外国人所有者が増えるマンション管理組合で、何が問題になるのか
マンション管理組合をめぐるトラブルについて、「外国人グループに理事を乗っ取られるケースもある」とする報道がありました。
こうした見出しは、どうしても強い印象を与えます。ただ、行政書士として外国人の在留や生活支援に関わる立場から見ると、この問題は「外国人だから危ない」という単純な話ではありません。
本質は、マンションという共有財産を、誰が、どのようなルールで、どれだけ長期的に守るのかという問題です。
外国籍であっても、マンションの区分所有者であれば、管理組合に参加する権利があります。
理事に立候補することも、意見を述べることも当然です。ここを誤解してはいけません。
一方で、管理規約が読めない、総会資料の内容が理解できない、長期修繕計画の意味が共有されていない、投資目的の所有者と居住目的の所有者で利害が違う。こうした状態が重なると、管理組合の意思決定は一気に不安定になります。
これは外国人問題というより、管理組合の「説明不足」と「参加設計」の問題です。
改正区分所有法で建替えは進めやすくなったが、日々の運営は別問題

2026年4月1日から、改正区分所有法が施行されました。老朽化マンションの管理や再生を円滑に進めるため、建替えや一括売却などに関するルールが見直されています。
背景には、マンションの高経年化と居住者の高齢化があります。いわゆる「2つの老い」です。建物は古くなり、住民も高齢化する。その中で、理事のなり手がいない、総会に人が集まらない、合意形成ができないという問題が全国で起きています。
ただし、法律が変わったからといって、管理組合の日常運営が自動的にうまくいくわけではありません。
むしろ現場で問題になるのは、もっと地味な部分です。
総会資料を読んでいる人が少ない。
修繕積立金の意味が共有されていない。
管理会社任せになっている。
理事が輪番制で、専門知識を持たないまま判断している。
外国人所有者や海外居住オーナーへの連絡体制が弱い。
このような状態では、どれだけ法律が整備されても、管理組合は機能しにくくなります。
修繕積立金は「月々の負担」ではなく、将来の資産価値を守るお金

報道では、理事が交代した後に修繕積立金を値下げした事例が紹介されていました。
一見すると、月々の負担が下がるので、所有者にとって良いことのように見えます。しかし、マンション管理の実務では、修繕積立金の安さは必ずしもメリットではありません。
修繕積立金は、外壁、屋上防水、給排水管、エレベーター、機械式駐車場など、将来必ず必要になる大規模修繕のためのお金です。ここを削れば、将来のどこかで不足が出ます。
不足が出たときには、急な一時金徴収、借入れ、工事の先送り、建物劣化の進行といった形で問題が表面化します。
中古マンションを購入する人も、今はかなり慎重に見ています。立地や間取りだけでなく、長期修繕計画、修繕積立金の残高、滞納状況、管理組合の議事録まで確認されることがあります。
つまり、修繕積立金を安く見せることは、短期的には喜ばれても、長期的には資産価値を下げる可能性があります。
外国人所有者とのトラブルを防ぐには、排除ではなくルールの見える化が必要

外国人所有者が増えるマンションでは、管理組合側にも準備が必要です。
たとえば、管理規約や使用細則の要点を多言語で説明する。総会の議案について、専門用語を減らした説明資料を用意する。海外在住オーナーには、メールやオンラインで確実に通知する。賃貸化が進んでいる物件では、所有者と実際の居住者の連絡ルートを整理する。
こうした対応は、外国人のためだけではありません。日本人の高齢所有者、投資用オーナー、相続で取得しただけの所有者にとっても有効です。
管理組合のトラブルは、声の大きい人がいるから起きるというより、声の小さい人が参加できない構造になっているときに起きやすいものです。
「よく分からないから任せる」
「面倒だから総会に出ない」
「管理会社が何とかしてくれる」
この空白が、後から大きな対立を生みます。
実務上は、外国人オーナーよりも「無関心オーナー」の方が深刻なこともある

現場感覚としては、外国人か日本人かよりも、管理に関心があるかどうかの方が大きいと感じます。
日本語が不十分でも、きちんと説明すれば理解し、協力してくれる外国人所有者はいます。反対に、日本人所有者でも、総会に出ない、資料を読まない、滞納する、短期的な損得だけで反対する人はいます。
投資用マンションでは、所有者がその建物に住んでいないため、長期修繕や住環境への関心が薄くなりがちです。将来売却する予定であれば、「今の負担を下げたい」という考えが強くなることもあります。
ここで大切なのは、属性で判断しないことです。
外国人だから問題。
高齢者だから問題。
投資家だから問題。
そうではなく、マンション全体の維持管理に必要な情報を共有し、意思決定に参加してもらう仕組みがあるかどうかです。
これからの管理組合に必要なのは「参加しやすい運営」

マンション管理組合は、法律上は区分所有者の団体です。しかし、実際には小さな自治体のような面があります。
お金を集め、ルールを決め、建物を守り、住民同士の利害を調整する。簡単な仕事ではありません。
これから外国人所有者、海外居住者、投資用オーナー、相続で取得した所有者が増えていくと、従来の「掲示板に貼る」「紙で配る」「総会に来られる人だけで決める」という方法では限界が出ます。
管理規約の見直し、オンライン出席や電子的な通知方法、議決権行使書の分かりやすさ、滞納時の対応ルール、外部専門家の活用。こうした実務的な整備が必要です。
外国人所有者がいるマンションほど、説明責任を丁寧に果たすことが求められます。そして、それは結果的に、日本人所有者にとっても分かりやすい管理になります。
まとめ

今回の報道は、外国人所有者が増える中で、マンション管理組合の運営が難しくなっている現実を示しています。
ただし、問題の核心は「外国人が理事になること」ではありません。所有者間で長期的な資産管理の考え方が共有されていないこと、管理規約や修繕計画が理解されていないこと、総会や理事会が一部の人だけで動いてしまうことです。
外国人の受入れや共生を考えるとき、在留資格や雇用の話だけでは足りません。住まい、地域、マンション管理の場面でも、多文化化はすでに進んでいます。
排除ではなく、ルールを見える化する。
感情ではなく、資料と数字で説明する。
無関心を放置せず、参加しやすい仕組みを作る。
これが、これからのマンション管理組合に求められる現実的な対応ではないでしょうか。
- 記事末尾の整理
【結論】
外国人所有者が増えるマンション管理組合では、国籍そのものではなく、管理規約・修繕積立金・長期修繕計画への理解不足や、所有者間の利害の違いがトラブルの原因になりやすい。排除ではなく、説明資料の整備、通知方法の改善、参加しやすい総会運営が重要です。
【根拠】
改正区分所有法は、老朽化マンション等の管理・再生を円滑化するために整備された制度です。国土交通省も、マンション標準管理規約の改正や修繕積立金ガイドラインの改定を通じ、管理組合運営と長期修繕計画の重要性を示しています。報道では、外国人所有者や投資目的所有者が関係する管理組合トラブルの事例が紹介されています。
【注意点・例外】
外国籍の区分所有者にも、管理組合に参加し、理事に立候補する権利があります。外国人であること自体を問題視する表現は避けるべきです。修繕積立金の適正額、管理規約の改正、理事資格、滞納対応などは、各マンションの規約・総会決議・管理状況によって判断が変わります。個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
【出典】
一次情報:
法務省「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」
国土交通省「マンション標準管理規約」
国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」
参考情報:
女性自身「外国人グループに理事を乗っ取られるケースも…新法でも対応できないマンション管理組合のトラブル」2026年6月13日
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