外国人の子供17万7,726人。これは「一部地域だけの話」ではなくなった
文部科学省は2026年5月25日、「外国人の子供の就学状況等調査(令和7年度)」の結果を公表しました。調査基準日は2025年5月1日です。
今回、学齢相当、つまり小学生・中学生に相当する外国人の子供は17万7,726人となり、調査開始以来最多となりました。文科省はこの調査を令和元年度から全国調査として実施しており、今回が6回目です。
数字だけを見ると、「外国人の子供が増えている」という一文で終わってしまいそうです。
しかし、行政書士として外国人の在留手続や家族の生活相談に触れていると、この数字にはかなり重い意味があります。
外国人の子供の問題は、もはや大都市や工業地域だけの話ではありません。家族滞在、永住者の子、定住者、日本人の配偶者等の子、就労資格を持つ親に帯同する子供など、在留資格の背景はさまざまです。
その子供たちが日本で生活する以上、教育は単なる福祉的配慮ではなく、地域社会の土台そのものになります。
43.3%の自治体に外国人の子供が10人以上いるという現実

今回の調査では、学齢相当の外国人の子供が1人以上いる地方公共団体は1,298団体、全体の74.6%でした。
さらに、小学生相当・中学生相当を合わせて10人以上いる地方公共団体は、10〜49人が368団体、50〜99人が98団体、100〜499人が207団体、500人以上が80団体です。これらを合計すると753団体、全体の43.3%になります。
ここで重要なのは、「10人以上」という数字です。
1人、2人であれば、学校や担当職員の個別対応で何とかなる場面もあります。しかし10人を超えてくると、通訳、日本語指導、保護者への説明、進路相談、学校生活のルール説明などが、個別対応では回らなくなってきます。
たとえば、入学説明会の案内文ひとつを取っても、日本語だけで十分なのか。保護者が学校制度を理解しているのか。給食、持ち物、欠席連絡、PTA、進路、部活動、成績評価といった日本独特の学校文化をどう伝えるのか。
これは「外国人家庭が努力すべき」という話だけでは足りません。受け入れる側にも、仕組みとしての準備が必要になります。
義務教育諸学校に通う子供は85.0%、一方で不就学の可能性は9,153人

今回の調査では、義務教育諸学校に在籍している外国人の子供は15万786人、全体の85.0%でした。外国人学校への在籍は1万1,949人、6.7%です。
一方で、不就学の可能性があると考えられる外国人の子供は9,153人でした。内訳は、不就学が911人、就学状況を把握できずが8,013人、住民基本台帳上の人数との差が229人です。前回調査からは723人増加しています。
ここで注意したいのは、「不就学の可能性」という言葉です。
文科省の調査では、「不就学」は義務教育諸学校にも外国人学校にも就学していないことが確認できた者を指します。一方、「就学状況把握できず」は、就学案内の送付、家庭訪問、電話などにより確認を試みたものの、不在や連絡不通により把握できなかった者とされています。
つまり、9,153人全員が学校に通っていないと断定できるわけではありません。ただし、行政が就学状況を確認できていない子供がこれだけいる、という事実は重く受け止める必要があります。
子供の教育状況が見えないということは、地域社会から子供の存在が見えにくくなるということでもあります。これは、子供本人にとっても、学校にとっても、自治体にとっても望ましい状態ではありません。
外国人の子供に「義務教育」はどう関係するのか

日本国憲法や教育基本法上、日本国民には子供に普通教育を受けさせる義務があります。他方で、外国人の保護者については、日本国民と同じ意味での就学義務が当然に課されるわけではありません。
ただし、ここを誤解してはいけません。
外国人の子供に就学義務がないからといって、日本の公立小中学校に通えないわけではありません。文科省は、外国人の子供の就学機会を確保する観点から、教育委員会や関係部署が連携し、保護者に適切な情報提供を行うことを求めています。
実務上も、外国人家庭からは「子供を学校に入れたいが、どこに相談すればよいかわからない」「日本語ができないので学校に断られるのではないか」「年度途中でも入れるのか」といった不安が出てきます。
行政書士の立場で見ると、在留資格の相談と教育の相談は、実は切り離せません。親の在留資格が安定しているか、住民登録がされているか、転居届が適切に出されているか、家庭の生活基盤があるか。こうしたことが、子供の就学にも影響します。
自治体窓口での説明は進んでいるが、まだ差がある

今回の調査では、外国人が住民登録に係る手続きを行う際、就学希望の有無に関わらず全ての者に就学説明を行っている自治体は55.4%でした。就学希望がある場合に説明している自治体は29.8%です。一方で、特段何も行っていない自治体も3.2%ありました。
この数字を見ると、自治体の取組は少しずつ進んでいるものの、まだ温度差があると感じます。
住民登録の窓口は、外国人家庭と行政が最初に接点を持つ大事な場所です。そこで就学案内がされるかどうかは、その後の学校とのつながりに大きく影響します。
特に、就学希望を本人から申し出た場合だけ説明する運用だと、「そもそも日本の学校に通えることを知らない家庭」が取り残される可能性があります。日本の制度に詳しくない保護者ほど、自分から質問できません。
制度を知っている人だけが支援にたどり着ける。これは、外国人支援の現場でよく起こる問題です。
学校側に必要なのは「善意」ではなく、継続できる体制

