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TOP > コラム > 永住は権利ではない?行政書士が解説する「永住許可」の正しい意味

永住は権利ではない?行政書士が解説する「永住許可」の正しい意味

2026.05.20
コラム外国人支援永住ビザ
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「永住権」ではなく「永住許可」――言葉の違いは小さくない

2026年5月19日の閣議後会見で、小野田紀美経済安全保障担当大臣が、記者の「永住権」という表現に対し、「我が国は永住権ではありません。永住は権利ではないんです。永住許可です」と指摘したことが報じられました。

一見すると、単なる言葉の訂正のようにも見えます。

しかし、在留資格実務に関わる立場から見ると、この指摘はかなり重要です。

なぜなら、日本の制度上、外国人が日本に永住することは、当然に認められる「権利」ではなく、法務大臣が個別に判断して認める「許可」だからです。

出入国在留管理庁の手続名も「永住許可」です。永住許可に関するガイドラインでも、素行善良要件、独立生計要件、国益適合要件などが示されており、申請すれば当然に認められるものではありません。

実務上は、一般の方にわかりやすく説明するために「永住権」という言葉が使われることがあります。

私たち行政書士も、相談者に伝わりやすいように「いわゆる永住権」と表現する場面はあります。

ただし、正確には「永住許可」です。

この違いを曖昧にしたまま話を進めると、「一定期間日本に住めば当然にもらえるもの」「一度取得すれば絶対に失われないもの」という誤解につながりやすいのです。

永住許可は「長く住んだご褒美」ではない

永住許可の相談を受けていると、申請者の方からよく聞かれるのは、「もう10年住んでいます」「年収は足りています」「税金も払っています」という話です。

もちろん、これらは大切です。

原則として、永住許可では引き続き10年以上日本に在留していることが基本的な要件とされています。また、税金や年金、健康保険料などの公的義務をきちんと履行していることも非常に重要です。

しかし、永住許可は「年数」「年収」「納税」だけで判断される手続ではありません。

その人がこれまで日本でどのように生活してきたのか。現在の在留資格に合った活動をしているのか。今後も安定して日本で生活していけるのか。こうした事情を総合的に見られます。

いわば、永住許可申請は、これまでの在留状況の総点検です。

2026年2月のガイドライン改訂で何が変わったのか

今回の小野田大臣の発言を考えるうえで、2026年2月24日に改訂された「永住許可に関するガイドライン」も見逃せません。

この改訂では、現に有している在留資格について、法務省令で定める上陸許可基準等に適合していることが明記されました。

これは、実務上かなり大きな意味を持ちます。

たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で在留している人が、実際には単純作業や現業中心の仕事をしている場合。あるいは、「経営・管理」の在留資格で在留している人が、実際には経営実態や事業継続性を十分に説明できない場合。

