第二次出入国在留管理基本計画案から見える、これからの在留審査
2026年6月30日、e-Govで「第二次出入国在留管理基本計画(案)」に係る意見募集が公示されました。意見募集期間は2026年7月10日0時までとされています。現時点ではあくまで「案」であり、最終的な内容は今後変わる可能性があります。(パブリックコメント)
ただ、この計画案を読むと、今後の入管実務の方向性はかなりはっきり見えてきます。大きな流れは、外国人の受入れを止めるというより、「受け入れる以上、活動実態・納税・社会保険・所属機関の管理まで、より正確に把握する」という方向です。
行政書士として現場を見ていると、これまでの在留審査は、申請時に提出された書類を中心に判断する場面が多くありました。もちろん実態調査や追加資料の提出はありましたが、制度全体としては、まだ「申請書類ベース」の色合いが強かったと思います。
これからは少し違います。
計画案では、JESTA、在留管理DX、マイナンバーを活用した情報連携、事業所への実態調査、留学生の資格外活動の把握、永住者の公租公課履行状況などが並んでいます。
つまり、在留資格は「許可を取って終わり」ではなく、「許可後も活動実態が継続的に見られる」制度へ近づいていくと考えられます。
背景にあるのは、外国人の増加と制度への不信感

計画案では、2025年の外国人入国者数が約4,243万人、2025年末時点の在留外国人数が約413万人に達し、いずれも過去最高を記録したとされています。また、2026年1月1日現在の不法残留者数は約6.8万人とされています。
この数字だけを見ると、入管行政が抱える負荷は相当大きくなっています。
観光客は増える。在留外国人も増える。企業は人手不足で外国人材を必要としている。
一方で、不法滞在、不法就労、偽装滞在、留学生の資格外活動違反、経営・管理の事業実態の乏しい案件なども問題視されている。
このような状況で、国が取ろうとしている方向は、「受入れ」と「管理」をセットにすることです。ここを読み間違えると、企業も外国人本人も対応を誤ります。
単に外国人に厳しくなる、という表現だけでは足りません。
制度を守って働き、納税し、地域で生活している外国人にとっては、むしろ制度の透明性が高まる面もあります。
一方で、書類上だけ整えて実態が伴わない申請、現場作業を技人国で説明するような申請、アルバイト時間の管理を学校任せにしている留学生受入れなどは、かなり厳しく見られていくでしょう。
JESTA導入で、短期滞在も「事前チェック」の時代へ

今回の計画案で目立つものの一つが、電子渡航認証制度、いわゆるJESTAです。
JESTAは、査証免除対象者などについて、渡航前に渡航目的や滞在先などの情報を提供させ、事前にチェックを行う制度とされています。
令和8年入管法等改正では、JESTAの創設や在留資格変更許可等に係る手数料上限額の引上げが盛り込まれ、2026年5月29日に成立、同年6月5日に公布されています。(法務省)
実務上の意味は大きいです。短期滞在は、これまで比較的「入国時の審査」の印象が強かった分野です。
しかしJESTAが導入されると、入国前の段階で情報を把握し、リスクを判断する流れになります。
観光、親族訪問、商用、短期出張などの目的で来日する外国人についても、過去の滞在状況、出国状況、滞在先の説明などがより重要になる可能性があります。
特に、短期滞在を繰り返している方、親族訪問と生活実態の境界が曖昧な方、日本国内で事実上の就労に近い活動をしている方は、今後さらに注意が必要です。
在留管理DXで、税金・社会保険・所得情報との距離が近くなる

計画案では、在留管理DXの推進も強く打ち出されています。出入国在留管理庁が関係機関から国民健康保険料、国民年金保険料、地方税、医療保険資格情報などの提供を受ける仕組みを検討し、在留審査や未納がある場合の納付勧奨に活用する方向性が示されています。
ここは、企業や外国人本人にとって非常に重要です。
これまでも永住申請では、納税証明書、課税証明書、年金記録、健康保険料の納付状況などが確認されてきました。
ただ、今後は申請人が提出する資料だけでなく、行政機関間の情報連携によって、より直接的に状況を把握される可能性があります。
つまり、「提出しなければ分からないだろう」という感覚は通用しにくくなります。転職、退職、扶養、社会保険加入、住民税の普通徴収、国民健康保険料の滞納など、これまで何となく後回しにされていた事項が、在留審査の中でより見えやすくなるということです。
技人国・留学・経営管理は、実態確認がさらに重くなる

