「外国人に税金を使うな」という議論で見落とされていること
自民党が提言した日本語・生活学習プログラムや、外国人が集住する自治体への財政支援をめぐり、SNSでは「外国人のために日本人の税金を使うな」という批判が広がっていると報じられました。
感情として理解できないわけではありません。
物価高や社会保険料の負担が続くなか、「まず日本人の生活を支えてほしい」と感じる人が増えるのは自然です。
ただ、この問題を「日本人に使うか、外国人に使うか」という二者択一で考えると、政策の本質を見誤ります。
在留外国人はすでに地域社会の住民である
令和7年末の在留外国人数は412万5,395人となり、前年末から9.5%増加しました。
初めて400万人を超えています。もはや外国人政策は、一部の企業や都市だけの問題ではありません。学校、病院、税務、社会保険、防災、ごみ処理など、日常の行政サービスそのものに関わる政策です。
そして、「外国人は税金を払わず、支援だけを受けている」という理解も正確ではありません。所得税の納税義務は国籍だけで決まるものではなく、日本国内に住所や居所があるか、どのような所得を得ているかによって判断されます。
外国人であっても、要件に該当すれば所得税、住民税その他の税を納めます。
日本で働き、税や社会保険料を負担し、地域経済を支えている外国人も、「税金を使う側」だけではなく「税金を負担する側」です。
在留手数料の大幅引上げは何のためなのか

出入国在留管理庁が公表した政令案では、在留資格変更許可と在留期間更新許可の手数料が、許可される在留期間に応じて設定されます。
窓口申請の場合、3か月以下は1万円、1年は3万3,000円、3年以上5年未満は6万4,000円、5年以上は7万5,000円です。
永住許可は、現行の1万円から20万円へ引き上げる案となっています。
施行予定日は2026年10月1日です。
入管庁は、変更・更新手数料の算定について、審査に要する実費を約1万円としたうえで、外国人の出入国・在留管理に要する費用572億円程度を、中長期在留外国人約291万人で割った年間約2万円を「応益的要素」として加えています。
永住許可の20万円については、審査実費約2万円に、永住許可後の平均在留期間が13.5年程度であることを踏まえた応益的要素18万円を加える計算です。
これは単なる物価上昇への対応ではありません。
外国人に、在留管理や共生政策に必要な費用をこれまで以上に負担してもらうという政策判断です。
手数料がそのまま外国人支援に使われるわけではない
ここは丁寧に分けて考える必要があります。
入管庁の資料では、今後充実させる施策として、日本語・生活学習プログラム、相談体制の強化、入管行政のデジタル化、不法滞在者対策などが挙げられています。
一方で、公表資料を見る限り、徴収した在留手数料が日本語教育や自治体支援だけに使われる「特定財源」として法的にひもづけられているわけではありません。
したがって、「外国人政策はすべて外国人が払う手数料で賄われる」という説明は正確ではありません。
しかし、「日本人の税金だけで外国人を一方的に支援する」という説明も、同様に単純化しすぎています。
必要なのは、外国人政策にいくら必要で、本人、受入れ企業、国、自治体がそれぞれどこまで負担するのかを明確にすることです。
日本語・生活学習は「外国人への優遇」なのか

自民党の第2次提言では、入国前から受講できる日本語・生活学習プログラムを整備し、受講履歴を一元的に把握する仕組みが示されています。
受講して内容を理解していることを、将来的に在留審査の考慮要素とすることも検討されています。
これは、単純な福祉サービスとは少し性格が違います。
日本語や生活ルールを教える一方で、外国人本人にも学習と理解を求める制度です。
支援であると同時に、責任を求める仕組みでもあります。
実務では、ごみの分別表を渡しただけで「説明した」と考える企業や、日本語が十分でない従業員について「市役所で対応してもらえばよい」と考える受入れ先もあります。
しかし、制度や生活ルールを理解しないまま生活を始めれば、困るのは外国人本人だけではありません。近隣住民、学校、自治体窓口、雇用企業にも負担が及びます。
自民党の提言も、制度やルールの理解不足、文化の違い、コミュニケーション不足が地域の摩擦につながり、自治体が対応に追われていると整理しています。
そのうえで、集住地域を含む自治体への交付金などを検討すべきだとしています。
日本語教育への支出は、外国人だけを喜ばせるためのものではありません。地域住民や行政職員、学校、企業の負担を減らすための社会インフラという面があります。
もっとも、「教育にお金を使えば必ず将来の行政コストが減る」とまでは、現時点では断定できません。費用対効果を検証し、成果を公表する仕組みが必要です。
本当に問うべきは「誰に使うか」ではなく「誰が責任を持つか」

