在留カード用プリンター103台が未活用――審査とカード交付を分けて読む
「使われていないプリンターがあるなら、その分、手続を早く進められたのではないか」
在留資格の申請結果を待つ方にとって、気になるニュースです。
会計検査院は2026年9月17日、在留カード作成用のICカードプリンターについて、配備や活用状況を検査し、法務省側が改善措置を講じたことを公表しました。
会計検査院の発表
行政の設備が十分に使われていたかは、税金の使い方として大切な問題です。
同時に、このニュースを個別の在留審査の遅れと結び付けるには、慎重な確認が必要です。公表資料からわかることを整理します。
103台、5,651万余円という数字の意味

検査対象は、8地方出入国在留管理局に配備された700台。
そのうち、重複を除く103台、調達価格相当額5,651万余円が、在留カードの作成に使用されていませんでした。
103台には、実地検査時に端末へ接続されていなかったものと、使用記録上、作成枚数がゼロだったものが含まれます。調達価格相当額は購入分と賃借分を含む指標です。
「すべて新品のまま放置され、同額の購入費が失われた」と読み替えることはできません。
会計検査院・検査結果本文
金額は目を引きます。
ただ、問題を正確に受け止めるには、台数だけでなく、どのような基準で「使われていない」と確認されたのかにも目を向けたいところです。
問われたのは、設備の使われ方を把握する仕組み

共同通信の報道によれば、使われていない機器がある一方で、一部の地方入管局からは増設の要望が出ていました。
入管庁は使用状況を把握していなかったとされています。
参考報道・共同通信(神戸新聞掲載)
ここから考えたいのは、機器を配備した後の管理です。
必要な場所に設備を届けるには、「何台あるか」と「どれだけ使われているか」の両方を把握する必要があります。
台帳上は十分な台数があっても、実際の需要に合っていなければ、現場の負担を軽くすることはできません。
一般論として、故障に備える考え方自体は大切です。
しかし、予備機の必要性も、保守サービスや他の機器で対応できる範囲と合わせて検討するべきでしょう。
企業の設備管理にも通じる話です。
行政書士としては、設備を購入したことよりも、申請者が利用する窓口や業務の中で、どう役立てられているかを重視したいと考えます。
在留審査とカードの作成は、役割が異なる

ここで、手続の中身を分けてみます。
在留資格の審査では、申請内容に基づいて許可の可否などを判断します。
カードの作成は、その情報をカードとして形にする業務です。
会計検査院の公表も、検査の着眼点をプリンターの効率的な配備と有効活用に置いています。
会計検査院の発表
そのため、機器の未活用が確認されたことだけで、「自分の申請は印刷待ちだった」「プリンターを動かせば審査が終わる」とは判断できません。
たとえば、外国人の採用を予定する企業が、入社日を決める場面を考えてみてください。
「機器を移せば結果が早く出るらしい」という理解で予定を前倒ししても、その見込みを今回の資料で裏付けることはできません。
これは説明のための仮例ですが、ニュースを実際の採用判断につなげる際には、こうした飛躍に気を付けたいところです。
今回の公表資料からは、個別案件の遅延原因も、設備の再配置によって何日短縮されるかもわかりません。
「待ち時間」は、どこからどこまでかを確かめる

申請者が感じる待ち時間には、申請後に結果を待つ時間も、窓口で手続を待つ時間もあります。
日常会話では同じ「待ち時間」ですが、改善を考える際には区別が必要です。
出入国在留管理庁の在留審査処理期間の案内では、申請を受けてから許可の告知までを対象とする旨が示されています。
少なくとも、カードを印刷するためだけの時間を示した数字ではありません。
出入国在留管理庁「在留審査処理期間」
今後、改善の効果を確認するなら、機器の稼働状況、窓口での待ち時間、申請から結果までの期間を、それぞれの指標で見ることが必要だと考えます。
「設備を活用した」という説明に加えて、利用者にどのような変化があったのか。
その点まで見えると、改善の意味が伝わりやすくなるはずです。
6月の改善措置と、9月の公表を分けて読む

実地検査は2025年6~12月に行われ、入管庁は2026年6月に、自局内での移設や他局への管理換を進め、使用状況を把握する体制を整えました。
「管理換」は、機器の管理を別の管理主体へ移すことです。
会計検査院・検査結果本文
9月17日は、その経緯が公表された日です。新たな在留制度の施行日ではありません。
また、体制の整備と、対象機器すべての活用完了は区別して受け止める必要があります。
申請する側にとって、この発表によって新たな提出書類や許可要件が設けられたわけではありません。
設備管理の問題は改善を求めつつ、個々の申請は、その案件の事実と手続状況に沿って考えることが大切です。
結果を待つ本人や企業にとって、見通しが立たない時間は負担です。
だからこそ、行政には設備の有効活用と、改善の結果がわかる説明を期待したいと思います。
私たち支援する側も、確認できた事実と、まだわからないことを丁寧に伝えていく必要があります。
4.記事末尾の整理
【結論】
設備の未活用は行政運営上の課題です。ただし、今回の検査結果だけで、個別の在留審査が遅れた原因や今後の短縮効果を判断することはできません。
【根拠】
会計検査院の発表・検査結果本文を中心に、入管庁の処理期間の案内と共同通信の報道を参照しました。
【注意点・例外】
検査時点の状況と現在の稼働状況は同一ではありません。個別申請への影響は今回の資料からはわかりません。在留資格や就労開始の判断は、個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
【出典】
一次情報(確認日:2026年9月20日)
- 会計検査院「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」(2026年9月17日)
- 会計検査院・在留カード作成用ICカードプリンターに関する検査結果本文
- 出入国在留管理庁「在留審査処理期間」(今回、検索掲載情報で対象期間の説明を確認。ページ本文の直接取得はできていません。)
参考報道
- 共同通信「プリンター買ってもらったのに… 入管庁、103台使われず」神戸新聞掲載(2026年9月17日17時12分)
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