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TOP > コラム > 技能実習から育成就労へ 外国人材に選ばれる企業の条件とは

技能実習から育成就労へ 外国人材に選ばれる企業の条件とは

2026.06.08
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外国人材の「住まい」が、企業選びの条件になる時代へ

福井県内で、外国人技能実習生の住環境を整備する動きが報じられました。

報道によれば、福井県内で働く外国人技能実習生は2025年10月時点で5,448人。コロナ禍で減少傾向だった2022年と比べ、1,500人以上増加しているとのことです。

今回紹介されていたのは、福井県民生協が外国人材専用の住居を整備し、プライベートを確保できる個室を用意したという事例です。

これまで6畳の賃貸住宅を2人でシェアしていた実習生にとって、家族との電話や休息の時間をどう確保するかは、かなり切実な問題だったはずです。

行政書士として外国人雇用の相談を受けていると、企業側はどうしても「在留資格が取れるか」「人が来るか」「何年働けるか」に意識が向きがちです。

もちろん、それは大切です。ただ、これからの時代はそれだけでは足りません。外国人材から見て、「この会社で働き続けたい」と思える環境があるかどうかが、より重要になっていきます。

育成就労制度で何が変わるのか

現在の技能実習制度は、制度上は日本の技能等を開発途上地域等へ移転する「人づくり」への協力を目的としてきました。

一方で、育成就労制度は、技能実習制度を発展的に解消し、人材育成と人材確保を目的とする制度として、令和9年、つまり2027年4月から施行される予定です。

ここで企業が特に意識すべきなのが、一定の要件のもとで本人意向による転籍が認められる点です。出入国在留管理庁のQ&Aでも、育成就労制度および特定技能制度の適正化等の施行日は令和9年4月1日とされています。

技能実習制度では、実習先を変えることが制度上かなり制限されていました。そのため、受入企業にとっては「来てもらえば、原則として一定期間は働いてもらえる」という感覚があったかもしれません。しかし、育成就労では、制度の考え方が変わります。

外国人材にとって、職場や生活環境に大きな不満があれば、将来的に別の受入先を選ぶ余地が出てくるわけです。

これは、企業にとって厳しい変化です。ただし、見方を変えれば、きちんとした職場づくりをしている企業に人材が集まりやすくなる制度でもあります。

住環境整備は「親切」ではなく「定着対策」

今回の報道で印象的だったのは、住まいの改善が単なる福利厚生ではなく、人材確保の戦略として位置づけられている点です。

外国人材は、日本に来て仕事だけをしているわけではありません。慣れない言葉、気候、食事、生活ルール、家族との距離。そうしたものを抱えながら働いています。

仕事が終わったあとに落ち着ける場所があるか。母国の家族と気兼ねなく電話できるか。体調が悪いときに休める空間があるか。こうした生活の土台は、職場でのパフォーマンスにも直結します。

実務上も、宿泊施設については「適切な宿泊施設」を確保することが求められています。

たとえば技能実習に関する資料では、本人のみが利用する個室として4.5㎡以上を確保することや、共有寮であっても本人のみが利用できる居室の確保が必要とされる場面が示されています。

もちろん、すべての企業がすぐに新築の寮やシェアハウスを整備できるわけではありません。そこまでは難しい企業も多いでしょう。ただ、最低限の基準を満たすだけでよい、という発想では、今後は人材確保で不利になる可能性があります。

企業が見直したいポイント

まず確認したいのは、部屋の広さ、人数、収納、冷暖房、浴室・トイレ、通勤手段、インターネット環境です。特に若い外国人材にとって、母国の家族と連絡を取れる通信環境は生活インフラに近いものです。

次に、寮費や水道光熱費の控除が適正かどうか。外国人本人が理解できる言語で説明されているかも重要です。住まいの提供がある場合でも、費用負担が不透明だと、不信感につながります。

そして、生活上の相談窓口です。部屋の不具合、近隣トラブル、体調不良、ホームシック。こうした小さな問題を放置すると、退職や転籍希望につながることがあります。

外国人材に「選ばれる企業」になるために

育成就労制度への移行は、受入企業にとって負担増と見られがちです。実際、監理支援機関、受入計画、日本語学習、転籍対応など、実務上の管理はこれまで以上に丁寧さが求められるでしょう。

ただ、私はこの変化を、悪いことばかりとは見ていません。むしろ、外国人材を「安く長く働いてくれる人」としてではなく、地域産業を支える生活者・労働者として受け入れる方向に、制度が少しずつ現実へ近づいているとも言えます。

人材獲得競争という言葉を聞くと、賃金だけの競争のように感じるかもしれません。しかし、実際にはそれだけではありません。

職場の雰囲気、相談しやすさ、日本語学習への配慮、住まい、休日、宗教・食文化への理解。そうした要素が積み重なって、「この会社にいたい」という気持ちになります。

企業が今からできることは、特別なことばかりではありません。外国人材が生活する部屋を実際に見に行く。困っていることを母国語ややさしい日本語で聞く。

寮費の内訳を説明する。誕生日や母国の祝日に少し気を配る。そうした小さな積み重ねが、育成就労時代の受入体制の基礎になります。

制度変更前の今こそ、受入体制の棚卸しを

2027年4月の制度移行まで、時間があるようで、実務上はそれほど余裕はありません。

住環境の整備、社内規程の見直し、監理団体・登録支援機関との連携、費用負担の説明資料、外国人本人へのオリエンテーション。どれも一日で整うものではないからです。

今回の福井県内の事例は、地方企業が外国人材をどう迎えるかを考えるうえで、非常に示唆的です。人手不足だから外国人に来てもらう。その発想だけでは、これからは通用しにくくなります。

外国人材から見ても、企業は選ぶ対象になります。制度が変わる前に、企業側の意識も変わる必要があります。

在留資格申請や外国人雇用の判断は、制度の条文だけでなく、実際の活動内容、雇用管理、生活支援の状況によって結論が変わることがあります。

育成就労への移行を見据えて受入体制を見直したい場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

  1. 記事末尾の整理

【結論】
育成就労制度への移行により、外国人材の受入れは「来てもらう」段階から「選ばれ、定着してもらう」段階へ移ります。住環境の整備は単なる福利厚生ではなく、人材確保・離職防止・適正な受入体制づくりの重要な要素です。

【根拠】
技能実習制度は、技能等の移転による国際貢献を目的としてきた制度です。育成就労制度は、技能実習制度を発展的に解消し、人材育成と人材確保を目的とする制度として、2027年4月から施行予定です。
宿泊施設については、適切な宿泊施設の確保や、本人のみが利用できる居室の確保など、実務上注意すべき基準があります。

【注意点・例外】
育成就労制度の詳細運用は、分野別の運用方針や今後の実務運用により確認が必要です。転籍の可否、時期、要件、監理支援機関の関与などは個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。住環境についても、単に部屋を用意すれば足りるのではなく、費用負担、説明方法、生活相談体制まで含めて確認する必要があります。

【出典】
一次情報:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
一次情報:厚生労働省「外国人育成就労制度について」
一次情報:技能実習制度運用要領、外国人技能実習機構関連資料
参考情報:福井放送・日テレNEWS「実習先としての魅力アップへ快適な住環境を整備 外国人技能実習生の人材獲得競争が来年度からいっそう激しく」(2026年5月27日)

 

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