高度専門職の年収基準引き上げへ|高度人材ポイント制はどう変わるのか
日本経済新聞は2026年8月14日、政府が在留資格「高度専門職」の認定基準を見直し、年収に関する基準を引き上げる方針であると報じました。
報道によれば、法務省は2026年度内にも関係省令を改正し、年収基準や配点の見直し、利用頻度の低いボーナス項目の廃止などを検討するとされています。
最初に大切な点をお伝えすると、現時点では新しい年収額や配点、施行日が正式に決まったわけではありません。
今回確認できた一次資料では、具体的な改正案や経過措置までは公表されていません。
「高度専門職の年収条件が、もう引き上げられた」と受け止めるのは早い段階です。
この記事のポイント

- 現行制度では、学歴、職歴、年収、年齢などを合計して70点以上が必要
- 年収基準と一部のボーナス項目が見直される可能性がある
- 改正内容によっては、新規申請だけでなく更新や永住申請にも影響し得る
- 新基準、施行日、既存の在留者に対する経過措置は未確定
現在の高度人材ポイント制とは

高度人材ポイント制は、専門的・技術的な就労資格に該当する外国人のうち、特に高い能力や資質を持つと評価された人を優遇する制度です。
活動内容は、主に次の3つに分かれています。
- 高度専門職1号イ 大学や研究機関などで行う高度学術研究活動
- 高度専門職1号ロ 企業などで行う高度専門・技術活動
- 高度専門職1号ハ 企業の経営や管理を行う高度経営・管理活動
学歴、職歴、年収、年齢などの基本項目に、日本語能力、研究実績、日本の大学卒業といったボーナス項目を加え、合計70点以上となれば高度専門職1号の対象になります。
出入国在留管理庁のポイント評価制度
認定されると、在留期間「5年」の付与、複合的な在留活動、一定の要件を満たす配偶者の就労、親や家事使用人の帯同、永住許可要件の緩和などの優遇措置があります。
年収ポイントと最低年収基準は別のもの
実務上、誤解されやすいのが「年収ポイント」と「最低年収基準」の違いです。
現行のポイント計算表では、年齢と年収の組合せによって年収ポイントが決まります。
例えば、高度専門・技術分野では、29歳以下で年収400万円の場合、年収について10点が付与されます。
出入国在留管理庁の現行ポイント計算表
これとは別に、高度専門職1号ロと1号ハには、原則として年収300万円以上という最低年収基準があります。ほかの項目で70点を超えても、年収が300万円未満であれば高度外国人材として認定されません。
高度人材ポイント制Q&A
今回の報道では、年収ポイントの基準や配点の見直しが例示されています。一方、最低年収300万円の基準まで変更されるのかは、現時点ではわかりません。
今回の見直しで考えられる影響

70点ぎりぎりの人は影響を受けやすい
年収ポイントの付与基準が引き上げられると、現在70点から75点程度の人は、改正後に70点を下回る可能性があります。
特に注意が必要なのは、若年者、日本企業での就職直後の人、地方企業や研究機関に勤務する人です。本人の能力や職務内容が変わっていなくても、ポイント表の変更によって評価が変わることがあり得ます。
また、廃止されるボーナス項目の内容によっては、外国の資格、研究実績、勤務先企業の属性などによる加点を前提としていた人にも影響が及びます。
在留中に70点を下回っても直ちに資格を失うわけではない
高度専門職として許可された後、年収の低下や年齢の上昇によって70点未満となっても、その時点で直ちに在留資格を失うわけではありません。
ただし、在留期間更新許可申請の時点で70点に達しない場合、高度専門職としての更新は認められないと、出入国在留管理庁のQ&Aに明記されています。
改正後のポイント表が既存の高度専門職の更新にも適用される場合、次回更新時に別の就労資格への変更を検討しなければならない人が出てくる可能性があります。
もっとも、旧基準を一定期間適用する経過措置が設けられるのかは不明です。
ここは正式な省令改正案を確認する必要があります。
永住許可への影響も見過ごせない

