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TOP > コラム > スペインの移民正規化とは何か 在留資格のない外国人に在留許可を与える制度を解説

スペインの移民正規化とは何か 在留資格のない外国人に在留許可を与える制度を解説

2026.05.07
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スペインで、在留資格のない移民に対する在留許可申請の受付が始まり、窓口に長い列ができたという報道が出ました。

日本の感覚でこのニュースを見ると、かなり強い違和感を持つ人も多いと思います。けれども、制度の中身を少し丁寧に見ると、単なる「大盤振る舞い」ではなく、すでに国内にいて働いている人たちを、どう法の枠内に戻していくかという政策判断だと見えてきます。

この記事のポイント
・スペインの措置は、無条件の恩赦ではなく、一定要件のもとでの正規化制度
・背景には高齢化と労働力不足がある
・日本の入管実務とは方向性がかなり異なる
・それでも「国内にいる無権利状態の外国人をどう扱うか」という問いは日本にも重なる

スペインで何が始まったのか

スペインでは、在留資格のない移民に対する在留許可申請の受付が始まりました。報道では対象者はおよそ50万人とされ、オンライン受付に続いて対面受付も始まったことで、窓口には朝早くから長い列ができたと伝えられています。

日本では、「在留資格がない人にあとから在留許可を与える」という発想そのものに驚く方も少なくないはずです。実際、かなりインパクトの強いニュースです。

ただ、この措置を雑に「不法滞在を全部認めた」と理解してしまうと、少しズレます。そこは分けて見た方がいいところです。

今回の制度はどんな内容なのか

対象者は誰か

今回の制度で対象になるのは、去年までにスペインへ入国し、少なくとも5か月以上滞在している人たちとされています。加えて、犯罪歴がないことを証明する必要があります。

つまり、誰でも申請できるという話ではありません。すでに国内で生活実態があり、しかも一定の条件を満たす人を対象にした制度です。

無条件の「恩赦」ではない

この制度は、何の条件もなく在留を認めるものではありません。

入国時期や滞在期間、犯罪歴の有無といった要件があり、申請期間にも区切りがあります。初回の許可も一定期間に限られるとされており、全面的な無条件救済とは性格が異なります。

ここは実務的にも大事です。制度としては、国内にすでに存在している人たちを、法の外に放置し続けるのではなく、一定の条件で制度の内側に回収しようとしているわけです。

なぜスペインはこうした政策を取るのか

スペイン政府がこの措置を進める理由は比較的はっきりしています。高齢化が進み、働き手の確保が必要だという現実です。

要するに、すでに国内にいて、現実には働いている人たちを、いつまでも「見えない存在」のままにしておくのではなく、在留と就労を正規化し、税や社会保険の枠組みに乗せた方がよいという判断です。

この発想は、賛成か反対かとは別に、かなり現実的です。きれいごとではなく、国家運営の話になっています。

現場で起きているのは制度設計だけではない

今回の報道で印象的なのは、制度が始まった瞬間に、窓口へ長蛇の列ができたことです。

これは対象者が多いというだけではありません。制度を作ることと、制度を回すことは別だということでもあります。

オンライン受付を先に始めても、最終的には人が動き、窓口が混み、処理能力の問題が出てくる。行政実務ではむしろこちらの方が重いこともあります。

制度趣旨がどれだけ立派でも、処理体制が追いつかなければ、現場は混乱します。ここは日本の入管実務にも通じるところがあります。

スペイン国内でも賛否は割れている

もちろん、この政策に反発もあります。野党や反移民色の強い政治勢力からは、「さらなる移民流入を助長するのではないか」という批判が出ています。

この反応も、ある意味では自然です。移民政策は、法秩序の問題、労働市場の問題、治安や社会統合への不安、政治的感情が全部ぶつかる分野です。どこの国でも簡単にはまとまりません。

だからこそ、このニュースは単なる海外トピックではなく、社会が移民をどう位置づけるかという根本問題を映しているように見えます。

日本の入管実務と比べるとどう見えるか

日本はむしろ厳格化の流れ

日本でも人手不足は深刻です。ただ、最近の制度運用を見る限り、日本の基本線は「既存の在留資格制度の中で要件を細かく積み上げ、管理を強める」方向です。

留学、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤などを見ても、提出資料や審査の中身はむしろ厳しくなっている印象があります。

そう考えると、スペインのような大規模正規化措置を、そのまま日本が採る可能性は高くないと私は見ています。

それでも日本にも無関係ではない

もっとも、この話を「スペインはスペイン、日本は日本」で終わらせるのも違う気がします。

どの国でも、すでに国内にいて、働き、地域で生活している外国人をどう扱うかという問題は避けられません。

入口管理だけを厳しくしても、在留中の実態や出口の設計が追いつかなければ、制度の歪みは残ります。

その意味では、スペインの長蛇の列は、遠い国の出来事というより、外国人受け入れをどう設計するかという日本への問いにも見えます。

行政書士として感じること

この種のニュースに触れるたび、制度というものは、厳しくするだけでも、緩くするだけでも回らないのだと感じます。

ルール違反はルール違反として扱う必要があります。そこを曖昧にすれば、制度そのものへの信頼が崩れます。けれど、国内に相当数の無権利状態の人を抱えたまま放置することも、別の意味で制度の行き詰まりです。

スペインはそこに、かなり政治的な覚悟を持って踏み込んだ。評価は分かれるでしょう。ただ、少なくとも見ないふりはしていません。

日本でもこれから、外国人受け入れをめぐる議論はさらに濃くなるはずです。そのとき大事なのは、「厳しくするか、緩くするか」だけで語らないことだと思います。

誰を、どの条件で、どの制度に乗せるのか。在留中の管理をどうするのか。そこまで含めて考えなければ、議論はすぐに感情論へ流れてしまいます。

まとめ

スペインの今回の措置は、在留資格のない移民を無条件で受け入れる政策ではなく、一定の条件を満たす人について在留を正規化する制度です。背景には高齢化と労働力不足があります。

日本が直ちに同じ政策を採るとは考えにくいですが、「すでに国内に存在する外国人をどう法制度の中で扱うか」という課題は、日本にも確かにあります。

スペインの窓口にできた長い列は、その現実をかなり象徴的に見せているように思います。

【結論】
スペインの今回の措置は、在留資格のない移民を無条件で受け入れる政策ではなく、既に国内に滞在している人を一定の条件のもとで正規化する制度です。

背景には高齢化と労働力不足があります。日本が直ちに同じ制度を採るとは考えにくいものの、「国内に存在する無権利状態の外国人をどう扱うか」という課題は日本にも無関係ではありません。

【根拠】
スペイン政府の案内では、対象者は2026年1月1日以前から国内におり、少なくとも5か月の継続滞在を証明し、犯罪歴がないことなどが必要とされています。

申請は2026年4月中旬に開始され、対面受付は4月20日から本格化しました。政府は対象規模を約50万人と見込んでいます。

【注意点・例外】
制度の細かな要件や立証資料の運用は、今後の実務で解釈が揺れる可能性があります。報道ベースでは大枠は確認できますが、個別事案でどこまで認められるかは、スペイン国内の実務運用や追加ガイダンスの確認が必要です。

日本制度との単純比較も危険です。法体系も政治状況もかなり異なります。専門的判断が分かれる場面では、各国制度に詳しい専門家に確認が必要です。

【出典】
TBS NEWS DIG「スペインで在留資格のない移民への在留許可申請開始 窓口に長蛇の列」
スペイン政府案内
スペイン官報
Reuters
AP News

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