であることは、両立しなければなりません。

収容されている人にも、身体の安全、医療を受ける利益、人としての尊厳があります。仮に退去強制手続の対象者であっても、そのことだけで過剰な身体拘束が正当化されるわけではありません。

今回の判決は、外国人支援側だけが注目すべき話ではありません。企業、学校、自治体、士業、そして一般市民にとっても、「入管行政の適正さ」とは何かを考える材料になります。

実務上、私たちが見るべきポイント

在留資格申請の現場では、収容案件や退去強制手続に直面することがあります。通常の更新申請や変更申請とは違い、本人や家族の精神的負担は非常に大きくなります。

こうした場面で重要なのは、感情的に入管を批判することでも、反対に入管側の対応をすべて当然視することでもありません。

事実関係を整理し、いつ、どこで、誰が、どのような措置を取り、その必要性がどの時点まであったのかを確認することです。

身体拘束、医療対応、隔離、面会制限、仮放免申請などは、個別事情によって判断が大きく変わります。

特に、体調不良、精神疾患、既往症、家族関係、日本での生活実態がある場合は、早い段階で記録を残し、専門家に相談することが重要です。

入管手続は、制度の文字だけでは見えない部分があります。今回の判決は、その見えにくい部分に光を当てたものといえます。

  1. 記事末尾の整理

【結論】
入管施設で手錠を使うこと自体は、一定の場合に法的根拠があります。しかし、その使用は必要最小限でなければならず、必要性が失われた後も長時間継続すれば違法と判断される可能性があります。今回の大阪高裁判決は、入管収容における「処遇の適正さ」を改めて問うものです。

【根拠】
現行入管法では、被収容者の護送、逃走、自傷他害、設備損壊のおそれがある場合に、捕縄又は手錠を使用できる規定があります。事件当時は、被収容者処遇規則第19条に戒具使用の規定が置かれていました。また、令和5年改正入管法では、収容する場合における適正な処遇の実施に関する規定整備が説明されています。

【注意点・例外】
本稿は、ご提示の報道内容と確認できた一次情報に基づく一般的整理です。判決全文は確認できていないため、裁判所の詳細な事実認定、国側の主張、医学的判断の詳細までは断定できません。個別の収容案件、仮放免、国家賠償請求、医療対応の適否については、個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。

【出典】
一次情報:出入国管理及び難民認定法、被収容者処遇規則、出入国在留管理庁「令和5年改正入管法について」、入国者収容所等視察委員会に関する出入国在留管理庁資料。
参考情報:毎日新聞「入管の手錠で骨折 大阪高裁、国に88万円賠償命令 1審から増額」2026年6月25日配信。

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