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TOP > コラム > APU「適正校」除外から考える 留学生受入れ機関に求められる在籍管理とは

APU「適正校」除外から考える 留学生受入れ機関に求められる在籍管理とは

2026.05.02
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APU「適正校」除外から考える 留学生受入れ機関に求められるもの

大分県別府市の立命館アジア太平洋大学、いわゆるAPUが、出入国在留管理庁による「適正校」に選定されなかった件について、大学側が留学生への支援策を発表しました。

報道によれば、事務処理ミスにより適正校から除外され、その影響で留学生約20人の入国が遅れているとのことです。

大学は、入学辞退者に対する授業料・入寮費等の返還、入学者へのオンライン授業の継続、在留期間更新の回数増加に伴う手数料の支援などを行うと発表しています。

APU自身も、2026年4月23日付の公表文で、入国までの期間はオンライン授業を継続し、入学辞退者には納付済み授業料や入学金・入寮費等を返還すること、適正校非選定により在留期間更新回数が増える学生には追加の更新手数料について財政支援を実施するとしています。

このニュースを見たとき、私は「大学でもこういうことが起きるのか」と感じました。

もちろん、APUは国際大学として多くの留学生を受け入れてきた実績のある大学です。今回の件だけで、大学全体の教育や留学生支援を否定する話ではありません。実際、APUは2026年3月28日付の公表文で、今回の非選定理由について、留学生数に関するデータ提出を失念したためであり、問題在籍率やその他の在籍管理については基準を満たしていると説明しています。

ただし、入管実務の目線で見ると、これは単なる「事務ミス」では終わりません。

なぜなら、そのミスの影響を受けるのは、学校だけではなく、実際に日本で学ぼうとしている留学生本人だからです。

適正校とは何か

適正校とは、在留資格「留学」で外国人留学生を受け入れている教育機関のうち、留学生の在籍管理や法定届出などが適正に行われていると認められた学校を、出入国在留管理庁が選定する制度です。

APUの公表文でも、適正校は、在籍管理、つまり出席・成績・在留状況・資格外活動などが適正に行われ、かつ法定届出書類が提出されていると認められた学校と説明されています。

適正校に選定されると、在留資格認定証明書交付申請などで提出書類の一部が簡略化されます。

適正校とは「良い学校ランキング」のようなものではありません。入管から見て、留学生の受入れと管理を信頼できる学校かどうか。その信頼に基づいて、手続きの一部を簡略化する仕組みです。

逆に言えば、その信頼の前提が崩れると、簡略化のメリットは使えなくなります。すると、在留資格認定証明書の申請や在留期間更新の場面で、確認される資料が増えたり、審査に時間がかかったりする可能性が出てきます。

今回のAPUの件では、入国が遅れた学生へのオンライン授業提供や、更新回数増加に伴う手数料支援まで発表されています。これは、適正校から外れることが、学生生活の開始時期や経済的負担にまで波及することを示しています。

届出義務は「形式」ではない

今回のポイントは、法定届出の重要性です。

APUの公表文では、適正校の選定基準として、問題在籍率、法定届出の適切な履行、その他の在籍管理が挙げられています。そのうち今回問題となったのは、入管法第19条の17に基づく所属機関による届出、具体的には留学生数に関するデータ提出の失念とされています。

届出というと、どうしても「書類を出すだけ」と思われがちです。

でも、入管実務ではそうではありません。届出は、外国人がどこに所属し、どのような状況で在留しているのかを確認するための基本情報です。留学生であれば、入学したのか、退学したのか、除籍されたのか、所在不明になっていないか。そうした情報が制度全体の土台になります。

土台が抜けると、上に乗っている手続きも不安定になります。

文部科学省も、大学等に対して、留学生の学業成績や資格外活動の状況を的確に把握すること、長期欠席者や学業成績が良好でない者への連絡・指導を徹底すること、退学等の場合には帰国や進学・就職の指導を行い、不法滞在にならないよう適切に対応することを求めています。

また、退学・除籍・所在不明となった留学生について、各大学等は文部科学省への定期報告も求められています。

このように、留学生の受入れは、入学許可を出して終わりではありません。入国前、在学中、卒業後・退学後まで、一定の管理責任が続きます。

学生本人にとっては、かなり重い影響になる

学校側から見ると、今回のような問題は「次回から気をつける」「内部体制を見直す」という話かもしれません。

しかし、留学生本人から見ると、もっと切実です。

入国が遅れれば、予定していた生活が崩れます。航空券、寮、アルバイト、家族の送金計画、母国での退職や卒業後の準備。ひとつひとつは小さく見えても、本人にとっては人生の大きな予定です。

しかも、在留手続きは、本人の努力だけではどうにもならない部分があります。

学校が適正校かどうか。学校が届出をきちんと行っているか。学校の在籍管理がどう評価されているか。これらは留学生本人には見えにくい部分です。

それでも、その結果は本人の在留手続きに跳ね返ってきます。

ここが、在留資格実務の難しいところです。

本人がまじめに勉強していても、受入れ機関側の管理や届出に不備があれば、手続きが重くなる。今回の件は、その構造をかなりわかりやすく示した事例だと思います。

専門学校・日本語学校も他人事ではない

今回の件は大学の話ですが、専門学校や日本語学校にとっても他人事ではありません。

むしろ、日々の出席管理、成績管理、資格外活動の確認、退学・除籍・所在不明者への対応という意味では、専門学校や日本語学校の方がより実務的な負担を感じているかもしれません。

