この記事のポイント
マイナビグローバルの調査では、在留外国人の95.8%が「今後も日本で働きたい」と回答しました。一方で、5年以上働きたい人は61.6%に減少し、ベトナム人材では長期就労希望の減少が目立ちます。
外国人雇用の現場では、採用できるかどうかだけでなく、「選ばれ続ける職場か」がより重要になっています。
日本で働きたい人は多い。しかし、長く働くとは限らない

マイナビグローバルが2026年1月23日から2月24日に実施した「在留外国人の日本での就労意欲調査」では、今後も日本で働きたいと回答した人が95.8%に上りました。
数字だけを見ると、日本はまだ外国人材から強く支持されているように見えます。
ただ、行政書士として外国人雇用の相談を受けていると、この数字をそのまま「安心材料」と見るのは少し危ういと感じます。
問題は、日本で働きたいかどうかではなく、どのくらい日本で働き続けたいかです。
同調査では、日本で働く意欲がある人のうち、5年以上働きたいと回答した割合は61.6%でした。前年と比較すると14.7ポイントの減少です。
さらに、ベトナム人材では5年以上働きたい人の割合が18.4ポイント減少したとされています。背景として、円安や母国の賃金上昇により、帰国を選ぶ動きが影響している可能性が指摘されています。
つまり、「日本で働きたい」という入り口の意欲は高いものの、「日本で長く生活し、キャリアを積みたい」という気持ちは揺れ始めている。ここに今回の調査の重みがあります。
ベトナム人材の変化は、外国人雇用全体の先行指標かもしれない

ベトナム人材は、これまで技能実習、特定技能、技術・人文知識・国際業務など、さまざまな在留資格で日本の現場を支えてきました。
厚生労働省の令和7年10月末時点の外国人雇用状況でも、外国人労働者数は257万1,037人で過去最多となり、国籍別ではベトナムが60万5,906人で最多です。
また、出入国在留管理庁の令和7年末統計でも、在留外国人数は412万5,395人と初めて400万人を超え、ベトナムは68万1,100人で中国に次ぐ規模となっています。
そのベトナム人材の長期就労希望が下がっているという点は、単なる一国の傾向ではなく、日本の外国人雇用全体に対する警告として見るべきです。
かつては、日本で働けること自体に大きな魅力がありました。給与水準、日本語習得、治安、生活環境、家族への送金。こうした要素が、日本を選ぶ理由になっていました。
しかし、円安が続き、母国や近隣国の賃金が上がれば、日本の魅力は相対的に下がります。
現場感覚としても、「日本に行けば必ず稼げる」という時代ではなくなっています。家賃、社会保険料、生活費を差し引いた後、どれだけ手元に残るのか。本人たちはかなり現実的に見ています。
日本以外も選択肢になっている

今回の調査では、日本以外の国での就労に関心がある人が83.7%に上りました。
関心のある国では韓国が16.5%で最多とされ、その理由として「その国の文化が好き」が31.4%、「日本より給料が高い」が28.4%とされています。
この結果は、外国人材が「日本か母国か」だけで考えていないことを示しています。日本、韓国、台湾、オーストラリア、カナダ、中東諸国など、働く国の比較は以前より身近になっています。
企業側からすると、これは少し厳しい話です。採用面接で「なぜ日本で働きたいですか」と聞くだけでは足りません。本人から見れば、「なぜこの会社で長く働く必要があるのか」が問われています。
給与だけではありません。休みが取れるか。日本語を学ぶ機会があるか。昇給の見通しがあるか。職場で孤立しないか。生活上の困りごとを相談できるか。こうした日々の小さな積み重ねが、定着の土台になります。
特定技能2号への期待は高いが、制度だけでは人は残らない

