育成就労外国人の給与は原則課税へ|国税庁の回答と受入れ企業の注意点
2027年4月1日に運用が始まる育成就労制度。受入れの準備というと、育成就労計画や監理支援機関のことに目が向きがちですが、給与の税務上の取扱いについても確認しておきたい情報が出ています。
国税庁は、育成就労外国人が受入れ企業から受け取る給与について、原則として所得税の課税対象となり、源泉徴収の対象として取り扱うという見解を示しました。
受入れ企業にとっては、採用時に伝える給与と、本人が受け取る手取り額を考えるうえで大切な内容です。
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9月3日の照会に、国税庁が9月15日付で回答

今回の資料は、出入国在留管理庁と厚生労働省が、2026年9月3日付で国税庁に提出した照会と、それに対する回答です。
照会では、育成就労外国人は原則として租税条約上の「専ら…訓練を受ける」者に当たらず、受入れ企業からの給与を課税・源泉徴収の対象として扱ってよいか、確認しています。
国税庁は9月15日付で、照会に記載された事実関係を前提に、その取扱いを認めました。
ただし、一般的な回答であり、個々の事情によっては異なる課税関係になることも明記されています。
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これは、育成就労外国人だけに特別な税率を設けるという話ではありません。
新制度で支払う給与について、租税条約の訓練者向け免税規定との関係を整理したものです。
「育成」があるから、給与も免税とは限らない

一部の租税条約には、専ら訓練を受けるために滞在する人について、一定の条件の下で給与に対する所得税を免除する規定があります。
今回の照会では、日タイ租税条約第19条が例として挙げられています。
では、技能を身に付ける育成就労も同じではないか。ここで重要になるのが、制度の目的です。
技能実習制度は、技能等を本国へ移転する国際協力を目的としていました。
一方、育成就労制度は、日本の人手不足分野で、原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育て、人材を確保する制度です。帰国を前提とする要件も撤廃されます。
育成就労外国人は、雇用契約に基づいて業務に従事し、その対価として給与を受け取ります。
照会は、こうした制度の目的や働き方から、原則として条約上の訓練者には該当しないと整理しています。
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当職としては、今回の回答に、技能実習から育成就労への制度の変化がよく表れていると感じます。名称の変更にとどまらず、給与の取扱いにも目を配る必要があります。
技能実習での取扱いを、そのまま引き継がない

受入れ準備では、「これまで受け入れた技能実習生は免税だったので、育成就労でも同じ扱いでよい」という前提を置かないことが大切です。
租税条約の適用は、国籍だけで決まるものではありません。
どの条約の、どの要件に該当するのかを確認する必要があります。
今回の照会も、育成就労制度の目的や活動内容を踏まえて判断しています。
同時に、今回の回答だけを根拠として、現在在留している技能実習生の免税が一律に終了すると判断することもできません。照会の対象は、育成就労外国人が育成就労実施者から受け取る給与です。
現在の技能実習の処理と、今後の育成就労の準備は、対象者を確認しながら進めましょう。nta.go.jp
受入れ企業が準備したい給与計算と説明

給与計算では、税務上の区分を確認する
給与担当者がまず確認したいのは、税法上の「居住者・非居住者」の区分です。
在留資格の名称だけで決まるものではなく、生活の本拠や職業などの客観的な事情で判断します。
「入国して1年たつまでは必ず非居住者」という理解も正確ではありません。国内で継続して1年以上の居住を通常必要とする職業がある場合には、国内に住所があると推定する取扱いがあります。nta.go.jp
居住者の通常の給与計算では、扶養控除等申告書の提出状況や社会保険料控除後の給与額などを確認し、適用する源泉徴収税額表で税額を求めます。
課税対象になることと、全員に同じ税額が生じることは別の話です。実際の支払時点で適用される税額表を使う準備も必要になります。
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募集時には「額面」と「手取り」を分けて伝える
例えば、本人が「以前日本で働いた先輩は、所得税を引かれていなかった」と聞いていたら、給与明細の見方から説明する必要があるでしょう。
採用時には、契約上の給与額を示すだけでなく、税金や社会保険料などの控除を踏まえた手取りの目安を伝える。
その際、本人の状況によって金額が変わることも添えておくと、説明が明確になります。
まだ税務上の取扱いを確認していない段階で、免税や一定の手取り額を約束するのは避けたいところです。
送出機関、採用担当者、給与担当者の説明が食い違わないよう、募集資料や説明文もそろえておきましょう。
在留手続と給与実務を、受入れ前につなぐ

育成就労の準備では、認定や在留資格の手続と並行して、入社後の給与計算まで担当者間で確認しておきたいと考えます。
今回の国税庁の回答を顧問税理士や給与担当者と共有し、自社の給与処理と本人への説明に反映する。新制度への対応として、今から進められる具体的な準備です。
個別事情により判断が分かれるため、専門家への確認が必要です。
租税条約の適用や具体的な税額は、税理士または税務署に確認してください。
Asocia行政書士法務事務所では、育成就労制度への移行や外国人受入れに関する手続のご相談を承っています。
在留手続の準備と給与・労務の確認を、関係する専門家とともに進めていきましょう。
4.記事末尾の整理
【結論】
育成就労外国人が受入れ企業から受け取る給与は、原則として所得税の課税・源泉徴収の対象とする取扱いが示されました。企業は、技能実習での免税処理をそのまま引き継がず、給与計算と募集時の説明を準備する必要があります。
【根拠】
2026年9月3日付の照会と、同月15日付の国税庁の文書回答。関係法令等として、所得税法第28条・第183条、租税条約が挙げられています。nta.go.jp
【注意点・例外】
回答は照会の事実関係を前提とする一般的な見解であり、個々の納税者の申告内容等を拘束するものではありません。個別の条約適用や税額は別途確認が必要です。また、この回答は、現在の技能実習生の免税を一律に終了させるものでも、住民税・社会保険の取扱いを一括して示すものでもありません。
【出典】
いずれも一次情報です。確認日:2026年9月29日。
- 国税庁「育成就労外国人が育成就労実施者から支払を受ける給与の課税関係について」文書回答(2026年9月15日)
- 出入国在留管理庁・厚生労働省による照会(2026年9月3日、国税庁掲載)
- 国税庁「No.2875 居住者と非居住者の区分」
- 国税庁「別紙 住所の推定」
- 国税庁「No.2511 税額表の種類と使い方」
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