外国人を労働者として受け入れながら、日本語教育、生活説明、家族支援、地域との調整を自治体だけに任せるのは公平ではありません。
受入れ企業にも一定の負担を求めるべきでしょう。外国人本人にも、日本語や生活ルールを学び、税や社会保険料を適切に納付する責任があります。
国は制度を設計し、自治体間の財政力によって支援水準が大きく変わらないよう調整する必要があります。
在留手数料の引上げについても、負担を求めること自体は理解できます。
ただし、家族全員が更新する世帯や、短い在留期間しか認められず何度も更新する人には負担が重くなります。
経済的に困窮しているだけでは、原則として減額対象にならない点にも注意が必要です。
現在示されている減額対象は、生活困窮に加え、難民認定や補完的保護など人道上の配慮が必要な場合に限定されています。
「外国人に税金を使うな」という言葉は分かりやすい反面、問題解決にはつながりません。
受け入れる以上、ルールを教え、守らせ、問題が生じたときに対応する仕組みは必要です。
そこを削れば、最終的には地域住民や現場の自治体、学校、企業が負担を背負うことになります。
外国人政策への支出は、誰かを特別扱いするためではなく、日本社会の秩序を維持するための費用でもある。
この視点を抜きに、冷静な議論はできないと思います。
筆者個人としては、東京出入国在留管理局管轄内の審査期間が異常なほど長くなっている現状を打開するために早急に対策を求めたいところです。
4. 記事末尾の整理
【結論】
日本語教育や生活ルールの周知は、外国人だけを対象とした優遇策ではなく、地域社会の摩擦や行政負担を抑えるための社会統合政策です。
ただし、在留手数料収入が外国人政策に直接ひもづく特定財源とは確認できません。国は、必要経費、使途、本人・企業・国・自治体の負担割合を明確に説明する必要があります。
【根拠】
令和7年末の在留外国人数は412万5,395人です。
在留資格変更・更新手数料は窓口で1万円から7万5,000円、永住許可は20万円とする政令案が公表されています。
自民党の第2次提言では、日本語・生活学習プログラム、外国人児童生徒への教育支援、自治体への交付金などが提案されています。
【注意点・例外】
政令案は、2026年7月14日時点ではパブリックコメント中であり、最終的な内容が変更される可能性があります。
日本語・生活学習プログラムについても、具体的な受講義務、費用負担、在留審査への反映方法は確定していません。
在留手数料の減額対象は限定的です。個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
【出典】
出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」
出入国在留管理庁「在留許可手数料の額及び減額又は免除の対象者等について」
自由民主党「外国人政策本部第2次提言」
出入国在留管理庁「日本語・生活学習プログラムに関する法務大臣政務官PT報告書」
国税庁「納税義務者となる個人」
参考情報:産経新聞、2026年7月14日配信記事
特定技能ビザをはじめとする各種ビザ・在留資格のご相談や代行申請はホームページのお問い合わせフォームをはじめ、お電話・LINE・Facebook・Instagramからもお問い合わせが可能です。
また、当事務所のYouTubeチャンネル「ビザ新潟ちゃんねる」も更新中です。興味のある方はYouTubeもぜひのぞいてみてください。
ビザ新潟ちゃんねる
以上、新潟市のビザ専門行政書士事務所、Asocia行政書士法務事務所でした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
新潟のビザ・入管業務のことならお任せ下さい。
ビザの相談・申請代行専門
Asocia行政書士法務事務所
新潟県初の登録支援機関(19登-000085)
代表行政書士 播磨 史雄
住所:新潟市西区平島2丁目13-11 2F
℡:025-201-7514
mail:info@fumio-h-office.com
総合ホームページ:https://fumio-h-office.com/
新潟ビザ相談センター:https://visa-asocia.com/
新潟県お酒の販売許可申請代行センター:https://www.sakemenkyo.com/
一般社団法人設立専門ページ:https://niigata-syadan.com
新潟成年後見相談センター:http://www.niigata-seinenkouken.com/
LINEからの相談は『24時間365日』受け付けています。
【※ご注意】ご依頼に関する相談料は初回無料ですが、ブログ記事に内容に関するご質問やご依頼に関係ないご相談は有償となります。
友達追加してお気軽にご相談ください。
対応エリア
新潟県全域・福島県全域・山形県全域
上記エリア以外でも当事務所はオンライン申請に対応しております。

