3月に入って、入管周りの空気がまた一段、変わった感じがします。
自民党の法務部会が、入管法改正案の条文審査を行い「了承した」との発表が出ました。
柱は2つ。電子渡航認証制度(JESTA)の創設と、在留手続の手数料上限の引上げです。
実務家として最初に思うのは、「制度の名前」よりも「誰の行動が変わるか」です。
旅行者、航空会社、企業の人事、そして在留外国人本人。入口から出口まで、地味に影響が広がります。
1. JESTAとは何か。「入国前」に寄せる制度設計

JESTAは、いわゆる日本版ESTA。査証免除で短期滞在(観光など)として来日する人に対して、出発前にオンラインで渡航目的などを申告させ、当局が事前にスクリーニングする枠組みです。
自民党の説明でも「不法残留を企図する外国人の入国を防ぐための事前認証」と位置づけています。
ここで重要なのは、「入国審査の前倒し」という発想です。米国のESTAも同様で、ビザ免除で行く場合でも搭乗前に認証が必要になります。
外務省もESTAの仕組みを説明していて、認証がなければ搭乗や入国に影響し得る点を明記しています。
推測ですが、日本でも運用が始まれば、実務はこう動きます。
空港のブースで揉める前に、搭乗前の段階で弾く。
そうなると、航空会社側の確認義務や、旅客側の「申告ミス」救済(再申請の導線)が、制度の使い勝手を決めるはずです。
さらに、インバウンドの文脈も混ざります。
旅行業界では、JESTAを入国審査の円滑化や混雑対策ともセットで語っています。
「不法残留対策」だけでなく「処理能力の設計」という顔もある。ここは、制度の説明が一枚岩にならない部分です。
2. 手数料の上限引上げ。「更新10万円・永住30万円」が意味するもの

今回の発表で最もインパクトが強いのは、手数料上限の話です。現行法では上限1万円、改正案では在留資格変更・在留期間更新を10万円、永住許可を30万円に引き上げる、とされています。
ここで、誤解が出やすいので線を引きます。
「上限を引き上げる」=「明日から一律10万円」ではありません。
上限を上げる法改正をして、具体の金額設計は今後の制度(政省令や運用)に落ちていくのが通常です。なので現時点では、どの手続がいくらになるか、確定情報として断定はできません。
ただ、方向性は読み取れます。
2025年4月にも在留手続の手数料改定があり、例えば更新・変更が6,000円、永住が10,000円へ動いた流れがあります。
そこからさらに桁を変える議論が、いよいよ「上限改正」として俎上に載ってきた、という見え方です。
現場の感覚で言うと、ここは家計より先に「企業の採用設計」に効きます。
更新・変更のたびに本人負担が増えるのか、会社が持つのか。
持つなら福利厚生コストとして何人分を見込むのか。採用の最終局面で「手数料が想定外」となり、内定承諾が揺れるケースも出てきます。
実際、相談の場で一番多いのは「結局いくらかかるんですか?」です。これまでなら、こちらも比較的さらっと答えられた。今後は、手数料だけでなく、更新の頻度や在留期間の取り方まで含めて、人生設計の会話になります。
3. 「水際強化」と「共生」の間で、制度はどこまで耐えられるか

JESTAも手数料引上げも、言葉としては「適正化」「厳格化」ですが、運用を誤ると副作用が出ます。
たとえばJESTAは、入力情報に基づくスクリーニングです。
どの項目を見て、何を理由に「事前認証しない」のか。
基準が不透明だと、恣意的運用や差別的取り扱いへの疑念が必ず噴きます。
実際、入管庁の「不法滞在者ゼロプラン」をめぐっては、根拠や表現の問題を指摘し、差別と偏見のない共生社会を求める声明も出ています。
制度の目的が「国民の安全」であっても、言葉や運用が荒いと、社会は簡単に分断します。
手数料も同じで、「受益者負担」の理屈は分かる一方、払えない人は手続から落ちる。
結果として無保険・未更新・失職を誘発すれば、それは行政コストとして跳ね返る。
ここは、専門家の間でも評価が割れやすいところなので、最終的には立法過程と附帯決議、そして運用設計まで見て判断が必要です。専門家に確認が必要、まさにこのタイプです。
4. いま、実務でできる「現実的な備え」

確定情報が出揃っていない段階で、過剰に煽るのは避けたい。ただ、備えはできます。
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企業側:採用コストに「在留関連費用」の枠を持つ
更新・変更の頻度、在留期間の取り方で総額が変わり得ます。人事と現場がバラバラに判断すると、最後に揉めます。 -
本人側:更新のタイミング管理を一段丁寧に
延長・変更の判断を「ギリギリ」でやると、制度変更の波を直撃します。いつもより少し早めに動く。それだけで事故率が下がります。 -
旅行・短期滞在に関わる事業者:JESTAの導入スケジュールと運用要件を監視
JESTAは制度導入が目的化しがちですが、実際に困るのは「搭乗できない」「入力ミスで弾かれた」などの現場です。導線設計こそ本丸です。
【結論】
JESTA創設と手数料上限引上げは、「入国前」と「手続コスト」に行政資源を寄せる改正であり、実務への波及は広い。一方で、運用次第では分断や手続離脱を生み得るため、立法過程と具体設計の監視が欠かせない。
【根拠】
自民党法務部会の発表では、改正案の柱としてJESTA創設と手数料上限(更新・変更10万円、永住30万円)を明示している。
JESTAの性格は、査証免除短期滞在者の出発前オンライン申請と事前スクリーニングで整理されている。
【注意点・例外】
手数料は「上限」改正であり、具体の金額が一律に確定したとは限らない。施行日や金額体系は今後の確定情報を要確認。
JESTAは目的が水際対策でも、基準の透明性と救済導線が弱いと、差別・恣意運用の疑念を招きやすい。
【出典】
自由民主党「不法残留する外国人の入国を防ぐJESTAを創設 法務部会 入管法の改正案を了承」(2026-03-05)
第一生命経済研究所「【1分解説】電子渡航認証(JESTA)とは?」(2026-02-16)
外務省「ビザ免除プログラムを利用した米国への渡航(ESTA)」
東京弁護士会 会長声明(不法滞在者ゼロプランに関する声明PDF、2025-09-17)
(参考)2025年4月の手数料改定の整理(永住1万円等)
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