日本人と結婚すれば在留特別許可されるのか|入管庁が令和7年の許可・不許可事例を公表
この記事のポイント

・入管庁が2026年7月31日、令和7年中の在留特別許可・不許可事例を公表しました
・日本人との婚姻や長期在留は重要ですが、それだけで許可が決まるわけではありません
・公表事例は結論を予測する「判例集」ではなく、個別事情を整理するための参考資料です
在留特別許可の最新事例が公表された

出入国在留管理庁は2026年7月31日、「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について」を公表しました。令和7年の事例資料には、許可された事例13件、許可されなかった事例10件が掲載されています。
在留特別許可とは、不法残留などの退去強制事由に該当する外国人について、法務大臣が個別事情を考慮し、例外的に日本での在留を認める制度です。通常の在留期間更新や在留資格変更とは、出発点がまったく異なります。
令和5年の入管法改正では、在留特別許可の申請手続が創設され、判断の際に考慮する事情も法律上明示されました。具体的には、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、日本での在留期間とその間の法的地位、退去強制事由となった事実、人道上の配慮の必要性などです。
ただし、一定の条件を満たせば許可される制度に変わったわけではありません。入管庁のガイドラインも、個々の事情を総合的に考慮する例外的な措置であるという性質は変わらない、と整理しています。
公表事例から見える三つのこと

日本人との婚姻だけでは許可は決まらない
日本人配偶者がいる類型では、自ら出頭し、不法残留以外の刑事処分がなく、婚姻生活を継続している3件について、「日本人の配偶者等」が1年ずつ許可されています。
一方、日本人と婚姻していても、覚醒剤事件や不法就労助長により有罪判決を受けた事例、傷害により懲役5年の実刑判決を受けた事例は不許可でした。傷害事件の事例には、配偶者に婚姻継続の意思がないことも記載されています。
婚姻届があることと、夫婦としての生活実態があることは同じではありません。交際や婚姻の経緯、同居、相互扶助、子どもの監護・養育、今後の生活設計まで含めて確認されるのが実務です。「日本人と結婚したから大丈夫」という説明は、やはりできません。
同じ違反名でも結論は同じにならない
今回の資料には、不法就労助長を理由として不許可となった事例がある一方、同じ不法就労助長に該当しながら許可された事例もあります。
許可事例は、日本で約28年7か月在留し、永住者である配偶者との婚姻が約24年10か月、夫婦間に子が2人おり、刑事処分の記載はありませんでした。
不許可事例では、懲役刑の執行猶予判決が記載されています。
ここから分かるのは、「不法就労助長なら必ず不許可」「婚姻期間が長ければ必ず許可」という単純な線引きではないことです。行為の内容、刑事処分、過去の違反歴、家族の実態などが一つの束として評価されます。
長く日本にいることは、それだけではプラスにならない
長期在留は生活基盤や地域社会との結び付きを示すことがあります。しかし、現行ガイドラインは、不法滞在期間が長いこと自体について、在留管理秩序を侵害する消極要素として評価すると明記しています。
印象的なのは、「不法入国約42年4か月」と整理された許可事例です。ただし、これは一般的な不法入国事案ではありません。親子関係不存在の審判確定により、出生時にさかのぼって日本国籍を失ったという特殊な経緯があり、日本人の夫と実子との生活継続を希望していた事例です。
「42年間滞在すれば許可される」という話ではなく、違反状態に至った経緯や本人の責任の程度まで見る必要があることを示しています。
子どもがいれば許可される、でもない

子と共に不法滞在していた類型では、母が自ら出頭し、12歳の子と約12年間日本で生活していた事例について、母に「特定活動」1年、子に「留学」1年が許可されています。
子の父は正規在留者で、母とは内縁関係にありました。
他方、8歳と2歳の子を含む家族全員が不法残留していた事例は不許可でした。
公表資料は判断理由をすべて記載していないため、両事例の決定的な違いはわかりません。
子どもの年齢、就学状況、日本での生活期間、監護・養育の実態、家族の一部に正規の在留資格があるかなどを、資料に基づいて丁寧に整理する必要があります。
子どもの利益は重要な積極要素です。
それでも「子どもが日本の学校に通っているから必ず許可される」と断定することはできません。
公表事例は「答え合わせ」ではなく「論点整理」に使う

相談の現場では、「自分と似た許可事例があるので大丈夫でしょうか」と尋ねられることがあります。気持ちはよく分かります。
ただ、公表されているのは令和7年中に扱われた全件ではなく、個人が特定されない範囲で要約された一部の事例です。
何が決定打になったのかも、表だけでは読み切れません。
実務では、入国から現在までの経緯、違反状態になった理由、自主的な出頭の有無、婚姻と同居の実態、子どもの監護・就学、刑事処分や過去の退去強制歴、地域社会との関係、今後の生活と支援体制を、客観資料とともに一つずつ組み立てます。
似ている事例を探すより、自分の案件にある積極要素と消極要素を正確に把握する方が重要です。
在留特別許可を求めるべきか、出国命令など別の手続を検討すべきかも、事情によって結論が変わります。出頭や申請の時期は、その後の退去強制手続に直結する可能性があります。
インターネット上の事例だけで判断せず、早い段階で入管実務に詳しい行政書士や弁護士へ相談することをおすすめします。
記事末尾の整理
【結論】
在留特別許可は、日本人との婚姻、子どもの存在、長期在留といった一つの事情だけでは決まりません。家族関係の実態、違反の内容、刑事処分、出頭の経緯、人道上の必要性などを総合して判断されます。
【根拠】
出入国在留管理庁が2026年7月31日に公表した令和7年中の許可13件・不許可10件の事例、入管法第50条、令和6年3月改定の在留特別許可に係るガイドラインに基づきます。
【注意点・例外】
公表事例は全件ではなく、記載されていない事情が判断に影響している可能性があります。事例が似ていても同じ結果になるとは限りません。個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
【出典】
一次情報
・出入国在留管理庁「『在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について』の公表について」(2026年7月31日)
・出入国在留管理庁「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について(令和7年)」
・出入国在留管理庁「在留特別許可に係るガイドライン」(令和6年3月改定)
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