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TOP > コラム > 新潟県上越市の不法就労助長事件から考える 外国人雇用の入口管理と企業責任

新潟県上越市の不法就労助長事件から考える 外国人雇用の入口管理と企業責任

2026.07.13
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不法就労助長は「本人だけの問題」では終わらない

新潟県上越市で、中国籍の会社経営者ら2人が、出入国管理及び難民認定法違反の疑いで再逮捕されたと報じられました。

報道によれば、会社経営者の男性は、資格外活動の許可を受けていない外国人を自らの会社で働かせ、報酬を受ける活動をさせた疑いが持たれています。

また、同じく中国籍の女性についても、資格外活動の疑いで逮捕されたとされています。両名は、5月21日にも虚偽申請の疑いで逮捕されていたとのことです。

もちろん、逮捕段階であり、有罪が確定したわけではありません。個別の事実関係や認否、最終的な司法判断については、現時点の報道だけで断定することはできません。

ただ、この種の事案は、外国人雇用を行う企業にとって非常に重要です。なぜなら、不法就労の問題は、働いた外国人本人だけでなく、雇用した側、紹介した側、管理していた側にも責任が及ぶことがあるからです。

現場で相談を受けていると、「在留カードを持っていたから大丈夫だと思った」「日本に住んでいるなら働けると思った」「本人が働けると言っていた」という声を聞くことがあります。

しかし、外国人雇用では、この感覚が一番危ないところです。

在留カードを持っていることと、その会社で、その業務に従事できることは、同じではありません。

不法就労助長罪とは何か

不法就労助長罪は、入管法第73条の2に規定されています。

警視庁の案内でも、外国人を雇用する際には、在留カードや旅券を確認し、在留資格、在留期間、在留期限、資格外活動許可の有無などを確認する必要があると説明されています。

罰則は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科とされています。

ここで大切なのは、「外国人本人が悪いことをした」という単純な話ではないことです。

たとえば、留学生が資格外活動許可を受けずに働く。あるいは、資格外活動許可はあるものの、許可された範囲を超えて働く。就労資格を持っている外国人が、在留資格で認められていない単純労働に従事する。こうした場合、本人側には資格外活動の問題が生じます。

一方で、会社がそのような就労をさせた場合、会社側には不法就労助長の問題が出てきます。つまり、入口の確認を怠ったことが、企業の刑事リスクにつながる可能性があります。

「資格外活動許可があるか」だけでは足りない

資格外活動許可について、出入国在留管理庁は、パスポートに貼付される証印シールや資格外活動許可書により確認できるとしています。

また、許可には、勤務先や業務内容を個別に指定する場合と、原則として週28時間以内などの条件で勤務先を指定しない包括的許可があります。

つまり、企業側が確認すべきなのは、単に「資格外活動許可あり」と書いてあるかどうかだけではありません。

その外国人の在留資格は何か。資格外活動許可はあるのか。包括的許可なのか、個別指定なのか。週28時間以内の制限があるのか。風俗営業等に該当する場所ではないか。そもそもその業務内容が許可の範囲に入っているのか。

ここまで確認して、初めて「雇用してよいか」の入口判断に近づきます。

外国人雇用で企業が陥りやすい誤解

実務上、よくある誤解があります。

「在留カードが本物なら働ける」
「留学生は週28時間以内なら何でも働ける」
「技人国なら正社員として雇えば問題ない」
「アルバイトだから細かく確認しなくてよい」
「知人紹介だから大丈夫」

いずれも危険です。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」で在留する外国人であっても、現場作業や単純労働が中心であれば、在留資格該当性の問題が生じます。

留学生であっても、資格外活動許可がなければ働けません。資格外活動許可があっても、週28時間を超える就労や、許可されない業務に従事すれば問題になります。

行政書士として外国人雇用の現場を見ていると、不正をしようという強い意図があるケースだけでなく、制度理解の不足から危ない状態になっている企業も少なくありません。

ただ、入管法の世界では、「知らなかった」という説明だけでリスクが消えるわけではありません。外国人を雇う以上、事業主には確認義務があります。

在留カード確認は「コピーを取ること」ではない

外国人雇用の場面で、「在留カードのコピーは取っています」という会社は多いです。もちろん、コピーの保存は重要です。しかし、それだけでは十分とはいえません。

出入国在留管理庁は、在留カード等読取アプリケーションを提供しており、雇用契約や取引などの場で身分確認を行う必要がある場合に利用できると案内しています。

また、厚生労働省の資料でも、在留カード等読取アプリを活用し、読み取った画像とカード券面の記載内容を見比べて確認する流れが示されています。

読み取った情報と券面が異なる場合や、カードを読み取れない場合には、労働局、ハローワーク、地方出入国在留管理官署への相談が案内されています。

今の時代、在留カードの偽造リスクも無視できません。目視だけ、コピーだけ、本人申告だけでは、企業の管理として弱い場面があります。

特に、外国人を継続的に雇用する会社では、採用時だけでなく、在留期限の管理、更新後の在留カード確認、資格外活動許可の有無、業務内容の変更時の再確認まで、仕組みとして整える必要があります。

