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TOP > コラム > 外国人の土地取得問題とは 国籍把握、重要土地、安全保障の論点整理

外国人の土地取得問題とは 国籍把握、重要土地、安全保障の論点整理

2026.05.09
コラム外国人支援
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外国人による土地取得規制は、なぜここまで議論になるのか

外国人による日本の土地取得をどう規制するのか。このテーマが、再び大きく取り上げられています。

テレビ朝日の報道では、山口県の離島で中国在住者が島の一部を購入した事例をきっかけに、重要施設周辺の土地取得、安全保障上の懸念、そして政府による規制検討の動きが紹介されていました。

報道では、政府が外国人による土地取得等のルールについて、夏までの取りまとめを目指しているとも説明されています。

この問題は、感情的に語られやすいテーマです。「なぜ外国人に売るのか」「日本の土地なのに守れないのか」という声が出るのも自然です。

ただ、実務的に見ると、論点はそれほど単純ではありません。

土地の所有権は民法上の財産権であり、不動産取引は経済活動そのものです。一方で、防衛施設、海上保安庁施設、原子力関係施設、国境離島などの周辺土地が、悪意ある利用をされた場合には、安全保障上の問題になり得ます。

つまり、問題の本質は「外国人だから危ない」という話ではなく、「重要な土地が、誰に、どのように取得され、どのように利用されているのかを国が把握し、必要な場合に止められる仕組みがあるのか」という点にあります。

すでにある制度 重要土地等調査法とは

現在も、何も制度がないわけではありません。

重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律、いわゆる重要土地等調査法があります。

内閣府の説明によれば、同法では、防衛関係施設などの重要施設の周囲おおむね1,000メートルの区域や国境離島等について、重要施設等の機能を阻害する行為に使われることを防止する必要がある区域を「注視区域」として指定します。さらに、特に重要な区域は「特別注視区域」とされます。

特別注視区域内の土地等については、所有権等を移転・設定する契約を締結する場合、当事者に届出が求められます。

また、注視区域・特別注視区域内の土地等が、重要施設や国境離島等の機能を阻害する行為に使われた場合などには、必要な措置をとるよう勧告・命令を行う仕組みもあります。

ここで重要なのは、この制度が「外国人だけ」を対象にしているわけではないことです。区域と利用行為に着目した制度です。

行政実務の感覚からすると、この方向性はかなり重要です。国籍だけで線を引く制度は、分かりやすい一方で、過剰な一般化を招きます。安全保障上必要なのは、「誰が買ったか」だけでなく、「どこを買ったか」「何のために使うのか」「施設の機能を阻害する可能性があるのか」を見ることです。

実態把握は進んでいるが、まだ限界もある

内閣府は、重要土地等調査法に基づき、重要施設周辺や国境離島等における土地・建物の取得状況を公表しています。

令和6年度の公表資料によれば、注視区域内で確認された土地・建物の取得総数は113,827筆個で、そのうち外国人・外国系法人による取得は3,498筆個、取得総数の3.1%でした。国・地域別では中国が1,674筆個で最も多く、台湾、韓国が続いています。

ただし、この数字を見るときには注意が必要です。

まず、令和5年度と令和6年度では調査対象区域や期間が異なるため、単純比較はできません。内閣府資料もその点を明記しています。

また、外国人・外国系法人による取得が確認されたからといって、直ちに違法行為や安全保障上の問題があったという意味ではありません。実際、令和6年度中に重要土地等調査法第9条に基づく勧告・命令は実施されていないとされています。

ここは、読者に強く伝えたいところです。

数字は不安をあおるために使うものではありません。制度設計のために使うものです。外国人の取得数があることと、それが直ちに危険であることは別問題です。

これまで国籍を十分に把握できなかったという問題

今回の議論で大きいのは、不動産登記制度における国籍把握の問題です。

報道では、これまで不動産登記に国籍欄がなく、土地所有者の国籍を政府が十分に把握できていなかったこと、そして今後、登記時に国籍を把握する方向であることが紹介されています。

内閣官房の検討会資料でも、不動産登記法に基づく国籍把握について、令和8年度中に把握を開始する旨が整理されています。

これは地味ですが、制度上はかなり大きな変化です。

規制をするにも、まず実態が分からなければ制度設計ができません。外国人がどの地域の土地を、どの程度取得しているのか。国内居住者なのか、国外居住者なのか。個人なのか、法人なのか。法人の場合、実質的に誰が支配しているのか。

こうした情報がないまま「規制すべきだ」と言っても、対象範囲が広すぎたり、逆に抜け穴だらけになったりします。

外国人だけを一律に規制することが難しい理由

では、なぜ「外国人は重要な土地を買えない」と単純に決められないのでしょうか。

一つは、国際約束との関係です。

政府資料でも、外国人の土地取得等の新たな法的ルールを検討するにあたり、国際約束との関係を具体的に精査する必要があるとされています。

検討対象としても、日本人・外国人を問わず対象とするのか、外国人に限定するのか、許可制にするのか、審査付き事前届出制にするのかなどが挙げられています。

一般論として、WTOのサービス貿易に関する一般協定、いわゆるGATSには、一定の分野について外国のサービス提供者を自国のサービス提供者より不利に扱わないという内国民待遇の考え方があります。もっとも、土地取得規制との関係は、対象分野、留保、規制目的、安全保障例外などを踏まえて精査が必要であり、「WTOがあるから何もできない」と単純化するのも正確ではありません。

