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TOP > コラム > 入管法改正への抗議から考える 共生社会と在留管理は本当に両立できないのか

入管法改正への抗議から考える 共生社会と在留管理は本当に両立できないのか

2026.04.30
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新宿の抗議行動が投げかけたもの

新宿で行われた「入管法改悪反対アクション」の記事を読むと、胸の奥が少しざわつきます。

制度を扱う仕事をしていると、どうしても条文や要件、提出書類の話が増える。それでも結局、制度の先にいるのは人です。家族がいて、職場があって、学校があって、日常がある。

その当たり前が、入管のルール変更ひとつで大きく揺れることがある。今回の抗議行動は、そういう現実を可視化する場だったのだと思います。

入管法の議論は「人権か管理か」では割り切れない

ただ、ここで話を感情だけに寄せてしまうと、かえって議論は浅くなります。

入管法の議論はいつも難しい。人権の問題として語ることもできるし、国家の在留管理の問題として語ることもできる。どちらか一方だけを握ると、もう一方がこぼれます。

現場で申請に向き合っていると、その両方を見ないと実態をつかみ損ねる、そんな感覚があります。

2023年改正の中心は「送還停止効」の見直し

まず押さえておきたいのは、2023年改正入管法で大きな争点になったのが、難民認定申請中の送還停止効の見直しだったことです。

改正前は、難民認定申請をしている間は一律に送還が停止されていましたが、改正後は3回目以降の申請などについて例外が設けられました。

もっとも、難民や補完的保護対象者と認定すべき相当の理由がある資料を提出した場合などは、なお保護の余地が残されています。

制度の狙いは、法務省・入管庁の説明では、送還回避目的の濫用的申請への対応です。

送還強化の流れは実際に進んでいる

入管庁は2025年に「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を打ち出し、2025年の護送官付き国費送還は318人で過去最高だったと公表しています。

退去強制を執行する力を強める方向に、政策が動いていること自体は否定できません。

報道を読むときに注意したい二つのポイント

永住者取消しは「改正済み」と「施行済み」が同じではない

記事では、2024年に「税金などの未納で永住資格を取り消せるようにした」と読める書きぶりですが、法務省の公式資料ベースでみると、2024年改正法に永住者の在留資格取消しの見直しは含まれたものの、施行日は「公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」とされ、2026年1月時点でも「施行に向けて検討を開始した」とされています。

少なくとも2026年3月30日時点では、既に全面的に施行された制度として書くのは慎重であるべきです。

手数料の「現行額」と「上限引上げ案」は別の話

在留資格の更新や変更の手数料上限を10万円に引き上げる議論はありますが、現時点の実務上の手数料は、2025年4月1日施行の改定で、在留資格変更や在留期間更新は窓口6,000円、オンライン5,500円、永住許可は窓口10,000円、オンライン9,000円です。

上限10万円という数字だけが一人歩きすると、読者は現状以上に不安になりやすい。ここは切り分けが必要です。

行政書士として感じること

私は、在留管理の厳格化そのものを一概に否定するつもりはありません。

不法残留や虚偽申請、制度の悪用は現実にあるからです。そこに手を打たないまま「共生」だけを唱えても、社会の信頼は続きません。

ただ、管理を強めるなら、その分だけ説明責任と救済の回路も厚くしなければならないと思います。送還を進めるなら、その判断過程はどこまで透明なのか。

仮放免の長期化で生活基盤を失う子どもや家族に、どんな支援があるのか。ここが抜け落ちると、「適正な管理」はすぐに冷たい言葉になってしまいます。

本来、政府自身も「共生」を掲げている

政府は、外国人との共生社会の実現に向けたロードマップや総合的対応策、一元的相談窓口の整備などを進めています。

つまり建前の上では、政策は「管理」だけで動いているわけではありません。問題は、その両輪が現場で本当に噛み合っているかです。

「日本人ファースト」という言葉の危うさ

ここ数年、外国人政策の話になると、制度論ではなく感情の強い言葉だけが前に出る場面が増えました。「日本人ファースト」という言葉が、誰かを押し返すための合図のように使われるとき、かなり危ういと感じます。

入管法は国家のルールですが、そのルールが向き合う相手は、数字でも属性でもなく、実際にこの社会で暮らしている人です。

結局、問われているのは両立の知恵だと思う

制度の濫用防止は必要です。

けれども、保護されるべき人を取りこぼさないことも同じくらい大切です。

大事なのは、「入管法改悪かどうか」というレッテルよりも、どの改正が、誰に、どんな影響を与えるのかを分解して考えることではないでしょうか。

記事で語られた「私は共に生きたい」という言葉は、理想論に見えて、実はとても現実的です。

共生は、学校、職場、納税、保険、地域生活の話です。かなり生活に近い。だからこそ、制度の運用が荒くなると、真っ先に日常が傷つきます。

外国人の人権を守ることと、在留管理を機能させることは、本来は対立概念ではないはずです。

そこを本当に両立させる知恵があるのか。今、日本社会の側が試されているのだと思います。

まとめ

【結論】
入管法をめぐる対立は、「人権か管理か」の単純な二択ではありません。必要なのは、制度の濫用防止と、保護されるべき人を取りこぼさない運用を同時に実現することです。抗議の声は、そのバランスが崩れつつあるのではないかという警告として受け止めるべきだと考えます。

【根拠】
2023年改正では、3回目以降の難民等認定申請について送還停止効の例外が導入されました。2024年改正では永住者取消しの見直しが法改正事項に含まれましたが、2026年3月時点では施行に向けた検討段階です。2025年4月には在留手続手数料の実額改定があり、別途、上限10万円への引上げ案も示されています。さらに、2025年の護送官付き国費送還は318人で過去最高でした。

【注意点・例外】
難民認定3回目以降でも、難民等と認定すべき相当の理由がある資料を提出した場合などは保護の余地があります。また、永住者取消しの見直しはまだ施行前のため、現時点での説明には注意が必要です。個別案件では、在留特別許可や家族事情、人道上の事情など、専門家に確認が必要です。

【出典】
出入国在留管理庁「令和5年改正入管法について」
出入国在留管理庁「令和5年改正入管法の運用状況」
出入国在留管理庁「令和6年入管法等改正法について」
政府資料「永住者の在留資格の取消しについては、公布から3年以内の施行に向け、検討を開始」
出入国在留管理庁「在留手続等に関する手数料の改定」
法務省資料「入管法上の手数料の額の上限額の引上げ」
出入国在留管理庁「令和7年の出入国在留管理業務の状況」
出入国在留管理庁「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」ほか

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