SNS上の不法就労情報は、企業にとっても他人事ではない

出入国在留管理庁が、不法残留・不法就労外国人の摘発強化に向けて、SNS上の投稿収集・分析を強化する方針であることが報じられました。
報道では、外国人同士が母国語でつながるSNS空間の中で、不法就労の仕事紹介、偽造身分証の売買、いわゆる闇バイト情報がやり取りされている実態が紹介されています。
入管庁の公表資料によれば、令和8年1月1日現在の不法残留者数は6万8,488人です。前年の7万4,863人から6,375人減少しているものの、依然として相当数の不法残留者が国内にいることになります。
ここで大切なのは、「外国人が増えたから危ない」という雑な話にしないことです。日本で働き、学び、生活している多くの外国人は、正規の在留資格を持ち、ルールを守って暮らしています。
一方で、SNSを入口に不法就労や偽造書類のネットワークが作られているなら、外国人本人だけでなく、雇用する企業側にも実務上のリスクが及びます。
行政書士として現場で感じるのは、企業側の認識がまだ少し甘い場面があることです。「人手が足りない」「紹介者が信頼できる」「本人が大丈夫と言っている」。
その感覚で採用を進めると、後から在留資格上の問題が見つかることがあります。
不法就労は「本人だけの問題」では終わらない

不法就労というと、どうしても外国人本人の違反行為として見られがちです。しかし、入管庁の事業主向け資料では、不法就労した外国人だけでなく、不法就労させた事業主も処罰の対象になると明記されています。
特に企業が注意すべきなのは、「知らなかった」だけでは安全とは限らない点です。入管庁のQ&Aでは、雇用主が外国人を不法就労者であると知らなかった場合でも、在留資格の有無を確認していないなどの過失がある場合には、処罰を免れないと説明されています。
つまり、企業側には確認義務に近い実務対応が求められていると考えるべきです。
「在留カードを持っているか」
「在留期限は切れていないか」
「就労制限の有無はどうなっているか」
「資格外活動許可はあるか」
「その在留資格で、その業務内容に従事できるか」
ここまで確認して初めて、外国人雇用のスタートラインに立てます。
偽造在留カード問題で怖いのは「見た目だけでは判断できない」こと

近年、偽造在留カードの問題も繰り返し報じられています。今回の報道でも、SNS上で偽造身分証に関する情報がやり取りされているとされています。
実務上、企業の担当者から「在留カードのコピーをもらえば大丈夫ですか」と聞かれることがあります。答えは、かなり慎重になります。
在留カードのコピーを保存すること自体は、確認記録として意味があります。しかし、それだけで十分とは言い切れません。偽造カードの場合、表面の記載だけを見ても判断が難しいことがあるからです。
入管庁のQ&Aでも、在留カードを持っていれば雇用に問題がないという理解ではなく、顔写真による本人確認、在留資格、在留期間の満了日、就労制限、資格外活動許可の有無を確認するよう求めています。
また、偽変造された在留カードを提示された場合は、最寄りの地方出入国在留管理局または警察へ通報することが案内されています。
「在留カード確認」は採用時だけで終わらせない

もう一つ重要なのは、確認のタイミングです。
採用時に在留カードを確認したとしても、その後に在留期限が切れることがあります。留学生や家族滞在の資格外活動許可で働く人の場合、許可の範囲を超えて勤務してしまうこともあります。
転職を伴う就労資格の場合、前職では問題がなかった業務でも、新しい勤務先の業務内容では在留資格該当性が問題になることがあります。
外国人雇用では、採用時の確認、在留期限前の確認、業務内容変更時の確認、この3つを社内ルールにしておくことが現実的です。
SNS募集・知人紹介・派遣利用で起きやすい落とし穴

今回の報道で特に気になるのは、SNSが不法就労の入口になっているという点です。
企業が直接SNSで募集していなくても、知人紹介、ブローカー的な人物、二次請け・三次請け、派遣会社を通じて、結果的に就労資格に問題のある外国人が現場に入る可能性があります。
現場では、次のような言葉が出てきたときに注意が必要です。
「この人たちはみんな働けます」
「カードは後で持ってきます」
「本人確認は紹介者が済ませています」
「急ぎなので先に働かせてください」
「在留資格はよくわからないけど、前の会社でも働いていました」
こうした説明は、必ずしも違法を意味するわけではありません。ただ、確認を省略する理由にはなりません。
企業側からすれば、人手不足の中で「今すぐ働ける人」は魅力的に見えます。しかし、外国人雇用では、早く採ることより、適法に採ることの方がはるかに重要です。ここを間違えると、本人の在留にも、会社の信用にも傷が残ります。
不法残留者の多くが「短期滞在」だからこそ、単純な見方は危険

