The Japan Timesの取材を受けました
2026年9月2日付のThe Japan Timesに、在留資格「経営・管理」の基準厳格化と、その後の出国者増加を扱った記事が掲載されました。https://www.japantimes.co.jp/news/2026/09/02/japan/japan-immigration-business-manager-visa/
私も、外国人経営者の相談を受ける行政書士として取材に協力しています。
記事の見出しは「Nearly 1,000 business manager visa holders left Japan in first half of 2026」。日本語にすれば、「2026年上半期に、約1000人の経営・管理ビザ保持者が日本を出国した」という内容です。
取材でもお話ししたとおり、現在の在留者にとって最も重い課題は、やはり資本金・出資総額3,000万円という新基準です。
私のところにも、「3,000万円をどう準備すればよいのか」「今の事業規模では現実的に難しい」といった相談が寄せられています。
制度改正が発表された当初は、まだ少し先の話として受け止めていた方も少なくありません。
しかし、今回の数字を見ると、その影響はすでに人の移動として表れ始めているように感じます。
上半期953人の出国は何を意味するのか

The Japan Timesが出入国在留管理庁のデータとして報じたところによれば、2026年1月から6月までに、「経営・管理」で在留していた953人が、再入国に必要な手続きを取らずに日本を出国しました。前年同期の約4倍です。
2025年1月から9月までは月平均約40人でしたが、新基準の施行後、同年11月は80人、12月は114人となり、2026年6月には226人に達したとされています。
再入国許可やみなし再入国許可の手続きを取らない出国は、一般に、その在留資格を維持したまま日本へ戻る予定のない「最終出国」とみられます。
単なる海外出張や一時帰国とは性質が異なる数字です。
ただし、953人全員が厳格化だけを理由に帰国した、とまでは断定できません。
公表された記事からは、個々の出国理由、廃業の有無、国籍、業種まではわからないためです。
制度改正と出国増加の時期が重なっていることは確かですが、数字だけで因果関係のすべてを説明するのは慎重であるべきでしょう。
また、「953人が出国した」ことと「953社が廃業した」ことも同じではありません。
経営者が替わって事業自体は残ったケースや、事業を譲渡した後に帰国したケースが含まれる可能性もあります。
厳格化は資本金だけの問題ではない

2025年10月16日に施行された改正では、事業規模に関する基準が大きく変わりました。
資本金・出資総額は従来の500万円以上から3,000万円以上へ引き上げられ、これに加えて常勤職員を1人以上雇用することが必要になりました。
この常勤職員には誰でも該当するわけではなく、日本人、特別永住者、または「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」など、入管法別表第二の在留資格を持つ外国人が対象です。
ほかにも、申請者または常勤職員の相当程度の日本語能力、経営者の学歴または経験、専門家による事業計画書の確認、独立した事業所、公租公課の履行状況などが審査上重要になります。
資本金だけを用意すれば解決する制度ではありません。
一方、不正な書類や実体のない会社を利用した在留を抑える必要性は理解できます。
問題は、実際に店舗を構え、納税し、地域で長年商売を続けてきた小規模事業者にも、同じ基準が重くのしかかることです。
制度の適正化と、健全な小規模事業の継続。その間にある溝を、現場では強く感じています。
既存の在留者には2028年10月16日までの経過措置

すでに「経営・管理」で在留していた方については、施行から3年を経過する2028年10月16日まで経過措置があります。
この期間中の更新申請では、新基準に適合していなくても、経営状況や今後適合する見込みなどを踏まえて許否が判断されます。
ここは誤解の多いところです。
資本金が3,000万円未満であれば、経過措置中でも直ちに不許可になる、という制度ではありません。反対に、3年間は何もしなくても必ず更新できる、という意味でもありません。
「今後適合する見込み」を何によって示すのか。増資計画の具体性、資金の形成過程、事業収益、雇用計画、納税や社会保険の状況などが、これまで以上に重要になると考えられます。
ただし、どの程度の計画で許可されるかは、現時点で一律に断定できません。
私自身も、今後の更新事例と出入国在留管理庁の運用を注意深く見ているところです。
廃業か増資か、二つだけではない

取材では、私の顧客の中で現時点までに実際に廃業した企業はないこともお伝えしました。
その一方で、事業譲渡や経営権の移転を行い、新しい経営者のもとで店長や料理人などとして働く道を探す方は、今後増えるのではないかと考えています。
事業を残す方法は、廃業か3,000万円への増資かという二択ではありません。
第三者への事業承継、他社との提携や合併、役割を変えた上での在留資格変更など、事業内容と本人の経歴によって検討できる余地があります。
もっとも、経営権を譲れば自動的に別の就労資格が得られるわけではありません。
店長、料理人、企画、貿易など、実際に従事する業務と学歴・職歴が、変更先の在留資格に合うかを個別に確認する必要があります。
名目だけ経営者を替えるような対応は、かえって在留上の問題を大きくしかねません。
期限直前では、選択肢が狭くなる

東京商工リサーチが2026年4月に公表した調査では、回答した外国人経営者299人のうち45.2%が何らかの影響を受けるとし、5.3%が廃業を検討すると回答しました。
さらに、影響を受けた企業が挙げた要件では、資本金・出資総額の引き上げが44.4%で最も多くなっています。
3,000万円の資金は、数か月で簡単に作れるものではありません。
事業承継や在留資格変更も、相手探し、契約、許認可、本人の要件確認に時間がかかります。
2028年という数字だけを見ると余裕があるように感じますが、実務の感覚では、決して長くありません。
まずは次回の更新時期、新基準への適合状況、資金調達の現実性、事業を誰にどのような形で引き継げるかを整理する。
早めに現状を把握すれば、事業と生活の両方を守る選択肢は増えます。
在留資格「経営・管理」の更新や事業承継、他の在留資格への変更は、会社の規模や本人の経歴、実際の業務内容によって結論が変わります。
判断に迷う場合は、期限が迫る前に専門家へ相談することをおすすめします。
記事末尾の整理
【結論】
2026年上半期に「経営・管理」の在留者953人が再入国手続きを取らずに出国したとの報道は、制度厳格化後の変化を示す重要な数字です。ただし、全員の出国理由を制度改正と断定することはできません。既存在留者は、経過措置の間に、新基準への対応だけでなく、事業承継や在留資格変更を含む現実的な選択肢を早めに検討する必要があります。
【根拠】
2025年10月16日施行の上陸基準省令等の改正により、資本金・出資総額3,000万円以上、常勤職員1人以上の雇用、日本語能力などの基準が導入されました。出国者数は、出入国在留管理庁のデータを引用したThe Japan Timesの2026年9月2日付報道に基づきます。
【注意点・例外】
経過措置中は新基準を満たしていなくても、経営状況や適合見込みなどを踏まえて総合的に判断されます。ただし、更新許可が保証されるわけではありません。事業譲渡や職務変更を行っても、別の在留資格へ当然に変更できるものではなく、個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
【出典】
一次情報
・出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」
・出入国在留管理庁「『経営・管理』の許可基準の改正等について」
参考情報
・東京商工リサーチ「『在留資格の厳格化』企業の5%が廃業検討」2026年4月23日
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