外国人の子供の受け入れというと、「日本語ができない子をどう支えるか」という話になりがちです。もちろん日本語指導は重要です。
文科省の指針でも、外国人の子供に対しては、日本語の学習と教科学習を結びつけた指導を行い、教科学習に参加できる力を養うことが必要だとされています。また、日本語能力等に応じた「特別の教育課程」による日本語指導や教科指導、学校内の支援体制の構築も示されています。
ただ、現場で本当に難しいのは、これを一部の先生の努力に頼らないことです。
たまたま外国語ができる先生がいる。たまたま熱心な担任がいる。たまたま地域に通訳ボランティアがいる。これでは、担当者が異動した瞬間に支援が途切れてしまいます。
外国人の子供が増える地域では、学校、教育委員会、住民登録部局、福祉部局、多文化共生担当、場合によっては入管関係の相談窓口や地域の支援団体との連携が必要になります。
これは「国際交流」の話ではありません。日常の行政運営の話です。
行政書士として感じる、在留資格と教育の接点

外国人家庭の相談を受けていると、子供の教育問題は、在留資格の問題と重なることがあります。
たとえば、親が就労資格で日本に在留していて、家族滞在で子供を呼び寄せるケース。親は仕事で忙しく、日本語で学校とやり取りする余裕がない。子供は来日直後で日本語がわからず、学校生活に適応できない。保護者も学校制度を理解できず、欠席や連絡不足が積み重なる。
このような状態になると、単に「学校に通わせればよい」という話ではなくなります。家庭、在留資格、雇用、住居、地域支援が絡み合います。
また、将来的には高校進学、就職、在留資格変更にもつながります。日本で育った外国籍の子供が、高校卒業後にどの在留資格で働くのか。進学しない場合にどのような選択肢があるのか。親の在留資格に依存したままでよいのか。
子供の就学は、目の前の学校生活だけでなく、その後の人生設計にも関わります。
「外国人の子供が増えた」ではなく、「地域の子供が増えた」と考える

今回の調査結果を見て、私は「外国人の子供が増えた」というより、「地域で育つ子供の多様性が増えた」と受け止めるべきだと思います。
もちろん、現場の負担はあります。学校の先生も、自治体職員も、すでに多忙です。日本語指導の人材も十分とはいえません。保護者との連絡ひとつ取っても、言語の壁があります。
それでも、子供は制度を選んで日本に来るわけではありません。親の仕事、家族の事情、国際結婚、定住、避難、さまざまな背景の中で日本に暮らしています。
子供が学校につながることは、本人の将来のためだけではありません。地域社会にとっても、孤立を防ぎ、将来の担い手を育てることにつながります。
外国人の子供の就学支援は、特別な善意ではなく、これからの日本社会に必要な基礎的インフラになりつつあります。
まず必要なのは「把握すること」

今回の調査で特に気になるのは、不就学そのものよりも、「就学状況を把握できない」子供が8,013人いる点です。
把握できなければ、支援もできません。支援できなければ、子供は制度の外側に置かれてしまいます。
外国人の子供の教育を考えるとき、最初に必要なのは大きな理念よりも、実務的にはかなり地道な作業です。
住民登録時の説明。多言語での就学案内。家庭訪問や電話確認。学校との情報共有。転居・出国の確認。日本語指導体制の整備。保護者への制度説明。
派手さはありませんが、こうした積み重ねが、不就学を防ぐ現実的な方法です。
外国人との共生という言葉はよく使われます。ただ、共生はスローガンだけでは進みません。窓口で説明する、記録を取る、連絡する、つなぐ。そういう地味な実務の上にしか成り立たないのだと思います。
在留資格申請や外国人家庭の生活支援では、教育、雇用、住民登録、在留手続がつながって問題になることがあります。判断に迷う場合は、早めに専門家や自治体窓口へ相談することをおすすめします。
- 記事末尾の整理
【結論】
外国人の子供は17万7,726人となり、調査開始以来最多となりました。これは一部の大都市だけの問題ではなく、全国の自治体・学校が向き合うべき教育行政上の課題です。特に、不就学の可能性がある子供9,153人のうち、8,013人が「就学状況把握できず」とされている点は、支援以前に「把握する仕組み」の重要性を示しています。
【根拠】
文部科学省「外国人の子供の就学状況等調査(令和7年度)」では、学齢相当の外国人の子供が17万7,726人、義務教育諸学校在籍が15万786人、外国人学校在籍が1万1,949人、不就学の可能性がある子供が9,153人とされています。調査対象は全国の市町村教育委員会1,741団体、調査基準日は2025年5月1日です。
【注意点・例外】
「不就学の可能性がある子供」は、全員が学校に通っていないと確認されたものではありません。「不就学」「就学状況把握できず」「住民基本台帳上の人数との差」を含むため、数字の読み方には注意が必要です。また、外国人の子供の就学、学年決定、日本語指導、保護者対応は、在留状況、家庭環境、本人の日本語能力、地域の支援体制により判断が分かれるため、個別事情により専門家や自治体への確認が必要です。
【出典】
文部科学省「外国人の子供の就学状況等調査(令和7年度)」の結果について
文部科学省「令和7年度 外国人の子供の就学状況等調査結果」
文部科学省「外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等に関する指針」
参考情報:リセマム ReSeed「外国人の子供17.7万人で過去最多…43%の自治体で10人以上在籍」
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