この記事のポイント
在留資格の変更・更新、永住許可の手数料について、入管庁が大幅な引き上げ案を示したと報じられました。
今回のポイントは、単なる「数千円の値上げ」ではなく、在留期間の長さや永住許可の位置づけに応じて、本人や企業の負担感が大きく変わる点にあります。
在留手数料は「一律」から「在留期間に応じた負担」へ

読売新聞オンラインの2026年6月24日付報道によれば、出入国在留管理庁は、在留資格の変更・更新の手数料について、現行の一律6,000円から、在留期間に応じて1万円から7万5,000円に引き上げる案を自民党法務部会などの合同会議に示したとされています。
報道ベースの金額案では、更新を希望する在留期間が3か月以下の場合は1万円、1年は3万3,000円、3年以上5年未満は6万4,000円、5年以上は7万5,000円とされています。
永住許可については、現行1万円から20万円への引き上げ案です。
ここで注意したいのは、現時点では「入管庁案」として報じられている段階であり、正式な金額は政令で定められるという点です。
令和8年入管法等改正法については、2026年5月29日に成立したことが入管庁の政策情報として示されていますが、実際の具体額は今後の政令・パブリックコメントを経て確定する流れになります。
現行制度では、許可時に納付する手数料

入管手続の手数料は、一般に「申請時に払うお金」と誤解されがちです。しかし、在留期間更新や在留資格変更、永住許可の手数料は、基本的には許可されるときに収入印紙で納付する性質のものです。
入管庁の永住許可申請ページでも、手数料について「許可されるときは10,000円が必要」と案内されています。
この点は実務上かなり大切です。たとえば永住許可申請で20万円となった場合、「申請して不許可でも20万円を支払う」という形になるのか、「許可時に20万円を納付する」のかで、申請者の心理的負担はまったく違います。
現行の制度設計を前提にすれば、少なくとも従来は許可時納付の整理です。ただし、改定後の具体的な納付方法や例外については、正式な政令・運用通知を確認する必要があります。
企業にとっては「法定費用の会社負担」を見直す時期

外国人を雇用している企業では、在留期間更新の収入印紙代を本人負担にしている会社もあれば、会社負担にしている会社もあります。
これまでは6,000円だったため、実務上はそれほど大きな論点になりませんでした。
しかし、1年更新で3万3,000円、3年以上で6万円台、5年で7万5,000円という水準になると、話は変わります。特定技能、技人国、家族滞在など、複数名の外国人社員がいる会社では、更新時期が重なるだけで一定のコストになります。
原則は法定手数料となる印紙代の負担は外国人本人です。
しかし、ここで雑に「本人負担でよい」と決めてしまうと、採用競争力や定着率に影響する可能性があります。一方で、すべて会社負担とする場合は、福利厚生費や採用コストとして予算化しておく必要があります。
外国人雇用は、もはや採用時だけの話ではなく、在留管理コストを含めた人事制度の問題になってきています。
永住許可20万円案は、申請タイミングの判断に影響する

永住許可の手数料が20万円になる可能性は、実務現場ではかなり大きな意味を持ちます。
永住許可は、単に「長く日本に住める」というだけではありません。転職・起業・住宅ローン・家族の生活設計などに関わる、人生設計上の重要な在留資格です。現行の永住許可手数料は1万円ですが、これが20万円になれば、申請者にとっては「要件が整っているなら早めに申請するか」という判断が現実的になります。
もっとも、急いで申請すればよいわけではありません。永住許可では、素行善良要件、独立生計要件、国益適合要件が審査されます。
入管庁の永住許可申請ページでも、審査基準としてこれらの要件が示されています。
税金、年金、健康保険料、出国日数、扶養状況、転職直後かどうかなど、個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
手数料改定前だからといって、未成熟な申請を急ぐことは、かえって不許可リスクを高めます。
オンライン申請の位置づけも変わる

