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TOP > コラム > 在留資格取消しが過去最高の1,446件に増加 2025年統計から読む入管実務の注意点

在留資格取消しが過去最高の1,446件に増加 2025年統計から読む入管実務の注意点

2026.05.05
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在留資格の取消し件数が増えた、というニュースをどう見るか

「在留資格の取消しが増えた」というニュースは、どうしても強い言葉だけが先に歩きます。けれど、実務の感覚で見ると、ここは少し落ち着いて読んだ方がいいところです。

出入国在留管理庁が2026年3月27日に公表した資料によれば、2025年の在留資格取消件数は1,446件でした。

前年の1,184件から262件増で、増加率は22.1%。過去最高水準です。

国籍・地域別ではベトナムが947件で突出し、在留資格別では技能実習が973件、留学が343件、技術・人文知識・国際業務が63件でした。

取消事由では、入管法22条の4第1項6号が999件、同5号が350件と、この2つで大半を占めています。

ここで大事なのは、「取消しが増えた=直ちに外国人全体の問題が深刻化した」と単純に言い切れないことです。

もちろん数字としては重い。ただ、統計の中身を見ると、中心にあるのは不法就労そのものというより、「本来の在留活動をしていない状態」が長引いたり、別の活動に流れたりするケースです。

つまり、現場でいうと、失踪、退学後の放置、転職や離職後の放置、名目と実態のずれ。そういう、少しずつ歯車がずれていった先の数字として読むべきだと思います。

取消事由の中心は22条の4第1項5号・6号

入管法22条の4は、一定の場合に法務大臣が在留資格を取り消すことができる制度です。

出入国在留管理庁も、「偽りその他不正の手段による上陸許可等」や、「在留資格に基づく本来の活動を一定期間行っていない場合」などが取消しの対象になると案内しています。

今回多かった5号と6号は、ざっくり言えばこうです。

5号は、本来の活動をしていないうえに、別の活動をしている、またはしようとしている場合。
6号は、正当な理由なく3か月以上、本来の活動をしていない場合です。

報道だけ読むと似たように見えますが、実務上はこの違いがかなり大きい。
6号は「放置」の色が強く、5号は「実態逸脱」の色が強い。そんな印象があります。

「何をしたか」より「何も整理しなかった」が危ない

実務では、目立つ違反行為だけが問題になるわけではありません。

むしろ怖いのは、学校を辞めた、会社を辞めた、実習先を離れた、その後の整理をしないまま時間が過ぎていくことです。

在留資格は、名前だけ持っていればいいものではありません。今の在留資格に対応した活動を現にしているか、あるいはしていないならその理由を説明できるか。

そこが見られます。ここを曖昧にしたまま数か月過ぎると、一気に説明が難しくなります。

技能実習の取消しが多いのはなぜか

技能実習が973件と圧倒的に多いのも、偶然ではありません。

技能実習は制度上、受入先や実習計画との結びつきが強く、実態とのずれが生じたときに問題が顕在化しやすい。在留資格としての柔軟性が高いわけではないので、受入先離脱や失踪、実習不継続が起きると、その後の立て直しが難しくなりやすいのです。

数字だけ見ると「技能実習は危ない制度だ」と言いたくなるかもしれませんが、私はそこは少し慎重であるべきだと思っています。

制度の硬さ、受入体制の弱さ、本人の生活困窮、仲介やブローカーの問題、こうした複数の要因が重なって表面化している可能性が高いからです。推測ですが、単純な本人責任論で片付けると、現場の問題を見誤ります。

制度の硬さが、立て直しの難しさにつながる

技能実習は、いったん実習先との関係が崩れると、他の在留資格以上に立て直しが難しい場面があります。だからこそ、受入企業側も「辞めたら終わり」ではなく、その前段階で相談できる体制をつくっておく必要があります。

トラブルが起きてからでは遅いことがある。この制度は、その性格がかなりはっきりしています。

留学の取消しが示していること

留学が343件という数字も、かなり示唆的です。留学生の場合、退学や除籍のあとに在留資格の整理ができていない、学校に通っていないのに別の就労へ流れている、そうしたケースが実務上の典型です。

留学は「学校に通って学ぶ」ことが在留の中核なので、その土台が崩れると、一気に在留の説明が難しくなります。

ここは本人だけの問題ではなく、学校側の出席管理、退学時の説明、進路変更時の支援体制も問われるところです。

学校の現場では、退学届が出た時点で手続が終わったように見えても、入管実務ではそこから先の整理の方が大事だったりします。

学校の管理だけではなく、本人の相談行動も重要

留学生の案件では、「もう学校に行っていないけれど、どうしたらいいか分からなかった」という相談が一番深刻です。分からないから放置する。その流れが、そのまま取消しリスクにつながります。