特定技能についても注目すべき結果があります。
VIETJOの記事では、特定技能2号での就労意欲を持つ人が前年比2.5ポイント増の86.5%と紹介されています。
マイナビグローバルのリリースでも、特定技能2号で働きたい人の割合は前年より増加し、特定技能が主要な就労ルートとして定着しつつあることが示されています。
制度上、特定技能1号は通算上限5年で、受入れ機関または登録支援機関による支援の対象です。一方、特定技能2号は更新の上限がなく、要件を満たせば配偶者と子の帯同も可能です。
この違いは大きいです。外国人本人にとって、5年で終わる働き方なのか、将来設計ができる働き方なのかは、人生の見え方そのものを変えます。
ただし、ここで企業が誤解してはいけないのは、「2号があるから定着する」わけではないという点です。
特定技能2号は、熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。誰でも自動的に移行できる制度ではありません。
分野ごとの試験、実務経験、業務内容、受入れ体制などを丁寧に確認する必要があります。個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
企業が考えるべきことは、採用数より「残る理由」

外国人雇用の相談では、「どこの国の人が採りやすいですか」「特定技能で何人呼べますか」という質問を受けることがあります。
もちろん採用ルートは大切です。ただ、これからはそれだけでは足りません。
外国人労働者数は増えています。特定技能の在留外国人数も令和7年末で39万296人となり、前年から大きく増加しています。
それでも、外国人材の側には選択肢があります。日本で働く意欲が高いことと、日本の企業に長く定着することは同じではありません。
企業に必要なのは、制度対応と雇用管理を分けて考えないことです。在留資格の要件を満たすこと、雇用契約書を整えること、支援計画を作ること。これらは入口です。
その後に、給与、評価、教育、相談体制、キャリアパスをどう作るか。ここまで含めて、ようやく「外国人材を受け入れる体制」といえます。
外国人雇用は、単なる人手不足対策ではありません。会社の働き方そのものを見直す鏡のようなものです。
外国人材が残らない職場は、日本人にとっても長く働きにくい職場であることが少なくありません。
まとめ

今回の調査は、日本がまだ外国人材から選ばれていることを示す一方で、長期就労への期待が弱まりつつあることも示しています。特にベトナム人材の変化は、今後の外国人雇用を考えるうえで見過ごせません。
採用できるかどうかの時代から、定着してもらえるかどうかの時代へ。制度の理解だけでなく、働く人の生活感覚や将来設計に向き合うことが、これからの外国人雇用ではより重要になります。
在留資格申請や外国人雇用の判断は、制度の条文だけでなく、実際の業務内容、賃金、支援体制、本人の将来設計によって結論が変わることがあります。判断に迷う場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
- 記事末尾の整理
【結論】
在留外国人の日本での就労意欲は高いものの、長期就労希望は減少傾向にあります。企業は「採用できるか」だけでなく、「長く働きたいと思える職場か」を考える必要があります。
【根拠】
マイナビグローバル調査では、日本で働きたい人が95.8%、5年以上働きたい人が61.6%、ベトナム人材の長期就労希望が18.4ポイント減少とされています。厚生労働省の外国人雇用状況では、令和7年10月末時点の外国人労働者数は257万1,037人で、ベトナムが最多です。出入国在留管理庁の令和7年末統計では、在留外国人数は412万5,395人、特定技能は39万296人です。
【注意点・例外】
マイナビグローバルの調査は民間調査であり、調査対象は同社の支援対象者、登録者、提携する日本語学校・専門学校等の留学生、Facebookグループ等への案内によるインターネット調査です。回答者数は1,732人で、在留資格別の偏りを補正するためウエイトバック集計が行われていますが、すべての在留外国人の意思をそのまま表すものではありません。
特定技能2号については、更新上限がないことや家族帯同の可能性がある点で長期就労の選択肢になりますが、分野ごとの要件や本人の技能水準、業務内容により判断が変わります。個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
【出典】
一次情報:
出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」
厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ、令和7年10月末時点
外務省「制度の概要 在留資格 特定技能」
民間調査・参考情報:
株式会社マイナビグローバル「在留外国人の日本での就労意欲調査」2026年7月7日公表
VIETJOベトナムニュース「在留外国人の日本就労意欲は95.8%、ベトナム人の長期就労希望減」2026年7月8日配信
【確実性:中】
政府統計と制度説明は一次情報に基づくため確実性は高い一方、就労意欲に関する部分は民間調査であり、調査対象や回答者属性の偏りを考慮する必要があるため、記事全体としては中としました。
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