特に最近は、留学生の資格外活動、いわゆるアルバイトの時間超過や、実態として就労目的ではないかという点について、入管側の確認が厳しくなっている印象があります。

文部科学省の通知でも、資格外活動許可の要件、たとえば週28時間等が留学生に十分理解されておらず、在留期間更新許可申請が不許可となる事例があることに注意を促しています。

学校としては、「学生が勝手にアルバイトをしていたので知りませんでした」では通りにくくなっています。

もちろん、すべての学生の私生活を学校が完全に把握することは現実的ではありません。そこまで求めるのは無理があります。

ただ、少なくとも、定期的な面談、アルバイト先の確認、資格外活動許可の有無、勤務時間の自己申告、通帳や給与明細の確認が必要になる場面は増えていくでしょう。

実務上は、「やっていたけれど記録がない」が一番危ないです。

指導した。確認した。注意喚起した。本人から申告を受けた。問題があれば改善を求めた。

これらを記録として残しておくことが、学校を守り、学生を守ることにつながります。

適正校は「一度取れば安心」ではない

適正校は、一度選定されれば永続する資格ではありません。毎年の運用、届出、在籍管理の積み重ねによって評価されます。

ここが重要です。

学校のブランドや過去の実績だけでは足りません。むしろ、留学生を多く受け入れている学校ほど、管理すべき情報量は増えます。担当者が異動する、部署間で情報が分断される、システム入力と入管・文科省への届出が連動していない。そうした小さなズレが、ある日大きな問題になります。

今回のAPUの件から学ぶべきことは、ミスをした大学を責めることではないと思います。

どれだけ大きな教育機関でも、在留管理の仕組みが人に依存していれば、同じようなことは起こり得ます。

だからこそ、属人的な管理ではなく、チェックリスト、期限管理、複数人確認、届出後の控え保存、年度ごとの棚卸しが必要です。

行政書士として学校関係者と話していると、現場の担当者が本当に多くの業務を抱えていることを感じます。学生対応、出席管理、成績、生活相談、企業対応、入管手続き。そこに制度改正が重なると、現場はかなり疲弊します。

それでも、在留管理は後回しにできません。

なぜなら、後回しにした結果が、学生本人の入国遅れや更新手続きの負担として現れるからです。

今回の件をどう受け止めるべきか

今回のAPUの対応を見る限り、大学として学生への支援を行おうとしている姿勢は見えます。オンライン授業の継続、入学辞退者への返還、更新手数料の支援などは、現実的な対応だと思います。

ただ、それでも失われた時間や不安までは、簡単には戻りません。

留学生にとって、日本に来るという決断は軽いものではありません。本人だけでなく、家族も含めて準備をしています。そこに「学校側の事務手続き上の不備で入国が遅れる」という事態が起きれば、信頼への影響は避けられません。

これから留学生を受け入れる教育機関は、適正校を「便利な簡略化制度」として見るのではなく、入管からの信頼を預かっている状態だと考えた方がよいと思います。

信頼は、書類一枚で得られるものではありません。

日々の出席確認、成績確認、生活状況の把握、資格外活動の確認、必要な届出。地味な作業の積み重ねです。

そして、その地味な作業こそが、留学生の在留を支えています。

【結論】

APUの適正校除外問題は、単なる大学の事務処理ミスではなく、留学生受入れ機関に求められる在籍管理・届出義務の重要性を示す事例です。適正校から外れると、在留手続きの簡略化が受けにくくなり、入国遅れや在留期間更新の負担増加など、学生本人に直接影響が及びます。

【根拠】

APUは、事務手続き上の不備により適正校に選定されなかったことを公表し、2026年4月入学者・入学辞退者・在留期間更新時期を迎える在学生への支援策を発表しています。
また、APUは、適正校の選定基準として、問題在籍率、入管法第19条の17に基づく法定届出の適切な履行、出席・学業・資格外活動等の管理を挙げ、今回の非選定理由は留学生数に関するデータ提出の失念であると説明しています。
文部科学省も、大学等に対して、留学生の学業成績・資格外活動の状況把握、長期欠席者等への指導、退学・除籍・所在不明者の定期報告を求めています。

【注意点・例外】

今回の件について、APUは「問題在籍率」や「その他の在籍管理」については基準を満たしており、留学生の在籍管理に関して問題は生じていないと説明しています。そのため、今回の事案をもって、APUの教育内容や留学生全体の管理体制を一律に否定することは適切ではありません。
一方で、法定届出の不備だけでも、適正校選定に影響し、学生本人に不利益が生じ得る点は重く受け止める必要があります。個別の学校がどのような届出義務を負うか、どの届出が未了なのかは、具体的事情により異なるため、専門家に確認が必要です。

【出典】

出入国在留管理庁「教育機関の選定について」
立命館アジア太平洋大学「出入国在留管理庁における『適正校』の非選定について」2026年3月28日
立命館アジア太平洋大学「『適正校』非選定に関わる2026年4月入学者・入学辞退者および2026年度に在留期間更新時期を迎える在学生に対する支援について」2026年4月23日
文部科学省「外国人留学生の適切な受入れ及び在籍管理の徹底等について」

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