外国人雇用状況の届出も忘れてはいけない

外国人を雇用した場合、入管法だけでなく、労働関係の届出も問題になります。

厚生労働省は、外国人労働者を雇い入れたとき、または離職したとき、すべての事業主に対して外国人雇用状況の届出を義務づけています。

在留資格「外交」「公用」および特別永住者を除く外国人労働者が対象で、届出を怠ったり虚偽の届出をした場合には、30万円以下の罰金の対象となるとされています。

この届出は、単なる事務手続ではありません。会社が外国人を雇用する際に、氏名、在留資格、在留期間、在留期限などを確認する実務とつながっています。

つまり、外国人雇用では、入管法上の就労可否確認と、労働施策総合推進法に基づく届出実務がセットで動いていると考えるべきです。

今回の事案から企業が学ぶべきこと

今回の報道で注目すべき点は、虚偽申請の疑いで逮捕された後、その後の捜査で不法就労助長や資格外活動の疑いが判明したとされている点です。

これは、在留資格申請の入口で不自然な点があると、実際の就労実態、雇用関係、報酬の流れ、会社の実体まで確認される可能性があることを示しています。

会社としては、次のような管理が最低限必要です。

在留カード原本の確認、在留期限の管理、在留資格と業務内容の照合、資格外活動許可の内容確認、雇用契約書・労働条件通知書の整備、勤務時間の記録、外国人雇用状況の届出、更新時の再確認。

これらは面倒に見えます。けれども、外国人雇用では、この「面倒な確認」が会社を守ります。

人手不足の現場では、「すぐ働ける人がいるなら助かる」という気持ちが先に立ちます。しかし、在留資格の確認を後回しにした雇用は、会社にとって大きなリスクです。

外国人本人にとっても、将来の在留審査や退去強制手続につながり得る深刻な問題になります。

外国人雇用は、採用前の数分で結果が変わる

不法就労助長の相談を見ていると、問題が大きくなる会社ほど、採用時の確認が曖昧です。

「在留カードを見せてもらった気がする」
「コピーはどこかにあると思う」
「更新期限は本人に任せていた」
「仕事内容は現場で決めていた」

こうした状態では、いざ問題が起きたときに、会社として適正に確認していたことを説明しにくくなります。

外国人雇用は、採用前の数分で大きく変わります。在留カードの原本を確認する。資格外活動許可の有無を見る。在留資格と業務内容を照らす。必要に応じて専門家に確認する。

この小さな手間を惜しまないことが、結果的に会社、外国人本人、現場の従業員を守ることになります。

外国人を雇用する企業にとって、在留資格確認は「入社書類の一部」ではありません。雇用そのものが適法に成立するかを見極める、最初のゲートです。

在留資格申請や外国人雇用の判断は、制度の条文だけでなく、実際の活動内容、勤務場所、雇用形態、勤務時間、報酬の支払い方によって結論が変わることがあります。判断に迷う場合は、採用前の段階で専門家へ確認することをおすすめします。

  1. 記事末尾の整理

【結論】

不法就労助長は、外国人本人だけでなく、雇用した企業側にも重大な責任が及ぶ問題です。在留カードを持っていることと、その会社でその業務に従事できることは別です。外国人雇用では、採用前の在留資格確認、資格外活動許可の確認、業務内容との照合、雇用後の期限管理が不可欠です。

【根拠】

入管法第73条の2は、不法就労助長に関する罰則を定めています。警視庁は、外国人雇用時に在留カード、旅券、在留資格、在留期間、在留期限、資格外活動許可の有無等を確認するよう案内しています。
資格外活動許可については、出入国在留管理庁が、個別指定型と包括的許可があることを説明しています。
外国人雇用状況の届出は、厚生労働省がすべての事業主の義務として案内しています。

【注意点・例外】

逮捕報道は有罪確定を意味しません。今回の個別事案について、容疑の成否や具体的な事実関係は、今後の捜査・司法判断によります。
資格外活動許可がある場合でも、許可内容、勤務時間、業務内容、勤務場所によって適法性の判断が変わります。
在留資格と業務内容の適合性は、個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。

【出典】

一次情報
出入国管理及び難民認定法、e-Gov法令検索
出入国在留管理庁「資格外活動の許可」
出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション/失効情報照会 サポートページ」
厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」
警視庁「外国人の適正雇用について」

参考情報
にいがた経済新聞「中国籍の会社経営者ら2人を再逮捕 不法就労助長などの疑い(上越警察署)」2026年6月12日

 


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