計画案では、在留資格「技術・人文知識・国際業務」について、専門的な技術や知識を要しない現場業務等に従事している事案が確認されていると指摘されています。
また、留学生については、資格外活動許可の週28時間制限を超えるアルバイトなどを踏まえ、教育機関と連携した実態把握を進める方向が示されています。
これは、現場感覚とも一致します。企業側は「本人が外国語を話せるから」「将来は管理職にするつもりだから」と説明することがあります。しかし、実際の業務が単純作業中心であれば、技人国の活動該当性は問題になります。
留学生についても同じです。学校の在籍管理だけではなく、アルバイト先、勤務時間、所得情報まで見られる方向になれば、「本人に任せています」では済みにくくなります。
経営・管理についても、計画案では、事業実態に疑いが持たれる事案に対して実態調査等を行い、厳格な審査を実施する方針が示されています。
2025年10月の基準見直し後、形式的に資本金や事務所を整えるだけでは足りず、事業の継続性、実体性、納税状況、雇用の実態がより重視されると考えるべきです。
永住許可は「ゴール」ではなく、定着状況を見られる資格へ

永住許可制度についても、計画案ではかなり踏み込んだ記載があります。
2024年の入管法改正により、永住許可後に公租公課を適切に履行しない場合などの取消事由が追加され、今後は取消しが想定される具体的事例をガイドラインで示す方向が示されています。
さらに、一定水準以上の日本語能力や、日本の制度・ルール等を学習するプログラムの受講を永住許可の条件として検討することも記載されています。ここは今後の実務に大きく影響する可能性があります。
永住は、在留期間更新が不要になる強い資格です。その分、国としては「長く日本で生活する基盤があるか」をより丁寧に見る方向に進んでいます。
納税、年金、健康保険、日本語、地域社会での生活能力。こうした要素が、これまで以上に総合的に評価される可能性があります。
企業が今から整えるべきこと

外国人雇用企業にとって、今回の計画案は単なる政策文書ではありません。
今後の審査実務の予告編のようなものです。
まず、雇用する外国人の在留資格と実際の業務内容が一致しているかを確認する必要があります。
技人国なのに現場作業が中心になっていないか。特定技能なのに支援計画が形だけになっていないか。留学生アルバイトの勤務時間を管理できているか。ここは、後から問題が出ると企業側の信用にも影響します。
次に、社会保険、雇用保険、税務、住民票上の住所、所属機関の届出など、周辺手続を軽く見ないことです。在留審査は、もはや入管だけで完結するものではなくなりつつあります。
労務、税務、社会保険、学校管理、自治体情報がつながっていくと考えた方が安全です。
まとめ