添付画像でも示されているとおり、令和8年1月1日現在の不法残留者数6万8,488人のうち、在留資格別では短期滞在が61%とされています。この数字は、入管庁の統計に基づくものです。
ここから分かるのは、不法残留の問題を技能実習生や留学生だけの問題として見るのは正確ではないということです。もちろん、技能実習生の失踪や留学生の資格外活動違反は実務上大きな問題です。しかし、統計上は短期滞在からの不法残留が大きな割合を占めています。
一方で、不法就労の現場では、短期滞在、技能実習からの失踪、留学の資格外活動違反、身分系在留資格を装った偽造カードなど、複数の問題が混ざります。
企業の担当者に必要なのは、「どの国籍が危ないか」という見方ではありません。「どの確認を省略すると危ないか」という視点です。
企業が最低限整えておきたい確認体制

外国人を雇用する企業は、少なくとも次の実務対応を整えておくべきです。
1つ目は、在留カード原本の確認です。コピーや写真だけで採用判断をしないことが重要です。
2つ目は、本人確認です。カードの顔写真と本人が一致するかを確認します。
3つ目は、在留資格・在留期限・就労制限の確認です。特に「留学」「家族滞在」「特定活動」は、就労の可否や範囲が個別に変わるため注意が必要です。
4つ目は、業務内容との適合性確認です。たとえば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持っているからといって、どの仕事でもできるわけではありません。現場作業中心の仕事では問題になることがあります。
5つ目は、確認記録の保存です。いつ、誰が、何を確認したのかを残しておくことで、後日の説明がしやすくなります。
外国人雇用は、採用して終わりではありません。在留期限管理、業務変更時の確認、更新時期の声かけまで含めて、雇用管理の一部として扱う必要があります。
取り締まり強化の時代に、企業が守るべき線

