短期滞在の在留期間が「より細かく」指定される可能性があります
外国人の方が観光、親族訪問、短期の商談、会議参加などで日本に来るとき、よく使われる在留資格が「短期滞在」です。
実務上も、「親を日本に呼びたい」「海外の取引先を商談で招へいしたい」「出産や病気の家族を一時的にサポートしたい」といった相談で、短期滞在は非常によく登場します。
今回確認された省令案では、この短期滞在の在留期間について、法務大臣が個々の外国人ごとに、90日を超えない範囲で日単位の期間を指定できるようにする改正が予定されています。
公布予定は令和8年9月上旬、施行日は公布の日とされています。
つまり、現時点ではまだ「案」の段階であり、実際の運用は公布後の正式な内容を確認する必要があります。
この記事のポイント
・短期滞在の在留期間を90日以内で日単位指定できるようにする省令案が出ている
・「90日が取りやすくなる」という単純な話ではない
・滞在目的、必要日数、帰国予定をより具体的に説明する重要性が高まる可能性がある
現行制度では、短期滞在の期間は比較的定型的だった

短期滞在は、名前のとおり、日本に短期間滞在するための在留資格です。
対象となる活動は、観光、保養、スポーツ、親族訪問、見学、講習、会合への参加、業務連絡などです。企業実務でいえば、海外本社や取引先の担当者が日本に来て、会議、商談、工場見学、契約前の打合せなどを行うケースが典型です。
一方で、短期滞在では原則として報酬を受ける就労活動はできません。ここは非常に誤解が多いところです。
「短期間だから働いてもよい」
「日本法人の手伝いを少しするだけだから問題ない」
「海外法人から給与が出ているから大丈夫」
このように考えられることがありますが、実際には活動内容の中身を慎重に見る必要があります。単なる会議参加や業務連絡なのか、日本国内で実質的に労務提供をしているのか。この線引きは、短期滞在の相談で最も神経を使う部分の一つです。
今回の省令案で何が変わるのか

今回の省令案のポイントは、短期滞在の在留期間について、法務大臣が個々の外国人ごとに90日を超えない範囲で日単位の期間を指定できるようにする点です。
これまで短期滞在は、実務上「90日」「30日」「15日」といった期間を前提に説明されることが多くありました。
もちろん、現行制度上も15日以内の日単位の期間という考え方はありますが、今回の改正案は、90日以内の範囲でより柔軟に日数指定できる形に整理するものと読めます。
たとえば、滞在予定が22日であれば22日、45日であれば45日というように、滞在目的や予定に応じた期間指定が行われる可能性があります。
ただし、ここで注意したいのは、これは「誰でも90日まで自由に滞在できる」という意味ではないことです。むしろ、個々の事情に合わせて必要な期間だけが指定される方向に進む可能性があります。
行政書士の実務感覚でいうと、これは申請書類や説明資料の作り方に影響します。
「とりあえず90日ほしい」ではなく、「なぜその日数が必要なのか」「いつ入国し、何をして、いつ出国するのか」を、より具体的に整理する必要が出てくるかもしれません。
申請者・家族・企業が注意すべきこと

1. 滞在予定表の重要性が高まる可能性
日単位で在留期間が指定されるようになると、滞在予定の具体性がこれまで以上に重要になる可能性があります。
親族訪問であれば、誰を訪問するのか、どこに滞在するのか、生活費は誰が負担するのか。商談や会議であれば、訪問先、打合せ日程、参加者、帰国予定日などを整理しておく必要があります。
単に「観光のため」「家族に会うため」だけでは、必要日数の説明として弱い場面も出てくるかもしれません。
2. 90日滞在が当然とは考えない
短期滞在の相談では、「最大90日だから90日で申請したい」という希望をよく聞きます。
気持ちはわかります。航空券の調整、家族の事情、体調、出産予定、介護、観光計画など、余裕を持たせたい事情は多いものです。
ただ、短期滞在はあくまで「短期間」の滞在です。必要性を超えた長い滞在と見られると、審査上、滞在目的の合理性や帰国意思が確認される可能性があります。
今回の改正案は、必要な期間を柔軟に認める方向とも見えますが、同時に、必要な期間に絞って指定する運用につながる可能性もあります。ここは断定できませんが、実務上は慎重に見ておくべきです。
3. 短期滞在の更新は、引き続き例外的に考える
短期滞在で入国したあと、「もう少し日本にいたい」となった場合、在留期間更新許可申請を考えることがあります。
しかし、短期滞在の更新は原則として簡単に認められるものではありません。人道上の真にやむを得ない事情、またはこれに相当する特別な事情がある場合が中心です。たとえば病気治療などが典型例として考えられます。
今回の省令案は、最初に指定される在留期間の柔軟化に関するものです。短期滞在の更新が広く認められるようになる、という改正ではありません。
ここを混同すると、実務上かなり危険です。
企業の短期出張・商談対応にも影響する可能性