現在、高度人材ポイントが70点以上ある人は、原則10年とされる永住許可の在留期間要件を3年に短縮できます。80点以上であれば1年への短縮が可能です。
永住許可に関する現行ガイドライン
ここで注意したいのは、80点あれば自動的に永住許可されるわけではないことです。
短縮されるのは主に在留期間に関する要件であり、公的義務の履行状況、素行、生活基盤などについては別途審査されます。
また、現在の在留資格が「技術・人文知識・国際業務」などであっても、所定の時点で高度人材ポイントを満たしていたことを立証できれば、この優遇制度を利用できる場合があります。
今後、ポイント計算表が変わると、永住申請時だけでなく「1年前に80点あったか」「3年前に70点あったか」という過去時点の評価方法にも関係する可能性があります。
どの基準表を使うのかを含め、改正後の取扱いを確認しなければなりません。
J-Skipとは分けて考える必要がある

2023年4月からは、ポイント計算を行わず、一定の学歴または職歴と高い年収水準によって高度専門職と認める「特別高度人材制度(J-Skip)」も設けられています。特別高度人材制度(J-Skip)
今回の報道は、主として高度人材ポイント制の見直しを伝えるものです。
J-Skipの年収基準まで変更されるのかは、現時点では確認できません。
「高度専門職の年収条件引き上げ」という見出しだけで、ポイント制とJ-Skipを一括りにしないことが大切です。
行政書士として感じること

物価や賃金水準が上がったため、2012年の制度開始当時の年収基準を見直すという説明には、一定の合理性があります。
ただ、年収は本人の専門性だけで決まるものではありません。勤務する地域、企業規模、研究分野、年齢によっても大きく変わります。
全国一律に年収基準を引き上げれば、東京の大企業では問題にならなくても、地方企業や大学、研究機関が優秀な外国人材を高度専門職として受け入れにくくなるかもしれません。
推測ですが、審査を迅速化するために評価しやすい年収項目の比重を高め、判断に時間がかかる外国資格や研究実績の項目を減らす方向も考えられます。
しかし、それが本当に「高度人材の質」を正確に測ることになるのかは、慎重に考える必要があります。
今から確認しておきたいこと

高度専門職への変更や永住申請を予定している人は、現在の70点だけを見るのではなく、どの項目で何点を得ているのかを整理しておくことが重要です。
特に、年収ポイントや廃止される可能性のあるボーナス項目に依存している場合は注意が必要です。企業側も、内定時の予定年収、賞与の扱い、職務内容、学歴・職歴との関連性を早めに確認しておいた方がよいでしょう。
省令改正の内容によって結論が大きく変わるため、現段階で申請を急ぐべきか、新制度を待つべきかを一律に判断することはできません。
個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
在留資格「高度専門職」への変更、更新、ポイントを利用した永住許可申請を検討している場合は、現在の点数だけでなく、改正後に減点となる可能性も含めて申請計画を整理することをおすすめします。
4. 記事末尾の整理
【結論】
高度人材ポイント制の年収基準は、2026年度内にも見直されると報じられています。ただし、具体的な年収額、配点、施行日、経過措置は未確定です。70点ぎりぎりの人は、新規申請だけでなく更新や永住申請への影響も確認する必要があります。
【根拠】
現行制度では、学歴、職歴、年収、年齢、ボーナス項目などを合計し、70点以上で高度専門職1号の対象となります。高度専門職1号ロ及び1号ハには、別途、年収300万円以上の最低年収基準があります。
【注意点・例外】
今回の基準引き上げは報道段階です。最低年収300万円の基準、J-Skip、既存の高度専門職の更新、永住申請における過去時点のポイント計算にどう適用されるかは確認できていません。
【出典】
一次情報
参考情報
日本経済新聞「外国人の高度人材、認定の年収条件引き上げ 26年度にも省令改正」2026年8月14日
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