SNS監視やサイバーパトロールの強化は、不法就労の入口を早期に把握するための動きといえます。入管庁は、令和7年の出入国在留管理業務の状況でも、不法滞在者ゼロプランに基づく各種施策に取り組んでいることを示しています。
ただし、取り締まり強化の話題は、ともすると外国人全体への疑いに変わりやすい面があります。そこは冷静に分けて考える必要があります。
問題なのは、国籍ではありません。
問題なのは、在留資格を確認しない採用、偽造書類を見抜こうとしない体制、違法な紹介ルートに依存する雇用慣行です。
外国人を適正に雇用する企業にとって、在留資格確認は「面倒な手続き」ではなく、本人を守り、会社を守り、地域社会との信頼を守るための基本動作です。
人手不足の時代だからこそ、ここを雑にしてはいけない。これは行政書士として、かなり強く感じているところです。
在留カードの確認方法、就労可能性の判断、派遣・紹介スキームの適法性確認などは、個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。少しでも不安がある場合は、採用前の段階で確認しておくことをおすすめします。
- 記事末尾の整理
【結論】
SNSを通じた不法就労や偽造在留カードの問題は、外国人本人だけでなく、雇用する企業にも直接関係します。企業は、国籍や紹介者への印象で判断するのではなく、在留カード原本、在留資格、在留期限、就労制限、業務内容との適合性を確認する体制を整える必要があります。
【根拠】
入管庁公表資料では、令和8年1月1日現在の不法残留者数は6万8,488人とされています。
入管庁の事業主向け資料では、不法就労した外国人だけでなく、不法就労させた事業主も処罰対象になるとされています。
入管庁Q&Aでは、在留カードを所持していれば雇用に問題がないという理解ではなく、在留資格、在留期間、就労制限、資格外活動許可などを確認する必要があると説明されています。
【注意点・例外】
在留資格「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」は、入管法上、就労職種に制限はありません。一方、「技術・人文知識・国際業務」「技能」「特定技能」「技能実習」「留学」「家族滞在」「特定活動」などは、就労できる範囲や条件の確認が必要です。
偽造在留カードの場合、表面の記載だけで判断できないことがあります。原本確認、本人確認、在留カード番号の確認、必要に応じた専門家確認を組み合わせることが重要です。
不法就労かどうかは、在留資格名だけで決まるものではありません。実際の業務内容、勤務時間、許可内容、在留状況により判断が変わるため、個別事情により判断が分かれる場合は専門家への確認が必要です。
【出典】
出入国在留管理庁「本邦における不法残留者数について(令和8年1月1日現在)」
出入国在留管理庁「外国人を雇用する事業主の皆様へ」
出入国在留管理庁「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について Q&A」
出入国在留管理庁「令和7年の出入国在留管理業務の状況」
参考情報:産経新聞配信記事「SNSに潜む偽造証明書や闇バイト情報 隠語で『兵士』と呼ばれるベトナム人不法残留者」(ITmedia転載記事として確認)
—————————————————————————————————————————————-
特定技能ビザをはじめとする各種ビザ・在留資格のご相談や代行申請はホームページのお問い合わせフォームをはじめ、お電話・LINE・Facebook・Instagramからもお問い合わせが可能です。
また、当事務所のYouTubeチャンネル「ビザ新潟ちゃんねる」も更新中です。興味のある方はYouTubeもぜひのぞいてみてください。
ビザ新潟ちゃんねる
以上、新潟市のビザ専門行政書士事務所、Asocia行政書士法務事務所でした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
新潟のビザ・入管業務のことならお任せ下さい。
ビザの相談・申請代行専門
Asocia行政書士法務事務所
新潟県初の登録支援機関(19登-000085)
代表行政書士 播磨 史雄
住所:新潟市西区平島2丁目13-11 2F
℡:025-201-7514
mail:info@fumio-h-office.com
総合ホームページ:https://fumio-h-office.com/
新潟ビザ相談センター:https://visa-asocia.com/
新潟県お酒の販売許可申請代行センター:https://www.sakemenkyo.com/
一般社団法人設立専門ページ:https://niigata-syadan.com
新潟成年後見相談センター:http://www.niigata-seinenkouken.com/
LINEからの相談は『24時間365日』受け付けています。
対応エリア
全国対応
新潟県全域対応可能(新潟市、長岡市、三条市、柏崎市、新発田市、小千谷市、加茂市、十日町市、見附市、村上市、燕市、糸魚川市、妙高市、五泉市、上越市、阿賀野市、佐渡市、魚沼市、南魚沼市、胎内市、聖籠町、弥彦村、田上町、阿賀町、出雲崎町、湯沢町、刈羽村、関川村、粟島浦村、津南町)ビザ新潟
福島県全域対応可能(福島市、会津若松市、郡山市、いわき市、白河市、須賀川市、喜多方市、相馬市、二本松市、田村市、南相馬市、伊達市、本宮市、桑折町、国見町、川俣町、大玉村、鏡石町、天栄村、下郷町、檜枝岐村、只見町、南会津町、北塩原村、西会津町、磐梯町、猪苗代町、会津坂下町、湯川村、柳津町、三島町、金山町、昭和村、会津美里町、西郷村、泉崎村、中島村、矢吹町、棚倉町、矢祭町、塙町、鮫川村、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町、新地町、飯舘村、大玉村、天栄村、檜枝岐村、只見町、南会津町、北塩原村、西会津町、磐梯町、猪苗代町、湯川村、柳津町、三島町、金山町、昭和村、飯舘村)ビザ福島
山形県全域対応可能(山形市、米沢市、鶴岡市、酒田市、新庄市、寒河江市、上山市、村山市、長井市、天童市、東根市、尾花沢市、南陽市、山辺町、中山町、河北町、西川町、朝日町、大江町、大石田町、金山町、最上町、舟形町、真室川町、大蔵村、鮭川村、戸沢村、高畠町、川西町、小国町、白鷹町、飯豊町、大蔵村、鮭川村、戸沢村)ビザ山形
上記エリア以外でも当事務所はオンライン申請に対応しております。
面談もZoomでの対応可能です。
LINEからの相談は『24時間365日』受け付けています。
友達追加してお気軽にご相談ください。