第二次出入国在留管理基本計画案を一言でいえば、「外国人を受け入れる社会に合わせて、在留管理の解像度を上げる計画」です。
外国人材は、これからの日本社会にとって必要な存在です。
ただし、その受入れは、制度の穴や曖昧さに頼るものではなく、活動実態、生活基盤、納税、社会保険、所属機関の責任を含めて、より整った形が求められます。
在留資格申請や外国人雇用の判断は、制度の条文だけでなく、実際の活動内容や雇用管理の状況によって結論が変わることがあります。判断に迷う場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
4. 記事末尾の整理
【結論】
第二次出入国在留管理基本計画案は、外国人受入れを前提にしながらも、在留管理・情報連携・事後確認を大幅に強める方向を示しています。
企業や外国人本人は、申請書類だけでなく、実際の活動内容、納税、社会保険、勤務実態、学校管理まで整えておく必要があります。
【根拠】
出入国在留管理基本計画は、入管法第61条の9に基づき、外国人の入国・在留管理に関する施策の基本となる計画として定められるものです。今回の案は2026年6月30日にe-Govで意見募集が公示されています。
また、JESTAについては、令和8年入管法等改正により制度創設が盛り込まれ、同改正法は2026年5月29日に成立、6月5日に公布されています。
不法滞在者対策については、法務省が「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」を公表し、2026年1月1日時点で約6.8万人いる不法残留者を減少させる方針を示しています。
【注意点・例外】
本記事は2026年7月5日時点で公表されている「案」を前提にしています。今後、パブリックコメントや政府内調整を経て内容が変更される可能性があります。
また、永住許可、技人国、経営・管理、留学、特定技能などの審査影響は、個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
【出典】
第二次出入国在留管理基本計画(案)アップロード資料
e-Govパブリック・コメント「第二次出入国在留管理基本計画(案)に係る意見募集について」
出入国在留管理庁「令和8年入管法等改正について」
出入国在留管理庁「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」
—————————————————————————————————————————————-
特定技能ビザをはじめとする各種ビザ・在留資格のご相談や代行申請はホームページのお問い合わせフォームをはじめ、お電話・LINE・Facebook・Instagramからもお問い合わせが可能です。
また、当事務所のYouTubeチャンネル「ビザ新潟ちゃんねる」も更新中です。興味のある方はYouTubeもぜひのぞいてみてください。
ビザ新潟ちゃんねる
以上、新潟市のビザ専門行政書士事務所、Asocia行政書士法務事務所でした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
新潟のビザ・入管業務のことならお任せ下さい。
ビザの相談・申請代行専門
Asocia行政書士法務事務所
新潟県初の登録支援機関(19登-000085)
代表行政書士 播磨 史雄
住所:新潟市西区平島2丁目13-11 2F
℡:025-201-7514
mail:info@fumio-h-office.com
総合ホームページ:https://fumio-h-office.com/
新潟ビザ相談センター:https://visa-asocia.com/
新潟県お酒の販売許可申請代行センター:https://www.sakemenkyo.com/
一般社団法人設立専門ページ:https://niigata-syadan.com
新潟成年後見相談センター:http://www.niigata-seinenkouken.com/
LINEからの相談は『24時間365日』受け付けています。
【※ご注意】ご依頼に関する相談料は初回無料ですが、ブログ記事に内容に関するご質問やご依頼に関係ないご相談は有償となります。
対応エリア
全国対応
新潟県全域対応可能(新潟市、長岡市、三条市、柏崎市、新発田市、小千谷市、加茂市、十日町市、見附市、村上市、燕市、糸魚川市、妙高市、五泉市、上越市、阿賀野市、佐渡市、魚沼市、南魚沼市、胎内市、聖籠町、弥彦村、田上町、阿賀町、出雲崎町、湯沢町、刈羽村、関川村、粟島浦村、津南町)ビザ新潟
福島県全域対応可能(福島市、会津若松市、郡山市、いわき市、白河市、須賀川市、喜多方市、相馬市、二本松市、田村市、南相馬市、伊達市、本宮市、桑折町、国見町、川俣町、大玉村、鏡石町、天栄村、下郷町、檜枝岐村、只見町、南会津町、北塩原村、西会津町、磐梯町、猪苗代町、会津坂下町、湯川村、柳津町、三島町、金山町、昭和村、会津美里町、西郷村、泉崎村、中島村、矢吹町、棚倉町、矢祭町、塙町、鮫川村、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町、新地町、飯舘村、大玉村、天栄村、檜枝岐村、只見町、南会津町、北塩原村、西会津町、磐梯町、猪苗代町、湯川村、柳津町、三島町、金山町、昭和村、飯舘村)ビザ福島
山形県全域対応可能(山形市、米沢市、鶴岡市、酒田市、新庄市、寒河江市、上山市、村山市、長井市、天童市、東根市、尾花沢市、南陽市、山辺町、中山町、河北町、西川町、朝日町、大江町、大石田町、金山町、最上町、舟形町、真室川町、大蔵村、鮭川村、戸沢村、高畠町、川西町、小国町、白鷹町、飯豊町、大蔵村、鮭川村、戸沢村)ビザ山形
上記エリア以外でも当事務所はオンライン申請に対応しております。
面談もZoomでの対応可能です。
LINEからの相談は『24時間365日』受け付けています。
友達追加してお気軽にご相談ください。
【※ご注意】ご依頼に関する相談料は初回無料ですが、ブログ記事に内容に関するご質問やご依頼に関係ないご相談は有償となります。