報道によれば、オンライン申請の場合は、3か月以下の申請を除き、最大1万円を割り引く案も示されているようです。
入管庁はすでにオンライン手続に関する制度整備を進めており、2025年4月1日からの手数料改定でも、オンライン手続の手数料額が新たに定められたことが案内されています。
この流れを見ると、今後は「窓口に並ぶ申請」から「オンラインで管理される申請」へ、行政側が誘導していく方向性がより明確になります。
行政書士の実務でも、オンライン申請に対応できる体制を持っているかどうかが、依頼者の費用負担や利便性に直結していくでしょう。
ただし、永住許可については、今回の報道では従来どおり窓口対応のみとされています。この点も、正式公表後に確認が必要です。
値上げの背景にあるもの

今回の手数料改定は、「外国人からお金を取る」という単純な話ではありません。
入管行政は、在留外国人の増加、オンライン化、審査の厳格化、多言語対応、日本語教育・生活支援など、扱う範囲が広がっています。
政府側は、手数料収入を日本語教育の充実などに充てる考えとされています。制度を維持するために一定の受益者負担を求めるという考え方自体は、行政実務として理解できる部分があります。
一方で、家族全員が在留資格を更新する世帯や、短い在留期間を繰り返している人にとっては、かなり重い負担になります。
東京弁護士会は、改正案について、在留資格変更・更新は10万円、永住許可は30万円へ法定上限を引き上げる内容であり、急激な負担増に慎重な議論を求める声明を出しています。
行政書士の現場感覚としては、制度の適正化と生活者への配慮の両方が必要だと感じます。ルールを守って日本で働き、納税し、地域で生活している外国人にとって、在留手続は「任意のサービス」ではなく、生活を続けるための不可欠な手続だからです。
また、入管の審査期間の長期化が顕著になってから久しく、明らかに入管職員の数と申請件数のバランスが崩壊しています。
そうした問題解決に費用を充てて欲しいと思います。
今から確認しておきたいこと

外国人本人は、次回更新日、現在の在留期間、永住申請の可能性、税金・社会保険料の納付状況を確認しておくべきです。
企業は、外国人社員の在留期限一覧、更新費用の負担方針、オンライン申請への対応、社内規程の整備を確認する必要があります。
今回の改定案が正式に実施されれば、在留手続は「更新期限が近づいたら考えるもの」ではなくなります。費用、要件、社内管理を含めて、前もって準備する時代に入ったといえます。
在留資格申請や外国人雇用の判断は、制度の条文だけでなく、実際の活動内容、雇用管理、家族構成、納税・社会保険の状況によって結論が変わることがあります。判断に迷う場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
4. 記事末尾の整理
【結論】
在留資格の変更・更新、永住許可の手数料は、大幅引き上げに向けて具体化が進んでいます。
特に永住許可20万円案は、外国人本人の生活設計と企業の外国人雇用コストに大きな影響を与える可能性があります。
【根拠】
令和8年入管法等改正により、在留資格変更・更新、永住許可に関する手数料上限の引き上げが制度化されています。
現行の永住許可手数料は、入管庁公式ページで1万円と案内されています。
【注意点・例外】
今回の1万円から7万5,000円、永住20万円という金額は、現時点では報道された入管庁案です。正式な金額、適用開始日、オンライン割引、減免制度、経過措置は、政令・パブリックコメント後の公表内容を確認する必要があります。
永住申請を急ぐべきかどうかは、納税、年金、健康保険、出国日数、扶養、転職歴、収入安定性などにより変わります。個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
【出典】
出入国在留管理庁「在留手続等に関する手数料の改定」
出入国在留管理庁「永住許可申請」
出入国在留管理庁「令和8年入管法等改正法について」
東京弁護士会「在留審査手数料の値上げ等に関する出入国管理及び難民認定法改定に反対すると共に慎重な審議を求める会長声明」
読売新聞オンライン「一律6000円の『在留』手数料を1万~7・5万円に…入管庁案、『永住許可』は1万円が20万円に」2026年6月24日、参考情報
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