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TOP > コラム > 外国人雇用指針の見直しとは何か 不法就労防止と企業の実務対応を行政書士が解説

外国人雇用指針の見直しとは何か 不法就労防止と企業の実務対応を行政書士が解説

2026.04.03
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外国人雇用指針の見直しへ 不法就労防止と企業実務を行政書士目線で考える

外国人を雇う企業にとって、ルールの話はいつも少し後回しにされがちです。

採用が先、現場が先、人手不足が先。気持ちはよく分かります。ただ、今回の「外国人雇用指針見直し」の動きは、そうした現場感覚のままでは少し危ういかもしれません。

2026年3月19日、厚生労働省の「外国人雇用対策の在り方に関する検討会」で、今後の外国人雇用対策が議題となり、同省は第13回検討会の資料を公表しています。

報道では、この検討会で、事業主向けの管理指針の見直しや、外国人雇用状況の届出制度の運用改善が必要だという方向性が示されたとされています。

厚労省の公式ページでも、3月19日に第13回検討会が開催され、当面の課題を扱う資料が公表されたことは確認できます。

もっとも、現時点で私が確認できた公表資料上は、改正後の具体的な指針文言まではまだ固まっていません。ここは少し慎重に見ておくべきところです。

なぜ今、外国人雇用指針の見直しが議論されているのか

そもそも、いま使われている外国人雇用管理指針は、厚生労働大臣が定める告示で、事業主が講ずべき必要な措置を整理したものです。

現行指針には、関係法令の遵守、適正な待遇、安全衛生、社会保険の適用、生活支援、母国語等による労働条件の明示、在留資格の範囲内で就労できるかの事前確認などが書かれています。

外国人を採用する前に、その人が予定業務に従事できる在留資格かどうかを確認し、従事が認められない者は採用してはならない、という点も明記されています。

この話がなぜ今なのか。背景には二つの流れがあります。

背景1 政府全体で外国人政策の見直しが進んでいる

一つは、政府全体が2026年1月23日に「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を決定し、外国人政策を、共生だけでなく安全・安心やルール遵守の観点からも再整理し始めたことです。

首相官邸の公表内容でも、一部の外国人による違法行為やルール逸脱に対する不安・不公平感への対処を掲げています。

背景2 育成就労制度の開始を控えている

もう一つは、技能実習に代わる「育成就労制度」が2027年度に始まる予定で、外国人受入れの制度設計そのものが切り替わる局面にあることです。

厚労省の検討会でも、2024年以降、育成就労制度の創設や特定技能制度の見直しが議題に上がってきました。制度が変わる前に、雇う側の管理ルールもアップデートしようという流れは、むしろ自然です。

企業実務で大事なのは「在留カードを見たから大丈夫」をやめること

ここで企業実務として大事なのは、「在留カードを見たから大丈夫」という発想をそろそろ卒業しないといけない、ということだと思います。

現行制度でも、外国人を雇い入れた事業主には、雇入れ時と離職時に、氏名、在留資格、在留期間などを確認してハローワークに届け出る義務があります。

これは雇用保険の有無に応じて様式や期限が違いますが、制度そのものはかなり前からあるものです。

届出を怠ったり、虚偽の届出をしたりすると、30万円以下の罰金の対象になります。厚労省はこの届出に基づき、雇用管理の改善指導や、離職した外国人への再就職支援を行う仕組みです。

つまり、本来は「採用したら終わり」ではなく、「確認して、届け出て、継続的に管理する」までが雇用側の責任です。

今回の見直し論は、その当たり前をもう一段具体化しようとしているように見えます。推測ですが、今後は、在留カードの外形確認だけでなく、予定業務との整合性、資格外活動の有無、派遣や請負の実態、届出情報の精度あたりが、より強く意識される可能性があります。