本当は、進路変更でも帰国でも、早く動いた方が選択肢は残ります。ここはもっと伝わってほしいところです。

技術・人文知識・国際業務も件数が少ないから安心ではない

技術・人文知識・国際業務が63件という数字は、件数としては大きくありません。ただ、この在留資格は企業実務との接点が強いため、むしろ一件ごとの重みがあります。

たとえば、採用した職務内容が申請時の説明とずれていないか、退職後に所属機関に関する届出をしているか、次の勤務先への移行が曖昧なまま放置されていないか。このあたりは、本人だけでなく会社側の管理意識でかなり差がつきます。

特に最近は、在留資格と実際の職務内容の整合性が以前より丁寧に見られている印象があり、「雇ってから考える」はかなり危険です。これは現場にいるとひしひしと感じます。

企業の「知らなかった」は通りにくい

外国人雇用の実務では、採用時の在留資格確認だけで安心してしまう会社もあります。けれど、本当に大事なのは採用後です。

職務内容が変わった、退職した、転籍する予定になった。その変化にきちんと対応できるかどうかで、結果は変わります。

在留資格の管理は、採用時の一回限りの確認ではありません。むしろ継続管理の方が重要です。

今回の統計から実務で読むべきポイント

では、今回の統計から何を読むべきか。私は、「取消し件数が増えた」という結果そのものより、「放置が許されにくくなっている」という流れの方が重要だと考えます。

学校を辞めた。会社を辞めた。実習先を離れた。その時点で、在留資格に対応した活動の説明が弱くなるのに、そのまま数か月過ぎてしまう。ここが一番危ない。逆にいえば、状況が変わった時点で早く動けば、別の適法な手続に乗せられる可能性はまだあります。問題は、動かないことです。入管法22条の4第1項6号の「3か月」という数字は、実務ではかなり現実的な警告ラインだと思った方がいい。

取消し件数の増加は、支援や管理が追いつかなかった数字でもある

ニュースとしては「取消し件数が過去最高」という見出しが目を引きます。

でも、現場目線で本当に怖いのは、その前段階の小さな放置です。学校に行かなくなった。仕事を辞めた。別の仕事を始めた。誰にも相談していない。

その積み重ねが、統計の1,446件になって表れている。そう見ると、この数字は制裁の数字というより、支援や管理が間に合わなかった件数でもあるのかもしれません。

外国人本人、企業、学校が今すぐ意識したいこと

だからこそ、外国人本人には「状況が変わったらすぐ相談」、企業や学校には「変化を把握したらすぐ動く」。結局、そこに尽きます。

派手な制度改正より前に、まず足元の在留管理。私はここがいちばん大事だと思います。

【結論】
2025年の在留資格取消し件数は1,446件で、前年より22.1%増加し過去最高水準でした。中心は技能実習と留学で、取消事由は「本来の活動をしていない状態」に関する5号・6号が大半です。実務上は、違反の悪質性だけでなく、離職・退学・失踪後の放置が大きなリスクになっていると読むべきです。

【根拠】
出入国在留管理庁の2026年3月27日公表資料では、2025年の在留資格取消件数は1,446件、前年は1,184件。在留資格別では技能実習973件、留学343件、技術・人文知識・国際業務63件。取消事由では22条の4第1項6号が999件、5号が350件です。入管庁は在留資格取消し制度について、本来の活動を一定期間行わない場合などが対象になると案内しています。

【注意点・例外】
「3か月活動していないと即取消し」とまでは言えません。条文上も「正当な理由なく」が要件であり、病気、出産、就職活動の具体的事情など、個別事情の評価が問題になります。どこまでが正当理由に当たるかは事案ごとの判断で、専門家に確認が必要です。また、今回の記事は2025年統計の傾向分析であり、個別案件の許否判断を直接示すものではありません。

【出典】
出入国在留管理庁「令和7年の『在留資格取消件数』について」
https://www.moj.go.jp/isa/content/001458770.pdf

出入国在留管理庁「令和7年の出入国在留管理業務の状況」
https://www.moj.go.jp/isa/content/001459199.pdf

出入国在留管理庁「在留資格の取消し(入管法第22条の4)」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/torikeshi_00002.html

e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/326CO0000000319

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