企業側にとっても、今回の改正案は無関係ではありません。
海外の取引先、海外親会社、海外子会社の担当者を日本に呼ぶ場合、短期滞在で足りるのか、それとも就労系の在留資格が必要なのかを確認する必要があります。
たとえば、会議参加、契約交渉、視察、業務連絡であれば短期滞在の範囲に収まることがあります。
一方で、日本国内の事業所で継続的に作業する、顧客対応を行う、現場で技術作業をする、日本法人の指揮命令下で実務を担当するような場合は、短期滞在では整理しきれない可能性があります。
今回、在留期間がより細かく指定されるようになると、企業側も「来日目的」と「滞在日数」の説明を整える必要が出てきます。招へい理由書、滞在予定表、会社間の関係資料、出張命令書などの整合性が大切になります。
入管実務では、書類一つひとつの出来よりも、全体として話が自然につながっているかが見られます。滞在目的、日程、費用負担、帰国予定。この4つがきれいにつながっていると、説明の説得力は大きく変わります。
実務上の受け止め

今回の省令案は、一見すると小さな改正に見えます。
しかし、短期滞在は利用件数が多く、外国人本人、家族、企業、学校、医療機関など、さまざまな場面に関係します。そのため、在留期間の指定方法が少し変わるだけでも、実務への影響は意外に大きいと感じます。
特に、これまで「90日」「30日」「15日」という大きな枠で考えていたケースでは、今後は「本当にその日数が必要か」という視点がより前面に出るかもしれません。
制度が柔軟になるとき、利用者にとって便利になる面があります。一方で、柔軟になるということは、個別判断の余地が広がるということでもあります。
申請する側としては、制度の柔軟化を期待するだけでなく、自分の事情を具体的に、誠実に説明する準備が必要です。
短期滞在は「簡単なビザ」と思われがちですが、実際には、目的外活動や実質的な長期滞在との境界が問題になりやすい在留資格です。だからこそ、短期だからこそ、最初の設計が大切です。
まとめ

短期滞在の在留期間について、90日以内で日単位の期間を指定できるようにする省令案が示されています。
これは、滞在目的に応じた柔軟な期間設定を可能にする改正と考えられます。ただし、「90日まで自由に滞在できるようになる」という意味ではありません。
むしろ、滞在目的、必要日数、費用負担、帰国予定を具体的に説明する重要性が高まる可能性があります。
親族訪問、短期商談、出産・看病のための来日、海外取引先の招へいなどでは、来日前の段階で日程と理由を整理しておくことが重要です。
短期滞在の判断は、国籍、渡航目的、過去の来日歴、滞在予定、招へい人や企業の事情によって結論が変わることがあります。判断に迷う場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
- 記事末尾の整理
【結論】
短期滞在の在留期間について、90日以内で日単位指定を可能にする省令案が示されています。実務上は、単に滞在期間が柔軟になるというだけでなく、滞在目的と必要日数の説明がより重要になる可能性があります。
【根拠】
出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令案の概要
出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令案
出入国在留管理庁「在留資格『短期滞在』」掲載情報
【注意点・例外】
今回の内容は省令案に基づくものであり、正式な公布内容や運用通達、入管窓口での取扱いは今後確認が必要です。
短期滞在の在留期間が柔軟化されても、就労活動が認められるわけではありません。
短期滞在の更新は、原則として人道上の真にやむを得ない事情またはこれに相当する特別な事情がある場合に限られる点に注意が必要です。
個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
【出典】
一次情報
出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令案の概要
出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令案
出入国在留管理庁「在留資格『短期滞在』」
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