この記事のポイント

- 65歳以上の外国人住民は23万4,640人となり、2013年から約1.75倍に増えています。
- ただし、人口統計だけでは、高齢外国人の貧困率や年金受給額までは分かりません。
- 外国人の国民年金第1号被保険者の最終納付率は55.0%ですが、これは外国人全体の納付率ではありません。
- 外国人材を受け入れるのであれば、採用時だけでなく、定住、高齢化まで見据えた制度設計が必要です。
「外国人も日本で老いる」という当たり前のこと

外国人政策というと、何人受け入れるのか、どの在留資格で働いてもらうのかという議論が中心になります。
けれども、日本で働き、家族と暮らし、生活基盤を築いた人は、当然ながら日本で歳を重ねます。外国人を「働き手」としてだけ捉えていると、その先にある老後が見えなくなります。
総務省の住民基本台帳人口によると、2026年1月1日現在の外国人住民は403万1,159人でした。このうち65歳以上は23万4,640人です。
初回の2013年調査では13万3,991人でしたので、約13年間で10万649人増え、約1.75倍になりました。e-Stat「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」
もっとも、外国人住民全体に占める65歳以上の割合を計算すると約5.8%です。日本人を含む国内人口全体と比べれば、外国人住民はまだ若い世代が中心です。
つまり、「高齢外国人の人数が増えている」ことは事実ですが、「外国人住民全体の高齢化が日本人以上に進んでいる」とまではいえません。
「高齢外国人が増えた」だけでは貧困の実態は分からない

今回の人口統計から分かるのは、年齢と居住地域、人数の推移です。
収入、資産、年金受給額、家族からの支援、生活保護の受給状況までは示されていません。そのため、23万4,640人という数字だけを見て、「将来は多くが生活保護になる」と結論づけることはできません。
一方、老後の生活基盤に不安を残す可能性を示す数字はあります。
厚生労働省によると、2026年3月末現在、外国人の公的年金加入者は318万人です。
内訳は、国民年金第1号被保険者が90万人、厚生年金に加入する第2号被保険者等が201万人、第3号被保険者が27万人でした。
外国人の国民年金第1号被保険者について、令和5年度分保険料の最終納付率は55.0%です。
同じ令和5年度分について、国民年金第1号被保険者全体の最終納付率は85.6%でした。
厚生労働省「令和7年度の被保険者の状況」
この差は見過ごせません。
ただし、55.0%という数字は、外国人全体の半数しか年金を納めていないという意味ではありません。給与から厚生年金保険料が控除される第2号被保険者は、この納付率の対象外です。
数字は、範囲を確認せずに使うと独り歩きします。
10年加入すれば老後が安心、ではない

老齢基礎年金は、保険料納付済期間や免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上あれば、原則として65歳から受給できます。日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件」
しかし、10年というのは年金を受け取る権利が発生する基準です。
十分な生活費が保障されるという意味ではありません。40代、50代になってから来日した人は、日本で適正に加入していても、加入期間が短いため受給額が少なくなることがあります。
母国の年金加入期間については、社会保障協定によって日本の加入期間と通算できる場合があります。ただし、協定の有無や内容は国ごとに異なります。
また、帰国時に脱退一時金を受け取ると、それ以前の日本での加入期間は年金加入期間ではなくなります。
いったん帰国した後に再来日し、日本で定住する可能性がある人は、目先の受取額だけで判断しない方がよいでしょう。
「高齢の親を呼び寄せている」とは限らない

もう一つ、誤解されやすい点があります。
65歳以上の外国人が増えたことを、そのまま「外国人労働者が高齢の親を日本へ呼び寄せている」と理解するのは正確ではありません。
在留資格「家族滞在」の対象は、原則として扶養を受ける配偶者と子です。
親は含まれません。
高度専門職外国人の親については例外的な受入制度がありますが、7歳未満の子の養育や妊娠中の配偶者の介助など、限定された要件があります。
出入国在留管理庁「在留資格『家族滞在』」
高齢外国人には、特別永住者、永住者、日本人や永住者の配偶者、長年日本で生活してきた定住者など、さまざまな背景の人が含まれます。
今回の人口統計だけでは、その内訳や来日経緯までは分かりません。
生活保護についても、65歳以上の外国人全員が当然に対象になるわけではありません。
外国人に対する生活保護は、昭和29年の厚生省通知に基づき、永住者や定住者等の一定の在留資格について、行政措置として行われています。
在留資格や個別事情によって取扱いが異なります。
採用時から「老後」までを見る必要がある

実務では、給与から何かが引かれているので、年金もすべて納めていると思っていたという外国人も少なくありません。
退職後に厚生年金から国民年金へ切り替わったことに気付かず、未納期間が生じることもあります。
企業や支援機関には、採用時の社会保険加入だけでなく、退職、転職、扶養関係の変更時にも説明する姿勢が求められます。
留学生には、学生納付特例が自動的に適用されるものではなく、申請が必要であることを伝えなければなりません。
本人に支払能力がない場合も、何もせず未納にするのではなく、免除や納付猶予の対象になるかを確認することが大切です。
日本年金機構は多言語の案内資料も公開しています。
政府は、外国人比率の将来推計や経済、社会保障への影響を検討し、2026年度中に外国人受入れの基本方針をまとめるとしています。
首相官邸「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」
私は、この問題を「外国人が増えると社会保障の負担になる」という一言で終わらせるべきではないと思います。
保険料や税を納め、日本の社会を支えてきた外国人も同じ統計に含まれています。
一方で、制度周知や適正加入が不十分なまま人手不足対策だけを先行させれば、将来、低年金や無年金となる人が増える可能性があります。
外国人材を受け入れるということは、一人の人間の人生を受け入れることでもあります。
入口の在留資格だけでなく、その先の暮らしまで考える時期に来ています。
外国人雇用や永住許可申請では、年金や社会保険の加入・納付記録が重要になることがあります。
未納期間がある場合は自己判断で放置せず、年金については年金事務所や社会保険労務士、在留資格への影響については入管実務の専門家へ早めに確認することをおすすめします。
- 記事末尾の整理
【結論】
65歳以上の外国人住民は増えていますが、人口統計だけで「老後の貧困」や将来の社会保障負担を断定することはできません。適正な社会保険加入、未納期間の防止、多言語での制度周知を進め、外国人を生活者として捉える政策が必要です。
【根拠】
総務省の住民基本台帳人口では、65歳以上の外国人住民が2013年の13万3,991人から2026年の23万4,640人へ増加しています。厚生労働省資料では、外国人の国民年金第1号被保険者の最終納付率が55.0%となっています。
【注意点・例外】
55.0%は国民年金第1号被保険者に限った数字であり、厚生年金加入者を含む外国人全体の納付率ではありません。高齢外国人の貧困率、在留資格別構成、年金受給額は今回の人口統計からは分かりません。生活保護の取扱いも在留資格や個別事情により異なります。
添付された新聞社作成のグラフをブログへ掲載する場合は、転載許諾の確認が必要です。掲載用には、総務省の公表数値を基に独自のグラフを作成する方法が安全です。
【出典】
一次情報
- e-Stat「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」
- 厚生労働省「令和7年度の被保険者の状況」
- 厚生労働省「令和7年度業務実績報告書」
- 日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
- 日本年金機構「脱退一時金を請求するにあたっての注意点」
- 出入国在留管理庁「在留資格『家族滞在』」
- 厚生労働省「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」
参考情報
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