茨城県が新年度から、外国人の不法就労に関する情報提供を受け、摘発につながった場合に報奨金を支払う「通報報奨金制度」を始める方向だと報じられました。
県は予算案の説明の場で、不法就労対策の強化を打ち出しています。
知事記者会見の記録でも、県民からの情報提供を受け、県が不法就労かどうか確認したうえで警察に連絡する趣旨が語られています。
この話、入管実務にいると「制度の気持ちは分かる。でも運用が一歩ズレると、かなり痛い副作用が出る」と感じます。今日はそこを、なるべく一次情報に寄せて整理します。
そもそも「通報」と「報奨金」は国にもある

まず押さえたいのは、国の制度として「通報により退去強制令書が出た場合、報償金を交付できる」という枠組みが、入管法に置かれている点です(第66条)。
さらに、報償金の額のレンジは省令(入管法施行規則)で「1,000円以上5万円以下」と規定されています。
また、出入国在留管理庁(入管庁)は、一般から不法滞在・偽装滞在等の情報を受け付ける窓口も明示しています。
つまり「通報→当局が確認→処分」という導線自体は、珍しい発想ではありません。
今回のポイントは、自治体が、県警とセットで“制度として”前面に出てくるところです。
茨城県が狙うのは「不法就労者」より「不法に雇う側」になりやすい

茨城県は以前から「不法就労者を雇わない、雇わせない、見過ごさない」という“3原則”を掲げ、適正雇用の宣言制度など、事業者側への働きかけを続けています。
県のストーリーとしては、労働力不足の現実を踏まえつつ、違法雇用を“放置しない”方向に振り切りたいのでしょう。会見記録でも、県が不法就労かどうか事実確認したうえで警察に連絡する、と説明されています。
実務感覚でも、摘発は「働いている本人」だけで終わらず、雇用主側の不法就労助長に波及します。だから制度設計がうまくいけば、情報は雇用主側に寄る可能性はあります。
ここは制度の“建付け”としては合理的です。
ただし、合理的に作ったはずの制度が、現場では別の顔になることがあります。
一番怖いのは「相談より潜る」方向に人が動くこと

不法就労・非正規滞在に落ちる入口は、最初から犯罪目的とは限りません。
解雇、賃金未払い、失踪、住まいの喪失、帰国費用がない。こういう“崖”は、技能実習や留学、特定技能の周辺で、いまも普通に起きます。
そこに「通報されるとお金になる」という空気が乗ると、本人は「助けを求める」より「目立たない」選択をしがちです。
結果として、行政や支援につながるタイミングが遅れ、本人の生活が荒れていく。
これは入管実務でも、支援現場でも、わりと現実的な副作用です。
県は「確認できた不法就労だけを通報する」「まじめに働く外国人を不安に陥れない」と説明しています。
ただ、問題は“確認に至るまで”の摩擦です。
事業者確認、本人確認、周辺聞き取り。
どれも、対象者にとっては「疑われた」体験になります。正規就労の人が巻き込まれれば、地域の空気は一気に冷えます。
制度が機能する条件は「人権配慮」ではなく「運用の細部」

ここからは行政書士としての感覚ですが、制度の成否はスローガンでは決まりません。
運用設計の細部です。たとえば次のような論点が、制度の性格を変えます。
・通報の要件が「就労資格がない外国人」中心なのか、「違法雇用の事業者」中心なのか
・匿名通報をどこまで受けるのか、虚偽・嫌がらせ通報への抑止をどう置くのか
・県が行う「確認」の方法と限界(何をもって“不法就労”と判断したと言えるのか)
・警察連絡までの情報管理、誤認時の是正、当事者への救済の作り方
ここを曖昧にしたまま走ると、制度は「違法雇用の是正」より先に、「外国人一般に対する監視の強化」として受け止められます。
制度の目的と、住民が感じるメッセージがズレる瞬間です。
私なら、制度とセットで「正規ルートへの戻し口」を用意する

取り締まりは必要です。ただ、取り締まりだけで現場は整いません。
違法雇用の温床は、往々にして「正規ルートの手続が間に合わない」「ブローカーが早い」「現場が制度を理解していない」です。
だから、通報制度をやるなら同時に、次の“戻し口”が要ります。
・雇用主向けの適正雇用チェックと是正支援(在留カード確認、就労可否、届出の基本)
・労働トラブルの相談導線(解雇・賃金未払いで“潜らせない”)
・在留手続の案内(手続が遅れて非正規に落ちるケースを減らす)
茨城県は既に適正雇用の啓発や体制整備を進めています。
そこに「通報」だけが強く追加されるとバランスを崩す。
逆に、是正支援と一体で設計できれば、制度は“外国人排除”ではなく“違法雇用の排除”に寄っていきます。
この差は、現場にとって大きいです。
記事末尾まとめ

【結論】
茨城県の通報報奨金制度は、違法雇用の是正に寄せて運用できれば一定の合理性がある一方、「相談より潜る」副作用と地域分断リスクを抱える。勝負は運用の細部にある。
【根拠】
・入管法には通報に基づく報償金(第66条)があり、施行規則で金額レンジ(1,000円〜5万円)が定められている。
・茨城県の知事会見記録に、通報→県が事実確認→警察連絡という設計思想が示されている。
・茨城県は適正雇用の3原則等を掲げ、啓発・体制整備を行っている。
【注意点・例外】
・県が「不法就労」と判断できる範囲には限界があり、誤認・嫌がらせ通報への対策が不十分だと、正規就労者も巻き込まれる。
・「報奨金の額」「匿名通報の扱い」「通報要件」など、制度詳細は今後の設計次第で評価が変わる(現時点では専門家に確認が必要)。
・国(入管庁)にも情報受付窓口があり、自治体制度との役割分担が曖昧だと混乱する。
【出典】
・茨城県「令和8年度当初予算案等発表記者会見における発言要旨(2026-02-18更新)」
・e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法施行規則 第60条(報償金)」
・e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法(報償金 第66条)」
・出入国在留管理庁「情報受付(不法滞在・偽装滞在等の情報受付)」
・茨城県「外国人材適正雇用推進宣言制度(3原則)」
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