もう一つは、経済活動への影響です。

たとえば、防衛省市ヶ谷庁舎のように、都市部の重要施設周辺にはマンション、オフィス、商業施設が多数あります。ここを広く許可制にすれば、外国人だけでなく、日本人や国内企業の通常の不動産取引にも影響します。報道でも、この実効性と経済活動のバランスの難しさが指摘されています。

制度は、厳しくすればよいというものではありません。厳しすぎれば、正当な取引まで止まります。緩すぎれば、肝心な場面で機能しません。

行政書士目線で見ると、必要なのは「排除」ではなく「説明できるルール」

外国人政策の現場にいると、最近の議論には少し危うさも感じます。

一部の事例が報道されると、「外国人全体が問題だ」という受け止めになりやすい。しかし、日本で暮らし、働き、納税し、地域社会の一員として生活している外国人は多数います。

外国人による不動産取得にも、居住目的、事業目的、家族の生活基盤づくりなど、正当なものが多くあります。

一方で、安全保障上、見過ごしてよいわけでもありません。

重要施設の周辺土地、国境離島、インフラに関係する土地については、国が一定の把握と関与をする必要があります。ドローン、通信機器、データ取得、サイバー脅威など、土地利用のリスクは昔より複雑になっています。

内閣官房資料でも、安全保障上の問題について、物理的な危機だけでなく、サイバー脅威や情報・データの防護も含めて検討が必要とされています。

だからこそ、制度は国籍感情ではなく、リスクに基づいて設計すべきです。

どの区域を対象にするのか。どの取引を届出対象にするのか。事前審査にするのか、事後調査にするのか。命令違反にどのような制裁を設けるのか。国内法人を通じた取得や、実質的支配者の確認をどうするのか。

こうした実務の細部こそが、制度の実効性を左右します。

今後の焦点は「誰を規制するか」より「何を防ぐか」

政府は、外国人による土地取得等のルールの在り方検討会を設置し、令和8年3月4日に第1回会合を開いています。内閣官房のページでは、検討会の資料や開催状況が公表されています。

内閣官房資料では、令和8年夏までに、対象者、規制内容、規制対象となる土地等について骨格を取りまとめるとされています。

今後の焦点は、「外国人を規制するかどうか」だけではありません。

むしろ、「安全保障上、具体的に何を防ぐのか」を明確にすることです。

重要施設の監視なのか、通信妨害なのか、インフラ機能の阻害なのか、国境離島の管理不能化なのか、投機的取引による地域の生活環境悪化なのか。目的が曖昧なまま規制を広げると、必要以上に外国人への不安だけが広がります。

外国人政策は、厳格化と共生の両方が必要です。

ルールを守る外国人には、安心して暮らし、働き、投資できる環境を整える。一方で、安全保障や違法行為に関わるリスクには、国籍にかかわらず毅然と対応する。

土地取得規制の議論も、この線を外してはいけないと感じます。

まとめ

外国人による土地取得の問題は、単純な「売るべきか、売らないべきか」の話ではありません。

重要土地等調査法により、すでに一定の区域指定、利用状況調査、届出、勧告・命令の仕組みはあります。

しかし、国籍把握や実質的支配者の確認、過去取得分の把握、都市部の重要施設周辺への対応など、課題は残っています。

必要なのは、感情的な排除ではなく、説明できるルールです。

安全保障上のリスクがある土地については、国が把握し、必要な場合には止める。正当な居住・事業・投資まで不必要に萎縮させない。ここに、これからの制度設計の難しさがあります。

外国人との共生を考えるうえでも、「不安を放置しないこと」と「外国人全体を疑わないこと」は両立させなければなりません。

在留資格や外国人実務でも同じですが、制度は最後には現場で運用されます。だからこそ、条文だけでなく、どのような情報を集め、誰が判断し、どのように説明するのかが問われます。

土地取得規制の議論は、外国人政策全体の成熟度を映す鏡のようなテーマだと思います。

4. 記事末尾の整理

【結論】
外国人による土地取得規制は、安全保障上の必要性がある一方で、国際約束、財産権、経済活動への影響との調整が不可欠です。国籍だけで一律に規制するのではなく、重要施設周辺や国境離島など、具体的なリスクに着目した制度設計が重要です。

【根拠】
重要土地等調査法により、注視区域・特別注視区域の指定、土地等の利用状況調査、特別注視区域内の届出、機能阻害行為に対する勧告・命令の仕組みが設けられています。内閣府の令和6年度公表資料では、注視区域内の取得総数113,827筆個のうち、外国人・外国系法人による取得は3,498筆個、3.1%とされています。

【注意点・例外】
外国人・外国系法人による取得が確認されたことと、違法行為や安全保障上の危険があることは同じではありません。国際約束との整合性、対象区域、規制内容、国内法人を通じた取得、実質的支配者の確認などは、今後の制度設計によって結論が変わります。個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。

【出典】
内閣府「重要土地等調査法」
内閣府「重要施設周辺等における土地等の取得の状況 令和6年度」
内閣官房「外国人による土地取得等のルールの在り方検討会」
内閣官房「我が国の土地等に関連する制度及び運用状況等について」
テレビ朝日・ABEMA TIMES報道「なぜ、重要な土地を外国人に売ってしまうのか?」
WTO「General Agreement on Trade in Services」

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