このようなケースでは、永住許可申請の前に、そもそも現在の在留資格の活動実態が適正なのかという問題が出てきます。

永住申請の書類だけを整えればよい、という時代ではありません。

日々の就労内容、会社での役割、社会保険・税金の履行状況、家族構成、収入の安定性。そうした一つひとつが、後から永住申請の場面で問われることになります。

「ライフハック」のような永住申請は通用しにくくなる

報道によれば、小野田大臣は、永住許可や高度専門職制度に関する質問に対し、「ライフハックのようなことはさせない」という趣旨の発言もしています。

この言葉は少し強い表現ですが、制度運用の方向性としては理解できます。

高度専門職のポイント制や、日本版高度外国人材グリーンカード制度は、本来、日本に必要な高度人材を受け入れるための制度です。

一定の学歴、職歴、年収、研究実績などを評価し、優秀な外国人材の受入れを促進する仕組みです。

一方で、制度の抜け道を探すような形で、「どのルートが一番早く永住に近づけるか」だけが独り歩きすると、本来の制度趣旨から離れてしまいます。

行政書士としても、ここは慎重に見ています。

永住許可は、単なる攻略対象ではありません。日本で生活し、働き、税金や社会保険料を納め、地域社会の一員として安定して暮らしてきた実績を評価する手続です。

制度を利用すること自体が悪いわけではありません。問題は、実態が制度の趣旨に合っているかどうかです。

外国人を不安にさせるだけの議論にしてはいけない

一方で、「永住は権利ではない」という言葉だけが強調されすぎると、まじめに日本で暮らしている外国人に過度な不安を与えるおそれがあります。

現場では、永住許可を目指している外国人の多くが、毎日きちんと働き、家族を支え、地域で生活しています。企業にとっても、長く働いてくれる外国人材は大切な存在です。

だからこそ、制度の適正化と、外国人への不信感をあおることは分けて考える必要があります。

行政書士として伝えたいのは、「厳しくなるから怖い」という話ではありません。

正確な制度理解を持ち、早い段階から在留状況を整えておくことが大切だということです。

永住許可を目指すのであれば、申請直前だけ頑張るのでは遅い場合があります。税金、年金、健康保険、交通違反、転職時の届出、在留資格に合った仕事内容。これらは日々の積み重ねです。

企業側も「本人任せ」にしない視点が必要

外国人本人だけでなく、雇用している企業側にも注意が必要です。

特に、技術・人文知識・国際業務、高度専門職、特定技能、経営・管理などの在留資格では、本人の活動内容と会社側の受入れ体制が密接に関係します。

会社が「とりあえず働いてくれればよい」と考え、在留資格に合わない業務をさせていた場合、本人の更新申請や永住申請に影響する可能性があります。

本人にとっては、会社の指示どおりに働いていただけかもしれません。

それでも、入管実務では「実際にどのような活動をしていたのか」が問われます。外国人雇用は、採用して終わりではありません。採用後の配置、業務内容、雇用条件、社会保険、届出まで含めて管理する必要があります。

まとめ――「永住許可」という言葉から制度の本質を見る

今回の小野田大臣の発言は、単なる言葉尻の問題ではありません。

「永住権」ではなく「永住許可」。

この言葉の違いには、日本の在留制度の基本的な考え方が表れています。

永住は、当然に与えられる権利ではなく、個別事情を踏まえて認められる許可です。ただし、それは外国人を排除するための言葉ではありません。

日本でまじめに暮らし、働き、義務を果たしている外国人が、安心して将来を考えられる制度であるべきです。そのためにも、制度を利用する側、雇用する側、支援する側が、正確な言葉と正確な理解を持つことが大切です。

在留資格申請や永住許可申請は、書類を出す瞬間だけで決まるものではありません。日々の在留状況の積み重ねが、将来の結果につながります。

永住許可を検討している方、外国人を雇用している企業の方は、早い段階で現在の在留状況や雇用管理に問題がないか確認しておくことをおすすめします。

  1. 記事末尾の整理

【結論】

「永住権」という表現は一般的には使われていますが、日本の制度上、正確には「永住許可」です。永住は当然に取得できる権利ではなく、法務大臣が個別事情を踏まえて判断する許可です。今後は、年数や収入だけでなく、現在の在留資格に合った活動実態や公的義務の履行状況がより重視される流れにあります。

【根拠】

出入国在留管理庁は、手続名として「永住許可」を用いています。永住許可に関するガイドラインでは、素行善良要件、独立生計要件、国益適合要件が示されています。2026年2月24日改訂のガイドラインでは、現に有している在留資格について上陸許可基準等に適合していることが明記されています。

また、政府の「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」では、永住許可基準について、独立生計要件や国益要件の見直し等を検討する方針が示されています。

【注意点・例外】

一般向けの説明では「永住権」という言葉が使われることがありますが、申請実務や制度説明では「永住許可」と表現するのが正確です。

永住許可の可否は、在留年数、収入、納税状況、社会保険、交通違反、家族状況、現在の在留資格の活動内容など、個別事情により判断が分かれます。専門家への確認が必要です。

高度専門職や日本版高度外国人材グリーンカード制度を利用する場合でも、形式的にポイントを満たすだけでなく、活動実態が制度趣旨に合っているかが重要です。

【出典】

出入国在留管理庁「永住許可」

出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン 令和8年2月24日改訂」

政府「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」

J-CASTニュース「小野田紀美大臣、『言葉を気をつけて』と質問者に…閣議後会見でズバリ忠告『誤解をされますので』」2026年5月19日

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