これは現場としては少し手間です。ただ、雑な雇用で事故が起きるより、ずっといい。

不法就労は「悪意ある会社」だけの問題ではない

とくに注意したいのは、企業が「悪意なく」不法就労助長に近い状態へ滑っていく場面です。

技人国なのに実際は単純作業中心

たとえば、現場では単純作業中心なのに技術・人文知識・国際業務で採用してしまう。これは実務で本当に起こります。

肩書きだけ整っていても、実際の仕事内容が在留資格に合っていなければ厳しい。

留学生アルバイトの28時間制限を形式的にしか見ていない

勤務表の上では問題がないように見えても、複数勤務先を掛け持ちしていたり、実態としてオーバーワークになっていたりすることがあります。

企業側が「うちでは超えていない」と考えていても、それだけでは足りません。

紹介会社任せで在留資格の適合性を詰めていない

派遣先や業務内容の実態を十分に確認しない。紹介会社が大丈夫と言ったから採用する。学歴や職務内容の適合性を深く見ない。こういう進め方も危ういです。

問題が起きる会社ほど、最初は「知らなかった」「紹介会社がそう説明した」と言います。そこがいちばん怖いところです。

今回の見直しは締め付けではなく、適正雇用の企業を守る話でもある

私は、この見直しは締め付け一辺倒として捉えるべきではないと思っています。

むしろ、適正に雇っている企業が報われる方向に制度を寄せる作業なのだろうと感じます。

真面目に在留資格を確認し、雇用条件を明示し、日本語や生活面の支援もしている会社と、書類だけ合わせて実態を見ない会社が同じ土俵にいるのは、やはり健全ではありません。

現行指針でも、母国語等による説明、苦情相談体制の整備、地域社会で安心して生活するための支援などが求められています。

見落とされがちですが、この部分は単なる福祉ではなく、定着とコンプライアンスの土台です。

企業は今のうちに何をしておくべきか

では、企業は今なにをしておくべきか。派手なことは要りません。

採用時の確認書類と確認手順を棚卸しする

誰が、何を、どの順番で確認しているのか。ここが曖昧な会社は少なくありません。在留カードの確認だけで終わっていないか、一度立ち止まって見直したいところです。

雇用契約書と実際の業務内容のズレを見直す

契約書には事務職と書いてあるのに、実際は倉庫作業ばかり。こういうズレは後で重く効いてきます。書類を整えるより、実態を合わせる方が先です。

在留資格ごとの確認ポイントを現場責任者まで共有する

留学生、家族滞在、技人国、特定技能。どの在留資格でも同じ確認でよいわけではありません。採用担当だけでなく、現場責任者まで理解していないと、途中で運用が崩れます。

外国人雇用状況届出を最終チェックポイントとして使う

届出を単なる事務処理にしないことです。むしろ、在留資格確認と雇用内容確認の最終点検として使う。その意識を持つだけでも、実務はかなり変わります。

これからの外国人雇用は「採る力」より「適法に受け入れる力」

制度改正の細部は、今後、労働政策審議会などで具体化していく見込みです。だから現時点では、まだ断定しすぎない方がいい。ただ、方向性はかなりはっきりしています。

外国人雇用は、採れればよい時代から、適法に受け入れ、適切に管理できる企業が選ばれる時代に移っている。私はそう見ています。

少し厳しい言い方かもしれません。

でも、在留資格は名刺ではありません。働けるかどうかは、肩書きではなく、中身で決まる。その原則に、行政も企業も、もう一度戻ろうとしているのだと思います。

結論

厚労省の検討会で、外国人雇用指針の見直しと外国人雇用状況届出制度の運用改善が議論されており、今後は企業に対し、在留資格確認と雇用管理の実質的な精度がより求められる流れです。

現時点では具体的改正文言は未確定ですが、採用時確認、業務内容との適合性確認、届出の正確性確保は、すでに着手すべき実務対応です。

根拠

現行の外国人雇用管理指針は、事業主に対し、関係法令遵守、在留資格の範囲内での就労確認、労働条件の明示、社会保険適用、生活支援等を求めています。

外国人雇用状況の届出は、外国人の雇入れ・離職時に全事業主へ義務付けられており、虚偽や未届は罰則対象です。2026年3月19日の厚労省検討会では、今後の外国人雇用対策が議題となり、2026年1月23日の政府総合的対応策も制度見直しの背景にあります。

注意点・例外

今回の報道内容にある「意見書」の詳細や、改正後の指針文案そのものは、私が確認した公表資料ではまだ具体化されていません。このため、「何が確実に義務化されるか」までは断定できません。

推測ですが、今後の審議では、偽造在留カード対策、届出制度の実効性、業務内容との適合性確認などが論点になりやすいはずです。個別企業の採用スキームが適法かどうかは、在留資格、契約形態、業務実態によって評価が分かれるため、専門家に確認が必要です。

出典

・厚生労働省「外国人雇用対策の在り方に関する検討会」第13回開催・会議資料
・厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」
・厚生労働省「外国人の雇用」「外国人雇用状況の届出について」
・首相官邸・出入国在留管理庁「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」関連ページ

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